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3年間を振り返ろう③

3月の卒業式を控えた3年生達と巡る思い出の旅……予餞会はスライドショーが見せる懐かしいワンシーンに大きな盛り上がりをみせ、それは彼らがそれだけ濃密で有意義な3年間を送ってきた事を意味している。


 熱気に包まれる体育館で雄叫びをあげる3年生を見守るのは私、葛城莉子である。


「……なんか…」「煙くね?」


 そしてとうとう3年生の興奮と熱気で発火しだした体育館である。



 さて、修学旅行が終わり記憶の旅はいよいよ3年目……


 彼らが入学して3年目の思い出--3年目の年はとにかく我が校を巻き込んだ事件が多かった。

 そのスタートダッシュを切ったのが校内に侵入した不審者である。


 それは我が校に日比谷君への取材が殺到した日--非常識なマスコミが校門に押し寄せよりによって私が対応に駆り出された。


「ちょっと!勝手に入らないでもらいたい!」


 あの日校内に無断に侵入した怪しい男…彼を止めようとした私は刺された。


 そしてあろうことか校内で教師や生徒にまで刃を向けたクソ野郎は浅野詩音君と新1年生、彼岸神楽君の活躍でお縄になったのだ。

 それにしても詩音君と私を刺したあの野郎は許さない。末代まで呪う。



『--こちらがその事件の際、刺されて外に倒れている葛城せんせーです!!』

「「「「「ハハハハハハッ!!」」」」」


 ……そしてスライドショーに映し出されるうつ伏せで倒れる私。笑いに包まれる会場。とりあえず殺意が湧いた。


「げほっ!!」「うぅ!い、いかん……っ!!火事だぁっ!!」「校長!!校長!!どうします!?」

「…………」


 そして燃え出す体育館が白い煙に包まれていく中、暑さに気を失った校長が木偶の坊と化し、パニックに陥る先生諸君……


 それでもスライドショーは続く……



 --あの事件が学校に与えた影響の中で最も大きかったのは浅野姉妹の英雄化と彼岸神楽君の校内保守警備同好会入り。

 この一件で校内保守警備同好会が力をさらにつけた。


 やはりこの3年間で我が校の中心になったのは浅野姉妹--思い出を振り返れば真っ先にウ○コか彼女らが浮かんでくる……


 そして……この年の最大の事件。

 それは『関西煉獄会』がこの街にやって来た事だろう。


 この事件を語るのは少々複雑な気分だ。

 ヤクザの抗争が我が校の生徒をも巻き込み、橋本君が死にかけた。


 噂によるとこの街に『関西煉獄会』が抗争を仕掛けてきたのはあの魔人、宇佐川結愛との間でトラブルが起きたのが原因なんだとか。

 あの事件は3年生だけでなく1年、2年生も大きく巻き込み……


「この女はっ!!私の彼氏の佐伯達也を誑かした泥棒猫ですっ!!」

「違います。彼とはそんな関係では無いです。彼はそうですね……修行仲間です。この街に迫る危機に私は立ち向かわないといけないのです。彼も……」


 保健室に訪れた本田千夜君と彼岸神楽君が争ったり……

 本田君が煉獄会に連れ去られたり……


「--あきゅっ!!」


 私も死にかけたり(2回目)……


 夏休み中音楽フェスに校内保守警備同好会が乗り込んで暴れたり……

 その音楽フェスで橋本君がヤクザに刺されたり……

 幸い一命を取り留めた橋本君。彼の生還は実に喜ばしいものだ。今となっては彼も立派にアイドルデビューを控えているというのだから。


 我が校から2人も芸能の世界に……凄いことだ。


 だからこそ彼が目を覚ました時病室が糞まみれになったという事実は私の胸にそっとしまっておく……



 --ウーーーッ!!ウーーーッ!!


