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2、カードゲームの世界へ(2)

 サァーと吹き抜ける風、シャワシャワと揺れる葉、キラキラと眩しい太陽、そして僕の手の上にある3枚のカード。


 ここまで来ても、あまり異世界に来たという実感が湧かない。でも、俺の周りにはみんなが召喚した魔物が動き回っている。


 召喚したい魔物のカードをカタパルトに入れる。そして「オープン」と一言発すると、目の前に青色の画面が出てくる。上から、レベル、体力、魔力、カタパルト内のカード一覧だ。カタパルト内のカード一覧をタップすると、魔物を召喚したり、補助効果を乗せたりできる。


 そして、自称神様から貰ったものがもう1つ。アイテムボックスの中身だ。この世界の服1着、剣1本、水と食料およそ1週間分、寝袋、地図だ。本当に最低限度しか入っていないから、いち早く街にたどり着く必要がある。


 そのはずだが、どうしてこうなった......。


「おい、1人1枚よこせよ」


「もちろん、逃げた時は覚悟しろよ」


 この異世界に来てまでも、かつあげをしている馬鹿たちは不良グループだ。地球にいた時はあいつらの上に親玉がいたから、ある程度は大人しかったが、この異世界ではそんなことは期待できない。


 むしろ、期待しない方が良い。


 始めは止めようとしていたバカ真面目な人たちも、すでに諦めている。そりゃあ、仲間の補助カードで強化しまくったドラゴンが構えているのだから。


 ちょっとでも逆らったら、あの鋭い牙で噛みちぎられてしまう。今の俺では相手にもならないだろう。1対多数はあまり好ましくない。


「羽田、成田、逃げるぞ」


「で、でも......」


「みんなを助けないと......」


 こんな時にも馬が合う2人に半ば呆れつつも、2人の肩の上に手を置いた。


「分かってるだろ」


「......分かったよ、ニッシー」


 俺たちは他のクラスメイトが絡まれている隙に、少しずつ地面を擦りながら足を後ろに進めていた。あの草むらを越えられれば、逃げ切れそうである。


 ちょっと罪悪感は感じるが、今はそんなことを言っている場合じゃない。自分の命が最優先だ。


 すぐ横にいる羽田と成田の足が止まった。


「あれって......」


 有り金全部使ってカードを買ったけど、欲しかったやつが、それだけでなく最高レアさえも出なかった時のような声を上げた。


 カードゲームのことしか分からない俺でも何かを察した。


冬哉(とうや)くん!」


 後ろからあいつの声が聞こえてきた。


 くそっ、不良どもめ、やってくれたなっ!


 振り向いて確認してみると、やっぱり俺の名前を呼んだのは幼馴染の美桜里(みおり)だった。記憶には残ってないが、保育園からずっと同じ所に通っていた。


 不良どもに飛びかかりたい体と、諦めろと諭している心がせめぎ合っている。早く決めないと、どっちにも間に合わなくなってしまう。


 俺はどうするべきなんだ......。


「ニッシー、どうする?」


「俺は...」


 2人の顔を見て、ハッと気付いた。


 いや、違う。この選択には羽田と成田も絡んでいる。俺の選択1つで、こいつらにも被害が出るんだ。息を吐き切ってから、息を肺一杯に吸って答えた。


「俺たちは逃げるんじゃない。一度、撤退するだけだ」


 撤退だ、逃亡じゃない。必ず戻ってきて、あの不良どもに格の違いを見せつけてやる。


 美桜里には申し訳ないが、ここではこうするしか無い。頭の中を走馬灯のようによぎっていく、美桜里との思い出を振り払うように走り出した。


 俺に力が無いから、こんな決断をしなくてはならないのだ。絶対的な力さえあれば、あんな不良ども、簡単に倒せるのに。最強になるための手っ取り早い方法は1つ。


 カードを全て集めて最強になってやる!


 後ろから、不良が2人追いかけて来ている。こんなところで捕まるわけには行かない。


「羽田、成田、分かれるぞ」


「では、また今度」


「お互いに強くなりましょう」


 ああ、当たり前だろ。俺はカードゲームの世界チャンピオンだぞ。負けるわけが無い。


 俺が手を上げたのを合図に、羽田と成田は進む方向を変えた。不良どものスピードが一瞬落ちた。その瞬間に木が鬱蒼(うっそう)と茂っている方に足を踏み入れた。




 大木の後ろに隠れていること、1時間。不良どもの声が聞こえなくなった。


 この間、何もしなかったわけでは無い。自称神様に貰った地図を見て、この先の進路を決めていた。


 まず、ここはパルム森林の北側。この森林にはリバル川が東西に流れている。おそらく星印が転移した場所だろう。このパルム森林を中心として時計回りに、北東にルーミル、東にブランチ、南東にルミナ、南西にフォルス、西にケール、北西にマーラカがある。


 このうち、北東のルーミル、南東のルミナ、南西のフォルスが街で、他は村のようだ。他にもパルム森林からブランチという村を繋いだ先に、王都がある。名前が王都なのだろうか?


 おそらく、みんなは約90km離れた北東のルーミルに向かうだろう。僕はこれ以外の2都市で近い方、つまり約170km離れた南東のルミナに向かわなければならない。食料は1週間分だから、ぎりぎり足りそうだ。


 今日は日が暮れそうだから、アイテムボックスに入っていた寝袋で寝ることにした。もちろん、魔物に襲われないために、運良く見つけた洞窟の中でである。


 てくてくと何かが歩いて来る音に気付かないくらい、ぐっすりと眠った。

まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。


もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。


ぜひ他の作品も読んでみてください。

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