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4、カードゲームの世界へ(4)

 さて、俺の初陣が始まった。


 とは言っても、剣を自在に操るだとか、魔法を連射するとか、はたまたその両方だとかのように華々しいものでは無い。ただ、魔物に吸い込まれたエアルに火属性を付与するだけである。


 画期的だとは思うが、ちょっと物足りない。


 敵のゴブリンは3体。1体ずつ暗殺していけば、完璧な初陣になるだろう。


 うーん、やっぱり暗殺というのは良い響きだ。


 ぼーっと見ていると、左端のゴブリンがエアルを吸い込んだ。胸を擦っているから、違和感は感じているのだろうが、そんな不快感とはもうお別れだ。


 ギェーー


 夜聞いたら、寝れなくなるような断末魔が響き渡った。そして、苦しそうに地面を転がり始めた。胸を掻きむしっているのを見るのは、それがゴブリンであっても結構辛い。


 元々レベルが低かったのか、すぐに腕がバタリと力を失ったように地面に伸びた。俺の経験値が10上がっているから倒せたのであろう。


 しかし、初陣がこんなにも残虐なもので良いのだろうか......。


 まあ、仕方ない。剣の振り回し方なんて分かんないし。


 俺がハァとうなだれると、紅葉が左手をペロッと舐めてくれた。いやぁ、紅葉を拾って本当に良かった。こんなにも優しい犬が存在するとは思ってもいなかった。


 エアルは倒したゴブリンの口から出てきた。スキルカードの効果は、効果を付けられた魔物の意思でしか消せないようだ。空気の塊みたいだから少し心配はしたが、魔物だから意思はあるようである。あと、剣への火属性付与は俺の意思で消せる。


 そのまま真ん中のゴブリンに近付いていくと、ヒュッと体の中に入っていった。


 さっきと同じように、2体目と3体目も倒した。死体はどうしようかと思ったが、せっかくの素材を無駄にするのもあれなのでアイテムボックスに入れることにした。


 触らずに入れられるか心配だったが、アイテムボックスの入口をゴブリンの下に開けば解決した。


 何と言うか戦った気がしない。経験値も素材もゲットできたのだが、俺はスキルカードを3回使っただけだったし......。




 ストレスは溜まらないが、モチベーションは上がらない戦闘を続けていると、更に3日が過ぎた。今日で異世界7日目である。


 昨日やっと街道に出られたので、ちょっとは快適な旅ができそうである。


 最近の悩みは、魔物からドロップすると聞いていたカードが1枚も見当たらないことである。低確率だとしても、ゴブリンとかの低ランクの魔物だったら、それなりの確率で落としても良いはずである。


 考えても分からないので、目をこすりながら朝ご飯の用意をすることにした。朝ご飯の用意といっても、俺が作れるのはカレーとかだけだし、朝早くて眠いからアイテムボックスに入っていたパンと水だけである。


「お兄ちゃん、おはよう」


「うん、おはよう」


 あくびを噛み殺しながら歩いて、切り株に座った。昨日の焚き火でできた灰が独特な匂いを出している。


 キャンプとサバイバルの中間くらいでそれなりに楽しかったが、それも今日で終わりだ。もう目的地のルミナの城壁は見えている。


 ルミナに着いたら、冒険者登録をして、美味しいご飯を食べに行こう。できれば、いや絶対にパン以外がいい。


 ......あれ、いつもと違う。


 敵の気配はしないし、パンが腐っていたわけでも無い。確か、朝起きて、寝袋を畳んで、紅葉におはようって言われて、切り株に......あっ、紅葉におはようって言われてた!


 なるべく冷静でいなければ。パンに全感覚を集中させながら、紅葉に声をかけてみることにした。返事が返ってきて欲しくもあるし、返ってきて欲しくもない。


「なあ、紅葉」


「どうしたの、お兄ちゃん?」


 やっぱり気のせいじゃないみたいだ。


「あのさ......え!」


 振り向くと、目に映ったのは巫女服を着た女の子だった。ちょっと何が起きているのか分からない。


 そういえば、紅葉がいない。というか、紅葉を呼んだら、あの子が返事をした。どういうことだ?


 デッキの構成を考えた時よりも、頭が動かして、やっと俺の考えは1つに落ち着いた。


「進化したのか?」


「昔からこのままだよ」


 つまり、形態変化したってことか?ロボット系のカードゲームでよくあるやつだな。


 よく見てみると、紅葉に耳と尻尾が付いている。これが獣人というやつなのだろうか?


 紅葉がチラッと見ては、遠くに目をやっている。だんだんと顔が赤くなってきた。少しすると、もじもじし始めた。そして、赤らめた顔を俺に向けて口を開いた。


「そんなに見られても......」


「野良犬だと思って、勝手に名前付けちゃったけど大丈夫だったか?イヤなら、元の名前でも」


「そんなこと無い、私は紅葉だよ」


 頭を左右にブンブン振っている。まあ、気に入ってもらえたなら良いか。


 異世界に来て、まさか妹もどきができるとは思ってなかった。と言っても、どうしてあの洞窟にいたんだろうか?それに、親はいないのだろうか?


 焦って聞くことでもないし、紅葉から話してくれるまで待とうかな。


 いつも通り、モサモサしたパンを口に放り込んで、それを水で流し込んだ。明日からはふんわりとまではいかなくても、せめてパンに何かを挟んで食べたい。


「じゃあ、行こうか」


「はい!」


 切り株から立ち上がった。目的地のルミナはもう目と鼻の先だ。

まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。


もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。


ぜひ他の作品も読んでみてください。

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