キングゴーダ
--私は可愛い。
可愛すぎてもう世界中の人達が踊り狂うくらい可愛い。私の可憐さを目にした人達はみんな私を放っておかない。
そんな私、日比谷真紀奈は今日も街に繰り出して私の美貌を世界中に振りまくべく女優としての仕事を探してた。
「あなた、私の映画に出ませんか?」
「え?」
潮風香る港町……あてもなく私が主演を務めるに相応しい仕事を求めてふらふらしてた時胡散臭い女から声をかけられた。
「……あなたは?」
「あ、私こういう者です……」
差し出された名刺には『阿部凪』と書いてあった。映画監督をしてるみたい。あら、私が探していた仕事が向こうからやって来た。
どうにも冴えない映画監督の言うところによると、映画を撮りたいみたいだけど主演女優が決まらないんだとか…
こんな映画監督全く知らないし面白い映画なんて撮れそうにないし、この日比谷真紀奈が主演を飾るからにはそれなりの映画でなければいけない……
「どんな映画?」
「いやまだ決めてなくて……とりあえず海に出て題材を探そうかと思ってます」
「……」
「どっか適当な無人島にでも行ってサバイバル映画でも撮ろうかなって……」
「ごめんなさいね…この日比谷真紀奈、B級映画の主演をさせとくには勿体なさ過ぎる逸材なので…あなたみたいな売れない映画監督の相手はしてられないの。はー忙しい忙しい」
「え?どう見ても暇してましたけど?お願いしますよ…役者がいないと映画撮れないんですよ……」
「いや」
無人島とか虫いっぱいいそうだし何日もお風呂入れなさそうだもん。
「あなたが出てくれればどんなしょーもない映画もアカデミー賞ものになりますんで。私には分かります、あなた、世界をとる女優だって」
私女優だって言ったっけ?
「まぁそこまで言うなら仕方ないかなー?この日比谷真紀奈、冴えない映画監督を世界に連れて行ってあげるっ!!」
「わーありがとうございますぅ」
--さてそんな成り行きで私達はこの日比谷真紀奈を世界中に知らしめる映画を撮るべく港に停まってたオンボロ船『シズミソーダナ号』に乗り込みます。
「ちょっとちょっと!!勝手に乗られたら困りますっ!!」
勝手に。
メガネをかけた船長、橋本がカメラを担いでズカズカ乗り込む撮影チームに苦言を呈す。
慌てて止めに入る船長にすかさず私はすり寄る。
「船長ー、私を無人島に連れってー?」
「ダメダメ!!何言ってんのあなた達急に。この船は今から蟹を取りに行くんだから!!降りて!!」
「船長~~この日比谷真紀奈と夕日を眺めながら海上デートしよ〜?」
「しょうがないなぁ…あなたみたいな美人に頼まれたら嫌とは言えませんよ。へへっ」
ちょろいな。まぁ、この日比谷真紀奈がこうまで頼んでるんだから、当然というか必然というか…
さて、そんなこんなで私達の冒険が始まります!!
「--そこの美しくて目が潰れてしまいそうなお嬢さん、俺はこの船のクルーの空閑だよ。結婚してください」
--そこで私は運命に出会ったっ!!
甲板で爽やかに私を誘う彼はこの船のクルー、空閑睦月……
一目見た瞬間理解した。この人が私の運命の人だって…
海上を走る潮風に髪を揺らした爽やかな彼が白い歯をきらりと光らせて私の肩をそっと抱いた。
「……っ、だ、だめよ……私はみんなのものだから……」
「ますます惚れたぜ…そんなあんたを奪いたい」
「……っ」
「俺はたとえ、この世界中を敵に回してでも、あんたを手に入れたい…だからあんたも俺の覚悟と愛を受け入れてくれ」
甘い声で囁きながら頬をぎゅーってつねってきた。
突然の行為にびっくりしたのと同時に、痛みとは別の痺れるような甘い感覚が胸の中でじわーーって広がったの。
これは……この感覚は……っ!