 なんか……外からサイレンが聴こえるよ。



 そして更に記憶は巡り……古城幸恵事件。

 夏休み明け直後に起こったあの事件は私も当事者となり街全体……いや世界そのものを巻き込んだ大事件となり私達の元へ降りかかったのだ。


 あれを超える面倒事は私の教師人生恐らくもうない。

 なんせ世界を救ったのだから。


 夏休み終盤から街を襲った巨大台風……

 謎の高熱に死にかける古城君……


 それらは全て古の大妖怪、『白面金毛九尾の狐』の仕業だったというのだ。


 九尾の狐によって肉体を得たトイレの花子さん。

 九尾の狐を封印する一族、妻百合君とその弟。

 彼女に同行してきた橋本君と宇佐川結愛。

 なんか途中でパーティーに加わった剛田君。

 現場に現れた日比谷君、とアイドルとテレビ局の人達。

 彼岸兄妹。


 色んな人達を巻き込んで最強の大妖怪から古城君と我が家のドアと軽自動車の弁償をかけて死闘を繰り広げた……


「あっぱらぽーっ!!」

「あじゃらかもくれんっ!!」


 九尾の狐との戦いの後、天界の天使により復活を遂げた古城君のご両親がアッパラパーになってしまった事だけが、悔やまれる。


 その後しばらくは古城家のアフターケアをしたものだ……


「ガタガタガタ……あ、あの……せんせー…お父さんとお母さんは…………」

「もげもげ?もげもげ!!」「こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「ひぃ……こ、これ、何してるんですかぁ……?」

「お父さんはもげもげだね。お母さんは転龍呼吸法を実践中だろう(震)」

「ひ、ひぃ?ひぃぃ……せんせー…これ、治るんですよね?」

「精神科にかかるのをオススメする」

「え?え?……莉子せんせー治してくれないの……?」

「もちもち!もちもちの木!!」「えふっ!!えふっ!!えふっっ!!」

「…………(笑)」

「莉子せんせー……?」

「………………すまない」

「莉子せんせーぇぇぇ!?」


 --古城君のご両親をどうしてやることも出来なかったのは、卒業していく彼らとの思い出の中で唯一悔やまれる事だ。

 古城君……強く生きてくれたまえ。


 濃密な戦いの日々からの体育祭、文化祭…


 相変わらず借り物を借りに行った生徒が戻ってこない借り物競走。チャリンコで走る部活動、同好会リレー。本物の馬でやる騎馬戦。やはり1着になれない速水君。


 あれだけバイトを注意されたにも関わらず文化祭で出店されることが認められたメイド喫茶。近隣のどこの駐車場にもランボルギーニが停まっていない謎のランボルギ姉貴。件の占い館。暴走する蜂。爆発する軽音部ライブステージ。


 どれをとっても賑やかな思い出だ。この思い出の1つひとつを食んで彼らは強く成長したのだろう…強くもなるわ。


 --そして3年生達の…というか校内保守警備同好会の最後の事件。

 野球部盗撮動画流出事件。



『--そしてこちらが野球部の盗撮動画ですっ!!』

「なっ……!!動画は全て削除されたはず!!校内保守警備同好会としてこれは見過ごせないっ!!」


 スライドショーで流される雄々しき裸体とキレ散らかす彼岸神楽君。


 そして体育館に雪崩込む放水……

 火災現場のただ中で最後の騒動の思い出を回顧する。



 誰が得するのか分からない野球部の盗撮動画の流出事件。そして校内保守警備同好会の内部抗争。

 瓦解する校内保守警備同好会--活動禁止にまで追いやられた校内保守警備同好会を復活させ、我が校の平穏を取り戻したのはやはり、あの浅野姉妹だった。


 よく分からんけど最終的に離羽威亜惨との戦いにまで発展した今事件。彼女らの活躍がなかったら我が校とネット上は野球部の裸体で混沌に陥っていた事だろう--


 そして今再び流出するヌード動画に怒り狂う彼岸神楽がそんな我が校で数々の偉業を成し遂げた姉妹の意思を継いでいる……


 彼女だけではない。

 彼ら3年生の成長と狂気はきっと後輩達に受け継がれていくだろう……連綿と続く我が校の歴史と共に。



 --ドババババババッ!!


 燃え盛る火を飲み込むように消防からの放水が雪崩込む。人が中に居るのに殺意丸出しの放水だ。


「うわぁぁぁっ!!」「な、なんだぁ!?」「おいっ!!火事だっ!!火事だぁぁぁっ!!」


 今更火事に気づいた生徒達の熱狂が放水でクールダウンしていく中で予餞会は水に流されたのであった。



 --いよいよ卒業。

 そして彼らの新しいスタートは目の前なのだ……

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