28、ルーミルの危機(6)
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ルーミルの街に入った俺たちは大歓迎を受けた。
と、その時は思っていた。だって騎士団がわらわらと寄ってきたのだ。
みんな帯剣して、鎧をつけている。一部には騎乗している人もいた。
まるで街に入ってきた貴族を護衛しに来た騎士団のようであった。だから、勘違いしても仕方ないではないか。
紅葉が手を振って、椿が色々と自慢をして、楓が世間話をし始めた。そんな呑気な態度だから、抜剣して剣を向けられるのである。
「お前たちを、不法入国及び不敬罪で逮捕する!」
「大人しくした方が身のためだぞ!」
騎士団の皆さんには悪いが、俺はさっきの紅葉と楓のけんかの方が怖かった。
とりあえず、友好的にしていれば、勝手に俺たちが悪人ではないと納得してくれるはずだったのだ。
「おい、そこ!へらへら笑うな、気持ち悪い!」
即刻目を付けられ、俺の周りだけ厳重に固められてしまった。
紅葉たちはというと、よく分からんが騎士団の人と仲良くお喋りをしている。
ほんと、女の子はよく分からない。
むさ苦しい騎士のおっさんに囲まれるのは、結構しんどかった。
「おい開けろ」
「了解しました」
どこに着いたかと思えば、『騎士団詰め所』と書いているではないか。
その隣に、凶悪犯罪者・重罪人を収監中にて、市民の方々は気をつけられたし、というオマケ書きまである。
俺はわけあって獣人国王になっただけで、別に犯罪を犯してはいない。
というか、俺はちゃんと市民のつもりだ。
もちろん、異世界人だから、市民なのかは不安だが。
「ここに立ってくれ」
「分かりました」
取調室みたいな部屋に入れられるのかと思ったが、裁判所みたいな部屋に入れられてしまった。
だから、俺は全然穏やかじゃない。
拷問を受けないのは良いが、死刑宣告くらいは軽く言い渡されそうで怖い。
後ろの三人は、興味津々に辺りを見回している。
楓なんかは、誰が何属性の魔法が使えるだとか、あの人は結婚しているとか、色々と役に立たなそうな情報を教えてくれた。
「旦那様、あの人、二属性持ちですよ」
「それって、スゴいの?」
「はい、それだけで官僚確定コースですよ」
やっぱり異世界だから、魔法が強いだけで偉くなれるのだろう。
カンカンと、木づちが鳴った。
「静まれ!刑を執行する。不法入国、違法奴隷所持、並びに不敬罪、その他余罪も合わせて、魔獣闘技場の刑と処す」
何の審議もなく、刑を執行されるなんて、聞いていないんだが。
せっかく、言い訳を考えたのに、無駄になってしまった。
ここは街だから、なぜ不法入国なのか聞きたいし、奴隷なんか持ってないし、不敬罪は俺の知ったことでは無い。
それに、その他余罪が何なのか気になる。
第一、魔獣闘技場の刑とか、子供が作ったような罰ゲームじゃないか。
こんなふざけていることを苦み走ったような顔で言われると、思わず笑ってしまいそうになる。
「何か、弁明は?」
「はい、はーい」
紅葉が小学生みたいに手を上げた。
クラスにいたら、先生の質問に必ず答える優等生になるのだろう。
「そこの奴隷は黙ってなさい」
「私は奴隷じゃないよ!」
紅葉があっかんべーをしながら答えたのを見て、裁判官っぽい人の顔がタコみたいになっている。
でも、紅葉を奴隷というのは許せない。
「そこの飼い主、首輪はどうした?お前の飼い犬が暴れているぞ」
あいにく、首輪は持っていない。
そんなものを持ち運ぶ意味が、俺には無いし。
「お父さんに言ったら、この街なんて無くなっちゃうよ」
「ええ、そうね。言ってきましょうか」
耐えかねた紅葉が言ってしまった。それに、椿も乗ってしまった。
ああ、もう、本当に面倒臭いことになった。
この二人は、変なところで共闘し始めるから、たちが悪い。
裁判官たちに変な興味を引かれかねないし、あの親バカたちは実際にやりかねない。
「紅葉も椿も一旦、落ち着こうか?」
「悪いのはあの人たちよね」
「じゃあ、受けて立つわ」
やる気満々になってしまった。
ブレーキの無い車なんだから、最初の一押しさえ無ければ大人しいのに、余計なことをするから......。
はぁ。
「楓、どうにかできない?」
「任せてください」
苦し紛れに聞いたのだが、案外楓ならどうにかしてくれそうだ。
やっぱり女の子の問題は、女の子に解決させるのが一番のようだ。
「二人とも聞きなさい!」
楓の言葉がいつもより頼もしく聞こえる。
「ここで我慢したら、旦那様との一日デート券をあげます。どうですか、こっちの方が良いでしょう?」
ん、どうして、小声で喋るんだ?