「ふふっ好きだろ…?こういうの。あんたの事はなんでもお見通しだぜ?」
「ど…どうして私がMだって……」
「愛してるからさ」
あぁ……この時私は知った。
この日比谷真紀奈はこの人のものになる為に産まれてきたんだわって……
海面をキラキラ照らす西日が熱い視線を送る船上で、私達の影は溶け合うように重なったの……
*******************
「島が見えたぞーっ!!」
船旅もしばらく続き…私と彼の蜜月も何度も繰り返し、日が沈み日が昇りを幾度か繰り返したある日、橋本船長の声が甲板に響き渡った。
「日比谷さん!島が見え…うわぁぁ!?こんなところで何をしてるんですか!?」
甘く溶け合う私達に凪が割って入ってきた。私達は慌てて衣服を着直す。
「……凪監督、私と空閑君の船上ポルノとかでいいんじゃないかな?」
「なにが!?」
「映画」
「おいおい真紀奈…世界中の人達に見られるんだぜ?」
「いいの…その方が…興奮するもの」
「ふふっ、この変態さんめ」
--チュッチュッ♡
「…………船長ーっ!この2人船から叩きおろしていいですか!?」
--日比谷真紀奈率いる撮影部隊が踏み込んだのは直線に伸びる遥か先の海面にぽつりと浮かぶ無人島…
「なんやねんお前らっ!!」
ではなかった。
上陸した私達を出迎えたのはその島に住む原住民達だったのだ!長と思われる女性原住民がやかましく騒ぎ立てる。耳にキンキン響く声だ。あと喋り方がなんかウザイ。
「村長!何そいつら!!」「神聖なこの土地にズカズカとぉっ!!」
後ろからもゾロゾロ出てきた。
「わわわわ…私達映画の撮影に来たんです……この島で映画を撮らせてください…あわわわわ」
「映画ぁ~?聞いた?レン」「風香、こいつらここがどこか分かってない。村長!!」
「ええかおどれらっ!!」
なんだろう…この変な喋り方の村長凄くムカつくよ……
「ここはしゃれこうべ島っ!!太古の自然と生物が息づく神聖な土地やねん!!余所者が気安く踏み入ってええ土地やないねんっ!!」
との事。
太古の自然と生物とやらには興味がないけどなんだか映画の題材にはもってこいな島ですね。
「はわわわわわ…す、すみません…ただの無人島かと思ったんですごめんなさい…はわわわわわ……」
でも肝心の監督がこのザマです。
仕方ない…撮影ができなきゃここまで来た意味がない。私がみんなの前に出る。
「危ないぜ真紀奈…」
「むっちゃん…ありがと。でも大丈夫、この日比谷真紀奈に任せて?」
「ふっ…真紀奈の美しさの前にひれ伏さない奴なんて居ないからな…」
「むっちゃん……」
「真紀奈……」
チュッ♡チュッ♡チュッ♡
「村長っ!!あいつら神聖な我が大地でふしだらな真似をっ!!」「串刺しだーっ!!」
「なんやねんおどれら!!」
「私は日比谷真紀奈。あの日比谷真紀奈よ」
「あの日比谷真紀奈かいっ!!ウチはこの島を取り仕切る村長、楠畑香菜やっ!美の女神の生まれ変わりよ……いくらアンタの頼みでも聞けんモンもある…出てってくれや」
「やだ。私の美しさをカメラに収めるの。邪魔するならこの島には永久にこの日比谷真紀奈の美しさの恩恵は届かない」
「ぐっ…それは生き地獄も同じ…せやけど今日は大切な儀式の日や…邪魔される訳にはいかんのや…」
「儀式?」
「せや…この島の守り神『ゴーダ』へ捧げる生贄の儀式の日や……」
「生贄っ!?」「ひいぃぃっ!?」
物騒かつ野蛮なワードに凪監督も橋本船長もビビり上がる。でもますます映画の題材として惹き付けられるものがあるじゃない?私には分かる…凪監督はスプラッターを撮らせたら世界一だって…
その時、後ろに控えてた先住民、風香とレンがとんでもない提案をする。
「村長!この女を『ゴーダ』の生贄に捧げようよ!!」「確かにっ!!レン頭いいっ!!美の最高神が生贄になれば『ゴーダ』も納得するはずっ!!それがいい!!」
「せやな。おいアンタ、ちょっくら生贄なってくれへん?」
