第3話 夜のケルマト
奇妙な光景が、夕暮れのケルマトに広がっていた。大通りに人影はなく、露店の布は巻き上げられ、鐘も鳴らない。
街そのものが息をひそめていた。
日が沈むと、門から、路地から、家の戸口から、人々が現れた。すべて、骨。衣服はそのまま。眼窩は空なのに、互いを見て頷く。
夢見の啓示を無視したケルマトのすべての住民に対して、街の守護神ナーミルの天罰がくだって二日目の夜であった。
神殿前の広場に集った骸骨たちは次々と膝を折った。先頭で祈るのは、総導ハダルの骸骨。胸に印章の鎖を光らせ、石段に額を落とす。
〈三夜、その姿で過ごせ。陽を浴びれば崩れる。三日後に審判が下る〉――神殿の奥から、昨夜と変わらぬ声が響いた。警告は偽りではなかった。昨日の朝、少なくない者たちが陽を浴びて、その姿を砂に変えて散っていた。
そこへ、城門の番だった骸骨が駆け込む。「総導、西門に使者来たり。バラグンは援軍を求むと」
ハダルは答えた。「今は赦しを請うことを先とする。捨て置け」
番の骸骨は食い下がる。「カルミシャの誓いに従えと、使者は申しております」
祈りの声は止み、ざわめきが広場全体を覆い始めた。
ハダルは言葉を失い、神殿の隣に立つ石碑へ、目のない顔を向けた。
その骨の手が、わずかに震えた。




