第6話 ケルマトの誇り
石段の陰から、老いた声が響く。
「彼らだけを差し向けるのか」
先々代総導ネミルの骸骨が身を起こし、戦勝碑を指さした。
「我々は神に誓った。神の恩寵はただ与えられるものではないと――皆、悟ったはずだ。誓約を破って赦しを乞うのは、順が違う」
広場の端で、若い骸骨が叫んだ。「だが陽を浴びれば、崩れるぞ。皆も見たはずだ!」
ひとり、女貴族の骸骨が立つ。「我らはケルマトだ。命を惜しむな!名を惜しめ!」
女の骸骨が悲鳴を上げる。「わたしの子はまだ幼いのです。残して死ねない!」
傍らの骸骨が立ち上がってその肩に手を置く。「だが、愛しい我が子たちも、今は骨の姿。神の裁定を待つ身」
すがりつく妻の頭を掻き抱きながら骸骨は続ける。「十年前のバラグンの兵は勇敢だった。トゥルメシュの野望を止めるため、信義を守るため、それこそ命を捨てて戦ったのだ」
ゼルハンが呼応する。「然り!」
ハダルは印章を握りしめ、宣言する。
「誓いとは、ナーミル様との契約だ。たとえ滅びようともそれは果たせねばならぬ。幼子の女親と妊婦、そして二十に満たぬ者は残れ。その他は武具を取れ。一夜で敵を破る。門を開けよ。民よ、行け──定めを果たせ」
骸骨が一斉に起立し、その足が石を叩く。
音が波となり、建物を伝い、壁を震わせる。
やがて鬨の声が広場を超えて、都市を覆った。