ちょっくら生贄になる奴が居るか。
「ちょ待てよ」と私を抱きしめるむっちゃんが野蛮な先住民達に睨みを効かせる。
「俺の女をそう簡単にやる訳にはいかねーぞ?」
「なんやねんお前…こんなに頼んどるのに?柿ピーやるけん、な?」
「ふざけるな脱糞女、俺の真紀奈と柿ピーが釣り合う訳ねーだろ?」
「誰が脱糞女やねんっ!!」
これだけで映画が一本撮れるのでは?と言うくらい一触即発の緊迫した空気は割って入った凪によって何とか衝突を避けられた。
結局その日は私達は海岸に停まってる船に戻り、先住民達も村へと引き返して行った。
--ただし、不穏な空気を残したまま。
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「………………?」
「お、目ェ覚めたか?」
翌日、朝日の強い光に瞼の上から目を焼かれて目覚めを迎えると、真っ先に視界に入ったのは昨日の村長だった。
「……?」
何やら視界もおかしい。上下反転してる。それになんか揺れてる……
「……っ!?ここ!どこ!?ちょっと!!なんのつもりっ!!」
私は豚の丸焼きみたいに太い丸太に四肢を縛り付けられ吊るされたまま、丸太を担いだ先住民達に連行されていた。
周りに撮影チームやむっちゃんの姿はない。
つまり攫われたのだっ!!
「きゃーーーーっ!!こ、この日比谷真紀奈になんて狼藉!!いやーーっ!!痛い!!強く縛りすぎだし!!跡になったらどうしてくれるの!?離して!!あなた達!こんなことしてタダで済むと思ってるの!?」
「レン、生贄がなんか喚いてるよ?」「ふふ…縛られていても美しい。この美しさが失われるのは世界的損失だけど、島の平和の為よ」
「ちゅーわけやから、ひとつ捧げられてくれや」
凄く軽い調子で村長が言って、私を縛った縄が切られる。
「いやーーーーっ!!」
背中から地面に落ちる私。髪の毛に土が付いた、サイアク、今すぐシャワー浴びなきゃ。
連れてこられたのは古代遺跡みたいな、自然と太古の歴史が絡み合ったような不思議な空間だった。
まさに忘れ去られた文明の痕跡みたいな……
「『ゴーダ』よ!!生贄を受け取りたまえっ!!」
村長がどこかへ高らかに声を張り上げて、仲間を連れてそのまま走り出す。まるで何かから逃げるかのように……
「ちょっと!?こんなところに置いてけぼりにするつもり!?あなた達本当にタダじゃおかないからーっ!!訴えてやる!!1人残らず刑務所にぶち込んでやるーーっ!!」
私の啖呵も虚しく空に吸い込まれて、さっさと退散した先住民に取り残された私は1人途方に暮れるしかない…
え?私生贄に捧げられたの?儀式って今ので終わり?あんな適当な感じなの?
ポカンとして実感の湧かないまま立ち尽くしたら、背後から草木の揺れる音がする。
背中をぞわぞわ撫でる嫌な予感……
なにかねっとりとした気味の悪い気配を感じて私は反射的に振り向いたっ!!
『あらんっ♡可愛いお嬢さん♡』
そこには巨大な黒光りした何かが……
見上げる程の巨体にムキムキの肉体…太陽の光を浴びて重厚な輝きを放つ漆黒の筋肉は見てるだけで押しつぶされそうな威圧感を放っていた。
これが……『ゴーダ』?
ツルツルのゴリラ--そんな感じです。
……わ、私、今からこのゴリラに食べられるの?
いや…ただ食べられるだけじゃきっと済まない……
こんなに可憐で美しい生贄…きっとたっぷり楽しんでから食べるに違いない…陵辱して、欲望の限りを尽くして……そして……
「いやーーーっ!!私を汚していいのはむっちゃんだけよっ!!離れてこのケダモノっ!!」
『あらんそんなに怖がらないでもいいじゃない…それに、どうせなら女の子より男の子の方が良かったわ……』
野太くねっとりした響きで『ゴーダ』はあろうことか生贄であるこの日比谷真紀奈にケチを付け始めた。
こんな可愛くて美しくて最高な生贄を前に不平不満を垂れるなんて……っ!
