表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/35

34、温泉サバイバル(1)

 自分のデッキの戦術を考えていたら、もう朝になっていた。


 徹夜くらい、どうてことはないのだが、思い返せば、この世界で初めての徹夜だった。


 この異世界で健康的な生活ばかりで、久しぶりに徹夜すると、結構体に負担がかかることが分かった。


 どうやら、体を再び徹夜に慣らす必要があるようだ。


「冬哉!起きてるなら返事しなさい」


 窓を開けて、日光を浴びていたら、椿の声が聞こえた。


 しっかり応答しないと、理由を詰め寄られてしまう。


 眠い目をこすりながら、ドアを開けた。


「うん、起きてるよ」


「ほら、行くわよ」


 椿が俺の手を引いて、外に出ようとした。


「どこへ?」


「昨日、紙を渡さなかった?」


 椿は少しむっとした顔で答えた。


 ......忘れた。


 そう言えば、そんなものを渡された気がしないでもない。


「あ、うん、そうだったね。すぐ着替えるから、待ってて」


「早くしなさいよ」


 ガチャンとドアが閉まった。


 閉まったのだが、どうしてか椿が俺の部屋に入っている。


 ドアの内側じゃなくて、外側で待っているべきだと思うのだが。


「どうして、そこにいるんだ?」


「え、私は......そう、監視しているのよ。万が一、問題が起きたら困るでしょ」


 まあ、どっちでも良いんだが。


 部屋の中にいられると、何だか落ち着かない。


 というか、俺は椿よりも年上なのに、監視を受けるというのは変な話だ。


 話は変わるが、紅葉、椿、楓の中で一番からかい甲斐のは誰だろうか?


 答えは椿だ。


 紅葉は冗談を真に受けてしまい、それが冗談でなくなってしまうし、楓に至っては普段の行動がすでにおかしいので、何も違いが感じられない。


 でも椿なら、程よく慌てて取り乱してくれるから、一番面白いのである。


 まあ、罪悪感はあるので、そこまで酷い嘘はつかない。


「そんなに監視したいなら、俺と一緒の部屋にするか?」


「馬っ鹿じゃないの!そんなの、そんなこと......もう良い!私は紅葉と待ってるから、早く来なさいよ」


 顔を真っ赤にしながら、部屋から出て行ってしまった。


 おもむろに、昨日貰った紙を見てみると、例の温泉だった。


 そう言えば、行くとか、言ってた気がする。


 学校にはほとんど通っていなかったので、久しぶりに急いで服を着替えた。


 変装用の魔道具は付けずに、外に出ることにした。別に、俺は知り合いと会う予定はないし、今日の俺はただの冒険者として歩いている。


「ごめん、待った?」


「私は今来たばかりです」


「ええ、待ったわ。女の子を待てせるなんて、何を考えているのかしら」


「私は()らされるのも、好きですよ」




 馬車に揺られていると、いつの間にか寝てしまっていた。


 起きると、山の麓だった。


 やっぱり、乗り物は恐ろしい。つい寝てしまっただけで、見知らぬ場所まで連れて行かれるのだから。


 馬車から降りて、しばらく歩くと、温泉に到着した。


 しっかり和風の建物で、内心結構驚いている。


「どうしたんですか、行きますよ」


「分かったよ」


 白色の暖簾(のれん)をくぐった。


 ちゃんと下駄箱があって、旅館の中ではスリッパで歩くようだ。


 そして、床は板張りだ。ワックスで、スライムみたいにツルッと輝いている。


 西洋的なこの世界では、ここまで和風うに統一されているのは珍しい。


「すみません、宿に泊ま......」


「はい、分か......」


 まさに、開いた口が塞がらないとは、こういうことなのだろうか。


 俺の思考回路は白飛びしてしまった。


 ひとまず、息を吸って吐いて、深呼吸だ。


「冬哉、どうしたの?」


 あっ、それはマズい。


 俺の名前をこの状況で呼ばれるのは、非常にマズい。


 偽名を使えば、なんとか誤魔化せたかもしれなかったのに。


「やっぱり、そうだったのね。ちょっと来なさい!」


「あの、話を......」


「問答無用!」


 紅葉たちが驚いて目を見張っている間に、事務室のような部屋に連れ込まれてしまった。


 そこには机が一つ、机を挟んで向かい合わせになるように椅子が一対(二つ)置かれていた。


 そう、まるで取調室のような場所だ。


 入口から離れている方の椅子に俺、入口側の椅子には......おそらく美桜里(みおり)が座っている。そして、入口を塞ぐように美桜里の親友の......確か、未来(みらい)が立っている。


 美桜里はポケットから手帳を取り出した。


「何か弁明は?」


 罪状は分かってるよね、という(てい)で話し始めた。


「特に無いかな」


「じゃあ、私から聞くわ。あの子たちは誰?まさか、冬哉がナンパできるわけないし......」


 全くその通りなのだが、本当に失礼な憶測だ。


 でも、何と説明すれば良いのだろうか?


 俺がブルーテス獣人国の国王ということは機密事項だから、いくら幼地味相手でも言えない。


「知り合いかな?この世界でできた友達だよ」


「女の子だけなの?」


 そりゃあ、そうだろう。


 異世界転移してから、ルミナの街に行って、すぐさま獣人国に行って、ルーミルの街にやって来たのだ。


 アニメのように、冒険者教会でゆっくりしている暇も無かった。


「まあ、そうだね」


「そう」


 お互いに何を言えば良いのか、分からない。


 この2週間くらいで色々起きたのだ。まだ整理が付いていない。


「じゃあ、私から質問いい?」


 部屋のドアに寄っかかっていた未来が口を開いた。


 何となく、嫌な予感がする。


 昔からそうだった。未来は面倒くさかった気がする。


 面倒臭いと言っても、椿のツンデレや正論とは、別のベクトルで面倒臭いのだ。


「まあ、良いよ」


「あの中の誰が本命なの?」


「......」


 やっぱり、ちょっと期待しそうになったが止めて良かった。


 未来のせいで、美桜里の目力が上がった気がする。


 更にたちが悪いことに、未来は面倒臭いことを聞き、美桜里は気になったらしつこく聞いてくる。完全な悪循環の始まりなのだ。


 断ち切る唯一の方法は、逃げることなのだが、出口は封じられている。


「いや別に、誰が本命とかは無いかな」


「そっかぁ、じゃあ本人たちに聞いてみるね」


 そんな、ウキウキに言われても困る。


 ......あれ、本人たち?


 もしかすると、この場合の本人は俺じゃなくて、紅葉、椿、楓のことを指しているのではないだろうか?


「三人とも、入ってきて」


「分かりました」


 紅葉がいつも通り元気な返事をした。


 俺はそれと正反対で、憂鬱な気分だ。


 紅葉と椿は変なことを言わないだろうが、楓は暴走しかねない。いや、絶対に暴走する。


 それに煽られて、他の人たちも暴走し始めるのだ。


 そうだ、そうに違いない。


 椿のお父さんのレンクスさんに、突然ダンジョンに転移させられた時より、深い溜め息が出た。

まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。


もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。


ぜひ他の作品も読んでみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