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【完結】生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜  作者: 海空里和
終章 二人の恋と救国編

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女神様の提案

「トロワ、よく頑張りましたね」


 女神様はそう言うと、トロワの頭を撫でた。


「あのっ、女神様、初めまして。リリア・フォークスです」


 二人の前に出て、深く礼をすると、女神様はニコリと笑って言った。


「知っていますよ」


 ですよね……。女神様が私を生まれ変わらせたんだし…。


「リリア、また世界を守ってくれてありがとう」


 女神様は私の方に歩み寄ると、頭を下げた。


「いえ、私は出来ることをしただけです。それに、世界を守れたのは私一人の力じゃありませんから」


 私は正直な気持ちを話した。だって、私は恵まれていた。聖女の力にも、周りの人たちにも。


「リリアには普通に生きてほしいと思っていたのに…。今期の聖女は力も弱く、怠惰的だった。本当にごめんなさい」


 頭を上げた女神様は、申し訳なさそうに、手を頬にやった。


「いえ、おかげでルーカスにまた会えました」

「それについては私からも感謝したい」


 いつの間にか隣にいたルーカスは、女神様にそう言うと、私の手を繋いだ。


 私たちは見合うと、フフ、と笑った。


「そう……」


 そんな私たちを見て、女神様は穏やかに微笑んだ。


「じゃあ、二人にはお詫びに新しいギフトをあげましょう!」

「ギフト?」


 嬉しそうに両手を合わせた女神様に、私は首を傾げた。


「そう! リリアの年齢をルーカスと結婚出来る十六歳まで進めるの」


 女神様は嬉しそうに私に提案した。


「本当に…? そんなことが出来るの?」


 私は思わず言葉をこぼした。


 女神様は満面の笑顔で頷いている。


 本当に?私、ルーカスに追いつける?リヴィアだった頃の年齢まで進めるの?


 中身十六歳の私が本当の十六歳に?


 ルーカスと結婚出来る年齢に?


「ルーカス……!」


 私は、きっとルーカスも喜んでくれると思って彼の顔を見た。でも、彼の表情は期待したものとは違った。


「せっかくですが、そのお話はお断りします」

「ルーカス……!」


 ルーカスはこともあろうに、私の意見は聞かずに断ってしまった。


「ルーカス、何で……!」


 私は泣きそうになってルーカスに縋り付いた。


「リリア、君には君の人生をちゃんと生きて欲しい」


 わかってる!


「でも、ルーカスと結婚出来るんだよ?!」

「六年経てば出来るさ」


 知ってる!


「私は、ルーカスに釣り合いたくて……」

「リリア、君は充分すぎるほど魅力的な女性だ。私には勿体ないくらい……」

「ルーカスは私と結婚したくないの?」

「そんなわけないだろう!」


 子供のように泣きじゃくる私をルーカスは抱き締めた。


「リリア、君は王立学園(アカデミー)に通うんだ。」

「……いまさら?」


 私の背中をさすりながら、ルーカスは続ける。


「ずっと考えていた。これが終わったら、君の人生をやり直させてあげたいって」

「私は今の人生で満足しているよ」

「知ってるさ」


 フ、と笑い、ルーカスは私の涙を拭った。


「じゃあ、どうしてそんな離れるみたいなこと……」


 前からルーカスがそんなことを考えていたなんて。


 涙が止まらなかった。


「君が私の婚約者であることに変わりはない。ただ、リリアを自由に……視野を広げて欲しいと思った。それで六年後、私が選ばれなければそれだけの男だったということだ」

「私にはルーカスしか考えられない!」


 ルーカスの言葉に私は涙を流して抗議した。


 ルーカスは終始穏やかに笑っていて。


「ありがとう。私にもリリアだけだ。だから六年後、変わらずにいてくれるように私も努力するよ」


 ルーカスの固い決意が変わらないことは、もう充分すぎるほど伝わっていた。でも、それでも抗ってしまう。


「どうしても?」


 私の言葉にルーカスは困った笑顔で言った。


「そんなことをしたら、アレクとロザリーに顔向け出来ない」

「あ……」


 お父様、お母様。一気に二人の笑顔が浮かんだ。


「アレクとも大切な時間をどうか育んで欲しい」


 ルーカスの言葉に、私は自分勝手さに恥ずかしくなった。


 私は自分の気持ちばかりだった。アレクの、お父様がどう思うかなんて考えもせずに。


 ルーカスは私だけじゃない。フォークス家の皆の幸せを見据えて話してくれていたんだ。


「ルーカス、ごめんな、さい……ありがとう……」


 ポロポロと涙がこぼれ落ちる。ルーカスはそんな私を、優しく抱きしめてくれた。


「私が君を愛しているのは変わらない」

「それは私もだよ」


 変わらないルーカスの甘い言葉に、私も負けじと返した。


「……六年後、私はおじさんだな」


 ポツリと呟いたルーカスを見ると、彼は心配そうに私を覗き込んでいた。


「ふ、ふふふふ!」


 そんなルーカスを見て、私は思わず笑ってしまった。


「わ、笑うな! 六年後、更に綺麗になった君の隣に立つんだぞ……」


 ルーカスは赤くなりながらも、真剣に言った。


 何だ、ルーカスも同じような不安を抱えていたんだね。


 ルーカスの心に触れた私はすっかり涙が引っ込んでしまった。


「姿じゃなくて、魂に惹かれてくれたんでしょ?」

「ああ、そうだ」


 真っ直ぐ見据えて言えば、ルーカスも私をしっかりと見て答えた。


「それは私もだよ」

「リリア……」


「二人の答えは決まった?」


 私たちを優しく見守ってくれていた女神様から声をかけられる。


 私たちはお互いに見合うと、女神様に向かって頷いた。


 女神様は満面の笑みを浮かべた。


「二人の幸せをいつまでも見守っているよ」


 そう言うと、手を上げた女神様の手から光がキラキラと溢れ出した。


 そして、私たちは手を握ったまま、元の世界へと戻されて行った。


「トロワをよろしくね」


 最後に女神様の優しい声が聞こえた。

次が最終話です。最後までよろしくお願いいたします。

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[一言] ルーカスを若返らせれば…(笑)
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