それだけなら…いやそれだけでも万死に値するんだけど、やつはさらにとんでもないことを口走った。
『どーせならあなたと一緒にいた男の子が欲しいわ。交換してくれる?』
「なっ…むっ、むっちゃんのこと!?あなた、この日比谷真紀奈にケチをつけるだけじゃなくて私の恋人まで奪おうって言うの!?」
『いいじゃない、アタシだってずっとこの島で1人で暮らしてるのよ?いい加減孤独で死にそう…そろそろ恋人の1人も欲しいわぁ』
「……っこの!無礼者ーーーーっ!!」
私の渾身の平手打ちが『ゴーダ』の黒くて硬い頬を打つ。まるで金剛石のような硬さっ!!
『痛いわ何するの?』
「あんたみたいなモンスターにむっちゃんを絶っっっ対渡すもんですかっ!!」
『……あら』
「いい!?そもそもこの日比谷真紀奈を前に本当はあの子が良かったなんて--」
『あぶなぁい』
と発展を衝く勢いでブチ切れる私を『ゴーダ』が掴み上げた。
悲鳴をあげようとしたその時、草陰から大きなトカゲが飛び出して私がいた場所でガチンッと屈強な顎を打ち鳴らす。
「きゃーーーーーーーっ!!」
『ごめんなさいね。この島、先住民の田畑と長篠って奴のせいで変な生き物で溢れかえってるのよ』
太古の生物じゃないんかーい。
私を奥に追いやって化け物ゴリラと巨大トカゲの唐突なバトルが始まる。
……ああ、美女を巡って争うモンスター達。ケダモノをも魅了するこの美貌…
ってな感じの映画にしたかった……
「--真紀奈っ!!」
「え!?むっちゃん!?」
その時、第二の乱入者がモンスターのバトルを掻い潜って私の元へ…
私と助けに来てくれたむっちゃんはそのまま熱い抱擁を交わし、んもうすんごいべろちゅーをする。はわわ…溶ける……
「助けに来たぜ……」
「むっちゃん……早くこの島を出ましょう…ここは危険よ。あのゴリラがむっちゃんを狙ってる……」
『あら、ゴリラだなんて失敬ね』
ラブラブイチャイチャの私達の仲に入ってくる『ゴーダ』。いつの間にかトカゲを瞬殺してた『ゴーダ』がむっちゃんを見つけて好色な笑みを浮かべる。
『あらぁ…自分から来てくれるなんて…♡あなたが生贄になってくれるならこの女の子は返してあげるわよ?』
「むっちゃん……」
「ふん…ふざけるなよ?筋肉ゴリラ…俺は真紀奈とこれからたっっっぷり子供を作らなきゃならんのだっ!!」
『そう…残念、アタシのものにならないなら2人とも…死になさいっ!!』
「かかってこいやぁっ!!」
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映画が撮れなかったので街に帰ろう。
でもただ手ぶらで帰るわけじゃない……とんでもないお土産を持って……
「さぁお立ち会いお立ち会い!!世にも珍しいゴリラのオカマですっ!!」
映画は撮れなかったけど、島でむっちゃんがのした『ゴーダ』を生け捕りにして持ち帰った。
あ、ちなみに先住民達は暴れる『ゴーダ』に村どこ殲滅された。
大劇場の観衆の前で鎖に繋がれて晒される『ゴーダ』、その横でほくほく顔で鬼畜の所業を行う凪……
その光景を眺めて、なんだか胸が痛くなるのは私が優しすぎるからだろうか…
『あぁ、いやん……そんなに見つめないで……あら♡いい男がいるじゃない♡うふふふ…』
いや、おかしくなってただけだろうな……
「こちらが生贄にされかけた儚くも美しくそしてとても残念な売れない自称女優の日比谷真紀奈さんです」
「凪、殺すよ?のどちんこ引きちぎるよ?」
「日比谷さん!あの島でなにがあったんですか!?」「どうして無事に帰ってこれたんですか!?」「サインください!!」
凪のやつ……『ゴーダ』のみならず私を広告塔にあの島での出来事そのもので金儲けを企ててる……才能がないながらも栄光を掴もうともがく映画監督かと思ったらクズだった。
「……凪、この日比谷真紀奈は自分の奇跡体験を売り出す為にあなたに着いて行った訳じゃないんだけど?私の美しさを--」
「まぁまぁ……ここまで話題になってるのはこの事件のヒロインが日比谷さんだからだよ。ほら、これギャラ」
札束ズシンッ
「--とっても怖かったです……でも、私の美貌は野獣すらも魅了する…この日比谷真紀奈の前ではゴリラだろうが北京原人だろうが惚れずにはいられないという事ですね」
「「「「おぉーー……」」」」
まぁ?この日比谷真紀奈あってのしゃれこうべ島の冒険であるのは間違いないし?主役はこのゴリラではなく日比谷真紀奈、お分かり?
