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【完結】生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜  作者: 海空里和
終章 二人の恋と救国編

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お披露目式

 お披露目式の会場まで馬車でたどり着くと、会場の入口ではイスランを連れたルーカスが待っていた。


 馬車の扉が開かれ、ルーカスの手が差し出され、私はそこにそっと手を置いた。


 思えば、公式な場は、リリアにとっては初めてだ。


 正装をしたルーカスは、いつもよりカッチリとしていて、カッコいい。前髪を上げ、大人の色気が漂っている。


 ルーカスの手の上に乗せた、自分の小さな手を見て、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。


 私、こんな素敵なルーカスの隣に立って大丈夫かしら?!


 ぐるぐると、そんなことを思い悩んでいると、ルーカスから吐息がもれた。


「綺麗だ、リリア……。ここでキスしたいくらいに」

「!」


 私の心配を他所に、ルーカスからは甘い言葉が吐き出された。


 彼の表情を見れば、本気なのは伝わってくる。


 熱を帯びた瞳と、甘いうっとりとした表情に、思わず見惚れるも、先程の言葉を思い返して、私の顔は赤面した。


「こ、ここではダメですからね!」

「わかっている」


 慌てる私に、ルーカスは余裕な表情で微笑むと、私の手の甲にキスを落とした。


「今はこれで我慢する」


 不敵な笑みでこちらを見上げたルーカスに、増々私は赤くなった。


 大人の余裕なのか、いつもこちらが振り回させて悔しい。


「おい、ここじゃなくてもダメだからな」


 いつまでも馬車を降りない私の後ろから、アレクが顔を出して言った。


 アレクの存在忘れてた……!


「ちっ」


 ルーカスはアレクの顔を見るなり、舌打ちをした。


 とにかく、私はルーカス様に手を引かれながら馬車を降りた。


 ……身長が伸びてきたものの、ルーカスとはまだまだ差があり、これはエスコートというより、手を繋がれている子供……。


 つい忘れてしまうけど、これが現実なんだわ……。婚約者と言いながら、ルーカスとの距離はこんなにも遠い。


 改めて自分がまだ子供だと思い知る。


 そんなしょんぼりした気持ちでいると、突然ルーカスが私をふわりと抱き上げた。


 お、お姫様だっこ!!


「ルーカス?!」


 驚く私に、ルーカスはおでこを付けて言った。


「君は私の唯一だ。堂々としていろ」


 ルーカスは落ち込んでいた私に、またしても甘い言葉をくれた。その言葉が嬉しくて、私も笑顔になった。


 いつもは怒って入ってくるアレクも、後ろで私たちを見守っていた。


 そして、ルーカスに抱きかかえられたまま、私はお披露目式の会場へと入って行った。


 会場は広く、沢山の人たちが私たちの入場に注目していた。


 うう、恥ずかしい。こんな抱きかかえられたまま、良いのかしら?


 私は顔を赤くしながら、ルーカスの方を見るも、彼は堂々としたものだ。


 大人の余裕、さすが王族、と言ったところか。


 ……初めて会った時は情けない人だったのに、随分立派な人になったなあ。ううん、ルーカスは最初から素敵な男の人だった。『リヴィア』が隠させていただけ。


 短いこの半年間の出来事が濃密で、私はそれを思い返してニヨニヨとした。


「何を笑っているんだ?」


 そんな私に気付いたルーカスが至近距離で聞いてくる。


 抱きかかえられているせいなのか、いちいち距離が近い。


「ルーカスが素敵で、幸せだなあって思っていたの」

「そ、そうか」


 それだけ言うと、ルーカスは顔を背けてしまった。よく見ると、顔が赤い。


 そんなルーカスが愛おしくて嬉しかった。


 勝手に一人で落ち込んでいたけど、ルーカスはきちんと私を見てくれている。


 うん、しっかりしろ!


 ルーカスからこんなにも愛を受けているのに、勝手に自信を無くしそうになっていた自分に喝を入れると、ルーカスに言った。


「ルーカス、下ろして」


 私の表情を見たルーカスは、口の端を少し上げて笑うと、私を静かに下ろした。


 床に足をつけた私は、ルーカスの瞳と同じ色のドレスの端を持ち、ふわりと会場の人たちに向かってお辞儀をした。


 瞬間、会場には拍手が起こった。


「聖女様!」

「ルーカス様、リリア様、万歳!」


 私たち二人を歓迎する言葉が沢山投げかけられた。


「皆、お前たちの働きに感謝しているのだよ」


 その言葉の主に、会場にいた人たち全員が跪いた。国王陛下だ。


 ルーカス様と私も深くお辞儀をした。


 陛下の顔色はすっかり良くなったようだ。


「リリア、そなたのポーションのおかげでこんなにも動けるようになった。感謝するぞ」

「回復に向かわれて何よりです」


 陛下の言葉に、周りからは「リリア様が!」「やはり素晴らしい聖女だ!」と言った言葉が聞こえてきた。


 陛下はそんな周りの言葉に満足そうに微笑んだ。


 わざわざ公の場で話したのは、私のためにわざと(・・・)だと理解する。


 アレクにも聞いていたけど、陛下の中では、次期王にはルーカスで決まっているみたいだ。


 陛下に挨拶を終えると、私たちは皆に紹介された。


「私の息子がようやく新しい人生を歩む。素晴らしい聖女と婚約出来たのは喜ばしいことだ。皆、ルーカスとリリアを盛り立ててやって欲しい」

 

 陛下の言葉に、その場にいた人たちの歓声が上がった。


「事実上、ルーカス様が次の王だと公言したようなものですね」


 すぐ後ろに控えていたユーグがこそっと耳打ちしてきた。


 私たちの婚約のお披露目だけだったはずが、大事になっているようだ。


「またしょんぼりしないように見張っててくださいね。まあ、リリア様の方が長生きするから大丈夫ですね」

「おい、聞こえているぞ」


 ルーカスの後ろに控えていたイスランが、表情を変えずに私に言った。


 ルーカス様は突っ込みながらも、少しバツが悪いような笑顔で。


「リリアには情けない姿を見せていたな」


 頭をかきながら、子犬のような表情を見せるルーカスに、思わず吹き出した。


「今更ですか?!」


 笑い合う幸せな空間。その場所に来たのは、彼だった。


「兄上、リリア様、おめでとうございます」

「ジェイル……」

 

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