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カミサマリベンジ~1番の女王と13番の王  作者: リアルソロプレイヤー
第1章 波乱のワコク公国建国祭
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第5話 『13』


 身に纏った黒い光を振り払い、ヒイロが突撃する。

 正面には振り下ろされた炎の刃。

 けれど彼は足を止めることなく。


「喰らえ、黒蝙蝠くろこうもり


 ヒイロの言葉に背中のマントが伸びる。

 それは自動的にヒイロと刃の間に割って入った。

 まるで外敵からヒイロを護る盾のように。

 でも実際は彼が「喰らえ」と言った通り。


「なっ……⁉」


 割って入った黒いマントの外側の面。

 その表面に少女が振り下ろした炎の刃が吸収された。

 そして今なお、強引に残りの刃も吸い込もうとしている。

 それを見て少女は溜まらず、振り下ろした刃を引き戻す。


 だが、ヒイロは手を緩めることなく。


「返すぞ、お前の炎」


 ヒイロの黒いマントから無数の火球が飛び出してきた。

 それはメラメラと燃え、少女が立つ場所を集中砲火する。

 数個は刀で叩き落とし、それ以外は体術を駆使して躱す。

 ヒイロから見ても到底、少女の身体能力は常識を逸脱していた。

 しかもだ、ヒイロが微かに辿ったところ。


強化魔法きょうかまほうの類も無し」


 完全な彼女自身の身体能力だった。

 それだけでヒイロにもわかる。

 彼女がどれだけのトレーニングをしてきたのかを。

 だからこそ、手を抜いたりできなかった。


模倣影魔法もほうかげまほう――」


 先ほど炎を吸収したマント。

 その内側の面にヒイロは自ら右手を入れた。

 それから手探りで何かを掴み取る。

 マントから引き抜かれた手。その手中に収められていたのは――


「英雄のえいゆうのつるぎ


 少女が持つ黒い刀『夜空』によく似た黒い剣だった。

 夜空と同じように刀身まで黒く、身の丈ほどある大刀だいとう


「やっぱり剣士には剣で相手するのが礼儀だよな」


 黒いグローブを付けたまま、ヒイロは取り出した剣を両手で強く握る。

 その姿は少女同様、様になっていった。

 明らかにどこかで剣術を学んでいた、そういう雰囲気だ。


「悪いけど俺、剣であいつ以外に負けるつもりないから」


 先ほど振り払った黒い光が再び、ヒイロの体を包み込む。

 それはまさに力の暴風。凄まじいエネルギーがヒイロを中心に渦巻いていた。

 光の鎧を着たまま、ヒイロが火球の後を追う様に迫ってくる。

 その姿を視界の端で捉えた少女は慌てて、火球に対する対処を切り上げた。

 火球よりも圧倒的に、ヒイロの危険度の方が高かったから。


「お前に黒刀の本当の使い方を見せてやる」


 身構えた少女に構わず、ヒイロは剣を振り被る。

 どう見ても隙だらけの動き。先ほどの剣術使いの雰囲気など既にない。

 だから油断した。油断して思わず少女は、炎を振り下ろしていた。


「黒刀の力その1。あらゆるものを選び斬ることができる」


 一瞬の間だった。素早い太刀裁きで少女の炎が切り刻まれる。

 細かくみじん切りにされた炎は宙を舞い、刃の形を失った。

 当然、武器を失った少女相手にもヒイロは迫っていく。

 そして彼女の目の前に立った時――


「黒刀の力その2」

「斬るなら切ってください。逃げも隠れもしませんから」


 刃を振り上げるヒイロを見て、少女は刀身が消えた柄を持ったまま両手を広げた。

 ガラ空きとなった正面に、ヒイロは強烈な一撃を振り下ろす。


「こいつが斬れるのは、外側だけじゃない」


 少女の黒刀同様、切れ味抜群の刃が振り下ろされた。

 それは当たり前に少女の体を斬りつけ、斬られた少女は――


「……っ」


 その場に蹲り、自らの両肩を抱きかかえていた。

 ただし斬られたはずなのに、目に見えるダメージは一切負っていない。

 それでも。


「なんだ? まだ他にも使い方があるのに、その2でダウンか?」


 少女は既に戦意を無くしていた。

 今もただ、震えることしかできない。

 そしてその原因となっているのは――


「黒刀は斬った相手の精神も斬れる。そして斬った心に悪夢を見せる」


 少女の戦意が喪失したことを確認したヒイロは、握っていた剣を投げ捨てた。

 するとそれは黒い塵となり、またマントの内側の面へと戻って行く。


「今、滅茶苦茶最悪な気分だろ?」


 その言葉と共に、ヒイロの戦闘フォームが解ける。

 マントは剣と同じく塵となり、手にしていたグローブからは『13』の文字が消えた。

 全てが黒一色となっていたヒイロの髪は、また元の前髪だけ黒い髪に戻っている。


「ちなみに今のは全部贋作がんさくだ。お前の持つ本物には遠く及ばない」

「贋作? あなた、本当に一体……」


 口元に手を当て、苦しそうな顔をしながらだった。

 そんな状態でも少女は黒い瞳でヒイロを強く睨む。

 未だに彼への敵意はバリバリで。回復次第、握ったままの黒刀で襲おうと考えていた。

 だがしかし、それを阻むようにヒイロが喋り出す。


「俺の名前はシンカイ・ヒイロ。元主神にして現在は邪神」


 そこまで言ってヒイロは、自身の右手の甲を少女に見せつける。

 未だに装備された黒いグローブ。そこに突如また『13』の文字が現れた。

 そのことに一瞬、少女の警戒心が強まりそうになる。

 けれど強引に立とうとした彼女を見て、ヒイロは左手を伸ばしそれを静止した。

 そしてようやく、勿体つけながらも彼は言う。


「――この世界で十三人目の王鍵所持者だ」


 その言葉に少女の常識が、足元から崩れ落ちる音が聞こえた。

 なぜなら世界に王鍵の持ち主は十二人しかいない。

 それが揺るぎない世界の常識だったから。


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― 新着の感想 ―
企画ご参加ありがとうございます。 現時点での投稿分を拝読いたしました。 何気に仲の良い兄妹が微笑ましいですね。 少女とは王道的なボーイミーツガールかと思いきやバトルに突入する展開は良い意味で予想外で…
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