『ああああぁんっ!!背中痒いっ!』
なんて呑気なこと喋ってたその時!!
マスコミの前で華麗にポーズをキメてた私の後ろで突然野獣が暴れだした!!
鎖をビニール紐の如く引きちぎった『ゴーダ』がなんの前触れもなく発狂、汚らしい咆哮をあげながら私を掴みあげた。
え?
「うわぁぁぁっ!!」「バケモノが暴れだしたァっ!!」「誰かっ!誰か止めろ!!」
騒然となる劇場、我先にと逃げ出す凪。カメラを放り投げて回れ右して走り出すマスコミ勢。
「ちょっとっ!?誰か助けてよっ!!」
『背中がっ!!背中が痒いぃぃぃぃっ!!』
私を片手で掴んだまま街に飛び出して疾走するゴリラ。巨大なオカマによる暴走は街を吹き飛ばしながら駆け抜ける。
途中報道陣がこの緊急事態にカメラを向けてたからすかさずピースしといた。
この日比谷真紀奈、どんな状況だろうとファンサービスは怠らない。
……そうこうしてるうちに私はいつの間にか遮るもののない空を仰いでた。
ここはこの街で1番高い建物……港中央タワー……そのてっぺん。最上階展望台とかではなく、文字通りてっぺん。
強い風が吹きすさぶ高層ビルの頂上で、私と『ゴーダ』は見つめあっていた。
『あああ背中痒いわ。ちょっとかいてくれない?肩甲骨の間らへん』
「いや届かないわ」
『慣れない場所に引きずり出したりするからよ!!アタシの平穏な生活を返して!!』
ノリノリだったじゃん。
『……でも、あんたに会えて良かったわ』
「何突然、怖……」
『なんだかんだでアタシ、女のとしてあんたの美貌に憧れてたもの…アタシ、一から女を磨き直す』
女じゃねーだろ。
『次会う時は、ライバルよ』
『ゴーダ』が私の顔くらいある人差し指を差し出してきた……握手でもしろと?
「…………いや、そもそもあんたオカマ--」
--ダダダダダダダダッ!!
『あぎゃっ!?』
「『ゴーダ』!?」
突然背後から空を駆けてきた戦闘機の機銃掃射が『ゴーダ』の背中をすれ違いざまに撃ち抜く。
突然の奇襲に流石の『ゴーダ』も為す術なく…
『あぁ……そこ痒かったのよぉぉ……』
「『ゴーダ』っ!!」
力尽きた『ゴーダ』がそのまま地面に向かって吸い込まれていく……
ちょっと……せめて最後まで言わせてよ……
巨大オカマの墜落に地上が騒然となるのを、私は強風に吹かれながらただ見つめているしかできなかった……
「……太古の王者も、ヒトの力には勝てなかったね……」
「あれ?凪?いつの間に?どうやって登ってきた?」
「日比谷さんの美貌が野獣を仕留めたのだ……」
--リリリリリリッ
--ジリリリリリリリリリリッ!!
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!
「………………っ、はっ…」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリラリリリリッ!!
「………………朝?」
…………夢?
「真紀奈ー遅刻するわよー、早く起きなさーい」




