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31、ルーミルの危機(9)

 ギルド『暗黒街』のギルドマスターのサウザー、こと南部君にケモミミをちらつかせながら交渉したおかげで、カードをたくさん貰えた。


 秘書のイシュマエル、こと石田君が終始、不機嫌そうな顔をしていたが。


 何にせよ、俺は満足だ。カードのコレクションルームを見られたし、欲しいカードも貰えた。


 カードは欲しかった6枚に加えて、おまけにもう3枚貰えることになった。


 オタクで、できるだけコレクションを増やしたい南部君相手にここまで貰えたのは、結構スゴいことだ。


 最後の9枚目を交渉した時なんて、もう涙目になっていた。


 さすがに、罪悪感が半端なかったが、8枚目との相乗効果が強かったから、それが欲しかったのだ。9枚目も貰わなければ、意味が無かった。


 分かってくれ、南部君。


「それで、ケモミミとダイヤは!」


「明日の昼に持ってきます。その時に、これら9枚のカードと交換できれば幸いです」


「そうか、楽しみにしているぞ」


「私をがっかりさせないでくださいね」


 最後に、秘書の石田君がそう付け足した。


「ええ、もちろんです」


 むだにくるくるしている螺旋階段を降りて、建物から出ると、もう日が暮れていた。


 カード選びが楽しすぎた代償である。


 三人が心配しないうちに、早く帰らねば。




 昨日は宿に戻ってから、叱られた。


 楓が、女性とデートでもしていたのでしょうか、なんて言うから、紅葉が過敏に反応してしまったのだ。おかげで、誤解を解くだけで疲れてしまった。


 もちろん、時間を忘れていた俺も悪いのだが。


 今日は、ギルド『暗黒街』に行く前に、作戦の仕込みをすることにした。


 目的地は領主の屋敷である。あの悪名高いということで有名な領主だ。


「すみません、領主様にお取り次ぎできませんか?」


「お前は?」


 昼から約束があるのだから、こんな門番相手に苦戦しているわけにはいかない。


「領主様に、ダイヤを取引したい、と言っている者がいると伝えてください」


「分かりました」


 門番はすぐに戻ってきた。


「どうぞ、ご案内します」


 むだに長い廊下を歩いていくと、やっと領主がいる部屋に到着した。


 悪人はむだなものが好きなのだろうか?


「失礼します。商人をお連れしました」


「うむ、お前は下がれ」


「失礼します。商人のブルーテスです」


 このブルーテスという名前は、俺が変装している時の偽名だ。


 この名前で呼ばれると、自分の名前だと気付かず、たまに無視してしまうから要注意だ。


「そこに座りたまえ」


「失礼します」


「それで、ダイヤモンドと聞いたが、本当か?」


 おもむろに葉巻入れに手を伸ばし、葉巻に火を付けた。


 客の前で吸うとは、さすが悪徳領主といった感じだ。


「はい。一番大きいものだと、これです」


 アイテムボックスから、俺が持ってきたもののうち、二番目に大きいものを取り出した。それでも、直径が俺の親指くらいなのだから驚きだ。


 これで、どこまで物欲・自己利益という名の信用を獲得できるかが鍵だ。


 こいつには信用してもらわないと、作戦が進まなくなってしまう。


「大きいな」


「いえ、私と契約していただければ、お金次第でもっと大きいものも入手可能です」


 契約内容は、商人のレオパルトさんが書いてくれた。


 各項の説明を聞いていると、さすがプロの商人はスゴかった。文章のあちらこちらに罠が仕掛けてあるのだ。


 標的が俺じゃなくて、本当に良かった。


 もしそうだったら、ブルーテス獣人国にある全てのダイヤモンドを買い叩かれていただろう。


「よし契約書を書け」


「ここにあります。署名していただければ、このダイヤモンドを有効の印として差し上げる準備もあります」


「うむ、分かった。では、署名しよう」


「ありがとうございます」


 領主は満面の笑みで、ダイヤモンドを受け取った。


 まさか、この契約書で自滅することになるとは知らずに。


「そうでした、領主様。お耳に入れたい情報が」


「なんだ」


「『暗黒街』というギルドはご存知ですか?」


「ああ、知っている」


「実は、そのギルドのギルドマスターの部屋から通じる、カードのコレクションルームがあります。そこには最高レアのカードが何枚も飾ってあるんです」


 領主の目がキラリと光った。


 悪事や自分の利益に対する嗅覚は鋭いようだ。


「私の権力で、それを押収しろ、ということか。目聡いやつだ、友人になれそうだな」


「ありがたい限りですが、私は商人です。自分の利益になることをしたまでです」


「分かっている。好きなカードを三枚くれてやろう」


 三枚貰えれば、十分だ。


 残りの欲しいカードは、偽造したカードとすり替えれば良い。


「ありがとうございます。私の存在はどうぞ、ご内密に」


「もちろん、友を売るようなことはせん」


 領主の表情と口調が若干変わったから、今回の目標は達成できたのだろう。


 この作戦を考えたレオパルトさんは、恐ろしいものだ。


「では、領主様。今から、私兵を引き連れて、ギルドに乗り込んでいただけませんか?」


「実は今日、そのカードを用いた取引があると聞いたのです」


 これは俺が昨日、ギルドと取り決めた話だ。


 もちろん、取引相手が俺だということがバレてはならない。


 領主はバンと机を叩いて、椅子を転がしながら立ち上がった。


「よし、分かった。出陣じゃぁ!!!」


 コート掛けに掛かっていたマントを羽織って、ドアを蹴り破る勢いで開けながら、部屋から出ていった。


 作戦成功だ。これがどういう意味を為すのかは、後々分かるだろう。


 俺も口頭でしか説明を受けていないから、正確にはよく理解できない。


 でも、レオパルトさんの言った通りにすれば、問題ないのだろう。


 まあ、俺はカードがゲットできるなら、何も気にしない。


 ドタドタと、重たそうな体を動かしながら、領主は走っていってしまった。


 帰り際に、何かが書かれた紙をペタッと貼り付ける、冬哉の姿があった。

まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。


もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。


ぜひ他の作品も読んでみてください。

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