普通に嫌な予感しかしない。虫の知らせというやつだろうか。
「旦那様、二人とも調教完了です」
「調教じゃなくて、説得だからな。それで二人とも、もう落ち着いたか?」
「私は始めから冷静です」
「別に、冬哉につられた訳じゃないんだからね」
まあ、引っかかることはあるが、一応大丈夫そうだ。
「楓、ありがとな」
「いえいえ」
いつものように手間賃をねだらないのが気になるが、きっと楓も成長してくれたのだろう。
円満解決で助かった。
「落ち着いたようだな。それで、もう質問は無いな」
さっきより強い口調だ。
あんまり裁判官もどきの機嫌を損ねるのは良くない。
誰かがまた問題発言しないうちに、さっさと刑でも執行されてしまおう。
不敬罪がどこまでの重罪なのかも知らないし。
「一つ良いですか?」
「何だ?」
「楓、変なこと聞くなよ」
そっと耳打ちする。
もう問題を起こされるのはこりごりだ。
さすがに次は無さそうな雰囲気だ。
「ええ、率直な疑問をぶつけるだけです。あなたにお聞きします。不倫なんかして楽しいですか?」
何分経っただろうか。
なんか、考えるのもアホらしくなった。
一つ思い出したことがある。楓の普通は、一般人の異常だったことをだ。
「そ、そんな嘘を言うでない。ここは神聖な所だぞ」
「ええ、でも、分かるんですよね〜」
そんなギャルみたいなノリで言う事じゃないだろ。
でも、この裁判官にやり返せるのは気持ちいいから、今は黙っておこう。
「いい加減なことを言うな。お前に分かるわけ無いだろっ!」
裁判官さん、それ、暗に認めることになりますよ。
「そうでしたね不倫じゃないですね、奥さんを入れて三人とですか。いやあ、お盛んですね。うちの旦那様にも見習ってもらいたいくらいです」
「そんな訳ないだろう。そこまで言うのなら、誰が相手なのか分かるのか!」
墓穴を掘ってしまった。
楓は精霊だから、誰と魔力を交えたかくらい、寝起きで俺を枕と勘違いしている時でも分かる。
紅葉情報だと、これはワザとらしいが。
「分かりますよ。そこの黒髪ロングの人、そこの眼鏡巨乳、あとはそうですね、この上の階にいる女性ですね」
なんか、ヒドい言われようの人もいるが、まあ仕方ない。
楓が遠慮なんて、できるはず無いのだから。
「旦那様、どうして残念な目で見るんですか」
「いや、別に、俺は至って普通だぞ。変なところで息継ぎをしたから、ちょっと嘘っぽく聞こえるかもしれないけど」
「何にも言ってないのに、自分で弁解してるのが怪しすぎますよ」
「木槌を持った貴殿にお伺いし申し上げる。この国では、ダブル不倫はどのような刑なのでしょうか?」
どうだ、ちょっと時代劇にハマっていた俺の実力は!
これくらいの敬語なら、お手のもんだ。
「そうじゃな、わしなら市民権剥奪かな。もちろん、相手の女性たちは教会でシスターにでもなってもらうが」
優しそうな白髪のご老人に見えるのだが、中身は違うらしい。
自分の髭を撫でながら、結構スゴいことを言っている。
「ありがとうございます」
「いやいや、お主たちはもう帰りなさい。あとはわしが処分しておこう」
「それでは」
無罪放免で許してもらえるらしい。
この隙に、とっとと遠くに逃げよう。年寄りは気が変わりやすいし。
当たり前のことだが、もちろん、俺は何の罪も犯していない。
「また遊びに来るんじゃぞ」
「はい、時間がありましたら」
いや、二度と来ないよ、じいさん。
来たところで、絶対ろくな目に合わない。
「では失礼します」
そっと扉を閉めてから出てきた。
それから、そっとなるべく自然体で、騎士団詰め所から脱出した。
やっぱり、列に並ぶのは大事のようだ。横入りがダメなのは、いつの時代でも同じなのだろう。
俺は横入りする気はなく、ただ通り抜けられたら良かったのだが。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
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