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【完結】生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜  作者: 海空里和
第二章王都編

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近衛隊へ

「リリア、朝だぞ!」

「ううん……」


 翌日。移動の疲れでぐっすりと寝ていた私は、トロワに顔をペシペシされて目を覚ました。


「もっと寝てたい……」


 目を擦りながら、身体を起こすと、トロワが膝の上に乗って言った。


「今日から早速、聖女業だろ! 俺も手伝うからな」


 フンフン鼻息荒く、トロワは朝から元気だ。


 改めて部屋を見渡すと、リリアのための可愛い子供部屋。アレクとロザリー、そしてリリアの三人で暮らしていた王都のお屋敷。


「本当に王都に戻って来たのね」


 実感を言葉にすれば、トロワは顔を近づけて言った。


「複雑か?」

「そうだね。私はリリアだけど、確かに『リヴィア』もいて、どうして良いかわからなくなる時がある」


 思わずトロワに弱音をこぼせば、彼は私の頬をプニプニの肉球でそっと触れた。


「リリアには普通に幸せな人生を送って欲しかったのに……悪いな」

「トロワ、それはもう言わない約束でしょ?」


 申し訳なさそうにしょんぼりするトロワに、私は彼の手に自分の手を添えて言った。


「リリアのことは絶対に死なせない」


 強い瞳でトロワは私を見つめた。今は猫の姿だけど、昔のライオンの姿を思わせる強い瞳。


 『リヴィア』が命を落とした時、トロワは側にいなかった。リヴィアの命令で、ルーカス様と一緒に魔物を食い止めていたのだ。


「ありがとう、トロワ」


 そのことを悔いているだろう彼に、私は微笑んでお礼を言った。


 張り切って「手伝う」と言っていた彼にも、強い決心があるのだと知り、私は嬉しくなった。


「トロワが一緒なら安心ね」

「当たり前だ! 今度は離れないからな!」


 威勢よく話すトロワに思わず笑顔になってしまう。さっきまでの複雑な気持ちも吹っ飛んでしまった。


 トロワには感謝だな。まあ、やることやるだけだしね!


 落ち込んだり、考え込んでも、「どうにかなる」精神の私は、ベッドを飛び起き、今日の準備をした。


 フォークス領では、マリーがお世話をしてくれていたけど、ここでは、自分のことは自分でする。


 王都のお屋敷には必要最低限の執事やメイドもいるけど、働き者のロザリー、つつましく三人で暮らしたいアレク、二人の意向だ。


 だからリリアも自分のことは自分で出来る。そんな育て方をしてくれたロザリーには本当に感謝だ。


 『リヴィア』を思い出した今、身体は小さくても、出来ることも更に増えた。


「おはよう、リリア」


 食堂に向かうと、隊服姿のアレクが先に席に着いていた。


「おはようございます、お父様」


 私も挨拶をすると、席に着く。


 美味しそうな朝食が目の前に用意され、私はアレクと一緒に朝食を取った。


「リリアは今日、近衛隊に来るんだろ?」

「はい! 一緒に活動させていただくのでご挨拶に」

「リリアが聖女だと知ったときは驚いたけど、仕事でもリリアに会えるのは嬉しいなあ」


 朝食後、紅茶を飲みながら、今日の予定を話しあっていると、やっぱりアレクが親バカを覗かせた。


「そうだ、近衛隊から、リリア専属護衛を一人選出しておいたから」

「え?!」

「私の可愛いリリアに何かあったら困るからね」


 ……隊長の権限を行使して、アレクったら。


 『リヴィア』に専属護衛はいなかった。というより、常にルーカス様と一緒だったから、アレクが自然と護衛になってたのよね。トロワもいたし。


「俺がいるから大丈夫だぞー!」


 ミルクを貰って飲み終えたトロワが、アレクに向かって、ニャー!と言った。


「リリアの従属精霊は、リヴィア様と違って猫だからなあ」


 トロワを見て苦笑したアレクに、私も、はは、と言って笑う。


 トロワは本当はライオンなんです。『リヴィア』の精霊と同一人物なんです。


 そう思っていると、ふと疑問が頭に浮かんだ。


「トロワは本当の姿に戻らないの?」


 そんな私の疑問に、トロワは意味ありげに答えた。


今は(・・)戻れないだけだ」


 それ以上、トロワは教えてくれなかった。


 何か事情があるのかな?そう思いながらも、彼は隣に変わらずいてくれるのだから、私は気にしないことにした。


 そうして準備を終えた私は、行く場所が同じなので、アレクと馬車に乗り込み、近衛隊の隊舎へ向かうことになった。


 お屋敷を出ると、見知った顔がいた。


「おはようございます!」

「ユーグ様?!」


 フォークス領で出会った、近衛隊のユーグ様。


 何故彼がここに?そう思っていると、尋ねる前にアレクが口を開いた。


「今日は私がいるから、隊舎で紹介しようと思ったのに。もう来たのか」


 ユーグ様は胸に手を当て、アレクに敬礼をすると、あの人懐っこい笑顔で言った。


「早くリリア様にご挨拶したくて」


 疑問に思う私に、アレクはユーグ様の肩にポン、と手を置いて言った。


「リリア、さっき言っていた専属護衛だが、このユーグがやってくれることになったから」

「ええええ?」

「ユーグは優秀だし、近衛隊の中で一番リリアに歳が近いから話しやすいだろうし……」


 驚く私に、アレクは満足そうに説明する。


「それに、もう仲良しですからね」


 アレクの説明に割り込み、ユーグ様がウインクをして言った。


「ユーグは、リリアの専属護衛に立候補してくれてな」

「えええ、何でまた……貴重な戦力が勿体無いですよ?」

「リリア様ほどの聖女様は、無くてはならない存在なんですよ!! リリア様に付けるなんて光栄です」


 驚く私に、ユーグ様は力説をしてくれ、アレクはうんうん頷いていた。

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