表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜  作者: 海空里和
第二章王都編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/52

もう一人の聖女

「よく来たね」


 謁見の間に通された私たちは陛下に向かって深く礼をすると、頭を上げるように言われた。


 『リヴィア』としてお会いして以来の国王陛下。金色の髪は、白髪交じりになって、顔のシワも増えた。それでも威厳のあるお姿だけど。


 やつれていらっしゃる……?


 病気で床に伏せっていることが多いと聞いてはいたけど、大丈夫なのかな?


「もう一人、聖女が見つかったとは喜ばしい」

「はい。この者との婚約を認めていただき、ありがとうございます」

「聖女が王族と婚姻を結ぶのは慣習だからな」


 陛下は笑顔で私たちを祝福してくださった。


「ルーカス、もうリヴィア嬢のことは良いのかな?」

「………はい。私はこの国を守るために力を尽くします」


 父親としての心配を滲ませた陛下の言葉に、ルーカス様は一瞬、間を置きながらも答えた。


 きっとルーカス様の中にまだ『リヴィア』はいる。それでも前に進むと決めたのだろう。


「そうか……」


 それだけ言うと、陛下は、私に目を向けた。


「ルーカスを頼んだぞ」

「はいっ!!」 


 私は慌てて深くお辞儀をして答えた。


 陛下が私に向ける眼差しは優しかった。


 十歳のリリアを一人の聖女として尊重してくださる所はルーカス様と同じで。


 変わらない温かさに胸をじんわり感じながら、陛下への謁見は終わった。


「お前、さすが令嬢だな」

「は?」


 陛下への謁見が終わり、馬車に向かう途中の廊下で突然ルーカス様が私に失礼なことを言ってきた。


「子供のくせに仕草は洗練されているし、陛下の前でも物怖じしなかった」

「うちのリリアはそんなに堂々としていたか!」


 外で控えていたアレクは、合流するなり、護衛をしながらも会話に入り込んできた。


「叔母様のご教育の賜物です」


 にっこりと微笑んで答えると、二人とも納得してくれた。


 確かにフォークス領では淑女としての教育を受けさせて貰っていたが、一番は『リヴィア』の経験がものをいっている。


『リリア』はもっと子供らしかったけど、今更元のようには振る舞えない。


「俺を置いていくなよー!」


 そんなことを考えていると、馬車からトロワが飛び出して来た。


「だってトロワ寝てたじゃない」


 陛下に挨拶したらすぐに戻る予定だったので、寝ていたトロワを馬車に置いてきたのだ。


「俺は常にリリアと一緒だ!」


 ブーブー言うトロワを宥めながら、私は彼を撫でた。


「リリア、行くよ?」


 トロワと話していると、アレクから呼びかけられ、私は馬車に向かおうとした。すると。


「あなたが第二の聖女?」


 私たちが出てきた出入口とは違う所から、一人の女性が、男性に連れられて出てきた。


 ストロベリーブロンドのサラサラの髪がぴったりな可愛らしい女の子。その可愛らしさを更に飾り立てるような豪奢なドレス。上から下まで宝石がびっしりと付いている。


 よく見たら、髪、首、腕、指といった至るところにも、宝石付きのアクセサリーを身に着けている。


 可愛いのに、派手だなあ……と思っていると、最初に口を開いたのはルーカス様だった。


「私に会いに来るなんて珍しいな、ジェイル」


 ルーカス様が皮肉めいた笑顔を向けた先の男性を見ると、黒い髪にルーカス様と同じ青い瞳。


 えっ?!ジェイル様?


 『リヴィア』が死んだ年では、まだ十歳だった。


 大きくなって……!!


 すっかり大人になった彼を見て、私は何だか親のような気分になってしまう。


 十年前はルーカス様をとても慕っていて、無邪気な笑顔が可愛かった。でも今は……


「兄上が聖女と婚約したと聞きましたので、お祝いに」


 お祝いと言いながらも、ルーカス様を見る目は冷めていて、どこか馬鹿にしているようだった。


「本当にこんな子供が聖女なんですか?」


 その冷たい瞳は私にも下ろされる。


 兄弟揃って何なの、もう!


「お前の婚約者よりは働き者だと思うが?」


 私が馬鹿にされると、ルーカス様はすぐさま反撃してくれた。そしてジェイル様の隣のストロベリーブロンドの女の子に目線をやる。


 この子が一人目の聖女!


 ルーカス様の言葉で、『遊んでばかりの聖女』がこの女の子なのだと、私は理解した。


「ルーカス様っ!!」

「兄上! ソフィーはちゃんと役目を果たしています! 王都の結界だって、ソフィーが張っているのですよ」


 ソフィー様とジェイル様はルーカス様の皮肉に、怒って返した。


 ルーカス様も何でこんな言い方するんだろう。

兄弟仲、何でこんなに悪くなってるの?


 ルーカス様は、「そうか」と一言言うと、私の肩に手を置いて二人に紹介した。


「では、改めて紹介しよう。私の婚約者で聖女のリリア・フォークスだ。陛下にも許しを得ている」

「初めまして。リリア・フォークスと申します」


 ルーカス様に紹介されたので、私は二人に礼をして挨拶をした。すると二人も形式上の挨拶をすると、やっぱり馬鹿にしたような顔で。


「ジェイル・クローダーだ。兄上がまさか本当に子供と婚約するとは」

「ソフィー・コンツァです。うふふ。この国のことは私に任せていれば良いわよ?」


 二人は私が子供だから馬鹿にしているらしい。


 まあ、これが普通の反応よね。


「今更、王位に興味を持ったのかと来てみれば、兄上はやはり、どうでも良いようですね」


 ジェイル様はルーカス様にそう言うと、ソフィー様と一緒に去ってしまった。


 ジェイル様が一瞬見せた寂しそうな表情に、私は違和感を覚えながらも、嵐のように過ぎ去った二人を見送り、呆然としていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