35、温泉サバイバル(2)
新作(2つ)のプロット等を考えていたら、思っていたより時間がかかってしまいました。
投稿が著しく遅れてしまい、申し訳ありません。
しかし、その分クオリティは高いと思います。ぜひ、ご期待を〜。
軽い気持ちで温泉に来たのだが、とんでもないことになってしまった。
この温泉旅館の受付には、幼馴染の美桜里と、その親友の未来がいた。
商人として行動している訳では無かったので、変装用の魔道具は付けていない。
おかげさまで、すぐに俺だとバレてしまい、問答無用で取調室に入れられてしまった。
「私は未来、こっちが親友の美桜里だよ。自己紹介からしてもらえるかしら?」
三人とも騙されてはいけない。
その笑顔の下には悪魔がいる、と心の中で叫んでいたが、三人には何も伝わらなかった。
「私は紅葉、冬哉の婚約者だよ」
もうダメだ。
紅葉は純粋だから、嘘は付けないのだろう。
「椿、冬哉は......まあ、知り合いね。友達でも良いわ」
椿はこの調子だから、大丈夫だろう。
そして、次が問題の楓なのだが......。
楓は俺の方をチラッと見てから、口を開いた。
「楓です。冬哉とは一昨日、結婚しました」
あ、これは、わざとだ。
楓は言動に反して、頭は切れる。これは、この状況を察しての言葉だろう。
その証拠に、いつもより顔がいきいきとしている。
「......」
「......」
二人とも、言葉を失ってしまったようだ。
まあ、そうなるのも当然だ。
約二週間ぶりに会ったクラスメイトが、結婚していたのだ。おまけに、婚約者とツンデレもいるし。
「大丈夫?」
「まあ、私わね。でも、美桜里はどうかしら?で、冬哉君、三人ともと結婚するつもり?」
うーん、どうだろうか。あんまり考えていなかった。
思考を放棄したと言った方が正確だろう。
「私はしないわよ!」
椿が突然、声を上げた。
「あら、ツンデレもいたのね。早く認めちゃいなさいよ、そっちの方が楽よ」
未来は悪巧みしている小学生の顔で、椿の方を見た。
昔から、こうだった。こんなんだから、未来を好いた子からは絶大な支持を、嫌った子からは親の敵同然の非難を得ていた。
ちなみに、俺は無党派層だ。下手に関わっても、良いことはない。
でも、楓なら、未来が相手でも口論できるだろう。
「わ、私は......」
「私は?」
さすがに顔を真っ赤にしている椿に、追い打ちをかけるのはやり過ぎだろう。
目頭が光っちゃってるし。
女子の間のことはよく分からないから完全否定はしないけど、やるとしても、俺がいないところでやって欲しい。
あとで、どうして助けなかったんだ!、と怒られるのは御免だ。
ここは、未来の攻撃を受け流せる相手を召喚するしかない。
楓にアイコンタクトを送った。
後で何を請求されるか不安だが、どうせ美桜里に詰問されるのだ。五十歩百歩だろう。
待ってましたと言わんばかりに、未来と椿の間に割って入った。
いつも、これくらいのやる気が欲しいものだ。
「あの、未来さん良いんですよね?」
「ええ、呼び捨てで良いわ。私は楓って呼んでも?」
セリフだけ聞いたら、初対面の人同士の会話だが、実際はそんな生易しいものではない。
一言一言にトゲが含まれている。
伝わるか分からないが、武蔵と小次郎が刀を交える前に会話しているような感じだ。
とりあえず、俺はドアの近くに待機した。これで何かあっても、すぐに逃げられる。
「どうぞ。それで、質問しても良いですか?」
「かかってきなさい」
俺の頭の中で、ゴングが鳴った。
いまだ無敗の未来と、実は頭だけ切れる楓の戦いだ。
流れ弾さえ飛んでこなければ、正直どっちが勝っても良い。
「心を読んでも?」
「好きにしなさい。心理テストなんかで見破れるわけないでしょ」
それが違うんだよな......多分、本当に心を読めるのだろう。
楓は誤魔化すことがあっても、嘘は付かない。
まあ、好きにしてくれれば良い。未来もすでに了承してしまっている。
俺はいつも通り、存在感を消しておこう。
もちろん、オタクの固有スキルの一つだ。効果は、静かに暮らせることだ。まあ、デメリットの方が大きい。
楓の顔が一瞬、ニヤついた。
俺の想像してた、お淑やかな精霊はどこにいったのやら。
「へぇ、ふーん、そうなんですか。それは大変ですね、どうしましょうか」
少しずつ楓が元気になってきた。
いつもの微笑が、悪魔の微笑に変わってはいるが。
なんとなく不気味だ、そう未来も思ったのだろう。珍しく、顔が引きつっている。
「何か分かったの?」
「言っていいんですか?色々と面倒くさいことになりますよ」
「ブラフね」
「では、お耳を拝借」
楓が未来の耳元に口を近付けて、何かブツブツと言い始めた。
未来の顔がだんだんと青くなった。しかし、すぐに椿以上に真っ赤になった。
楓も楽しくなってきたようで、もっと顔が悪魔に近付いている。
ほんとは精霊なのに。
「も、もう良いわ!そんな嘘」
「では、皆さんに聞いてもらいましょう。実はですね」
「分かったわよ!!もう、帰る」
そのまま、すごすごと部屋から出て行ってしまった。
さすが、楓だ。
「何を言ったんですか?」
「それは秘密ですよ」
何だか楽しそうに会話し始めたので、俺も部屋から出ることにした。
幸い、部屋の鍵は受け取っている。
先に部屋で休んでいよう。徹夜したから、眠くてしょうがない。
だいたい、女子の会話は長過ぎるのだ。今の俺には、到底耐えられそうにない。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
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