30、ルーミルの危機(8)
異世界で協力すると強そうな三人が、向かい合って座っていた。
もちろん、協力して魔王を倒そう、みたいな雰囲気では決して無い。
「お名前を聞いても」
「ああ、俺はサウザー、ギルド『暗黒街』のギルドマスターをしている」
反射的に、目をそらしてしまった。
真面目な顔で、そんなことを言うとは思ってもいなかった。
南部君だから、サウザーか。
この分だと、秘書の方の名前も期待できそうだ。
「私はブルーテスです。この方は?」
一応、ブルーテス獣人国の王なので、そこからもってきた。
「この方は、秘書のイシュマエルだ」
「っ!」
「どうした?」
「いえ、お茶が変なところに入ってしまいまして」
もちろん、嘘だ。
南部君がサウザーだったから、石田君だったらストーンみたいな名前かと思っていたら、イシュマエルだったとは。
緊張していたことも相まり、思わず笑ってしまった。
下を向いていたから、おそらくバレていないはずだ。
「ブルーテス、お前がダイヤとケモミミを持っていると聞いたが、本当か?」
さっそく、オタクの南部君が食いついてきた。
不良たちがいないから、ダイヤモンドはほとんど効果が無いだろう。
でも、オタクと陰キャにとって、ケモミミは喉から手が出るほど欲しいはず。
それに、この街に来て間もないが、まだ獣人は一人も見ていない。
紅葉と椿には申し訳ないが、彼女たちのレア度はめちゃくちゃ高い。
言い換えると、ケモミミ好きには是が非でも得たいはず。なにせ、次があるとは限らないのだから。
「どちらがご所望で?」
「ケモ」
「ギルドマスター!」
秘書の石田君が南部君を睨んだように見えた。
まあ、秘書なのだから、そんなはずは無いだろう。
「両方とももらえるか?」
「商売なので、対価は払ってもらいますが」
俺は商売人では無いが、搾り取れるだけ搾り取ろう。
やっぱり、昔の知り合いから、こういう口の聞き方をされると、ちょっと意地悪したくなってしまう。
変装しているから、俺だと分からないのは当然なのだが。
「いくらだ?」
「そうですね......」
国王だから、正直お金はいらない。困ったら、国庫から持ってくれば良いだけだ。
二人と同じで、俺も欲しいものを貰おう。
「ギルド所有のカードを見せてもらえますか?」
「つまり、ケモミミとダイヤを、カードと交換しようと」
さすが、石田君。テストの成績はそこそこ高かったから、話が分かってるじゃないか。
「そういうことです」
「ギルドマスター!」
また、この目だ。お願いしている目では無い気がする。
何かこう、脅しているとまでは言わないが、同意を求めている感じでもない。
「ああ、分かった。それで良い」
何にせよ、オタクの南部君がカードと交換すると言っているのだ。
断腸の思いに違いないが、ケモミミの魅力には叶わなかったのだろう。
「こっちに来い」
南部君が本棚の前に立った。
一番右の本棚を動かすと、ドアが現れた。
どうやら、順調にオタク街道を進めているようだ。部屋に隠し扉があるのは、いかにもそれっぽい。
ドアを開けて、階段を降りると、カードのコレクションルームがあった。
しっかり、レア度と種類によって分けられているし、最高レアの金カードは指輪でも入っていそうな豪華な箱に収まっている。
俺は指輪より、断然、金カードが入っていたほうが嬉しい。
それに次ぐ、銀カードはショウウィンドウに並べられている。
それより下のレア度のカードは、台一面にずらっと置かれている。
本当に至福のひとときだ。
やっぱり、同じ趣味のやつと一緒にいると楽しい。
このギルドを潰さなければいけないのは、心が痛むが、クラスの連中を従属の紋章で拘束しているのは良くない。
そんなことをするやつでは無かったのだが......。
「どうした」
「いえ、素晴らしい部屋ですね」
「そうか、この部屋の良さが分かるか。好きなのを選ぶと良い。選んだら呼んでくれ」
「分かりました」
二人とも、部屋から出て行ってしまった。
まだ計画通りだ。
あとは、カードを本気で選んで、ちょっと細工をすれば完了する。
まずは青色のから。始めから最高レアのカードを見てしまうと、そのカードが普通のような気がして、目がなまってしまうのだ。
最高レアは効果が強いが、その分、魔力消費も激しい。普段使いするには使いにくすぎる。
悪事を働いているが、さすがギルドのことはある。カードの量が尋常じゃない。
ここのギルドマスターの南部君がオタクということも噛み合い、たったの二週間でとんでもない量のカードが集まったようだ。
確かにこれなら、クラスの連中に従属の紋章を付けたくもなる。
カードの選び方はこうだ。
①まずは一通り全体を見てみて、どんな効果のカードがあるのかを把握する。
②欲しい効果のカードを集めてみて、一番良いものを選ぶ。
③見た目に誤魔化されない。
いつもなら、こうなのだが、今回はちょっと違う。
魔物カードについてはよく分からないのだ。なんか、前にゲットしたカードもいつの間にか消えていた。
アイテムボックスに入っているから、盗まれるということはあり得ない。つまり、何らかの影響を受けているということだ。
そういうわけなので、今回選ぶカードは魔物カードでは無く、スキルカードになる。
魔物についての知識もないから、ちょうど良かった。
まず、良さげだったのは以下の5枚だ。
ステルス移動
これは一定時間内だけ、自分の姿を消せる。正確に言うと、目視で見つかる確率は変わらないが、探知魔法で見つかる確率が減少する。
水、地、風属性付与
今持っている属性付与は、火だけだから。場合によって、使い分けたい。
属性統合
二種類の異なる属性を同時に両方使えるらしい。詳しい効果は、実践で把握できれば良い。
そして、金カードを見ていたら、面白い発見をした。
それがこのカードだ。
地球の女神
対象に体力・魔力の永続回復を与える。これは、使用者の意思がない限り永続。
近くにいる生物・魔物の感知。これは魔力総量が多い人ほど、広範囲になる。
このカードの注意点としては、体力・魔力の永続回復中は、俺の魔力を消費し続けるので、回復を終わらせることを忘れずに戦う必要がある。
忘れたら、俺の魔力が空っぽになって、スキルカードが使えなくなってしまう。
話を変えるが、何が面白いかと言うと、俺は『太陽の女神』『月の女神』というカードも持っている。
中々に、コレクター魂を刺激する話では無いか。
少なくとも、この6枚のカードは確実にゲットして、他のカードは頑張って、南部君にせびることにしよう。
最終的には、紅葉も椿も返してもらえるし、良いことづくめだ。
自然と高まる感情に、やはり自分はカードゲームオタクなのだと、実感する。
他にも、面白いカードがあると、良いなっ!
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
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