みんなもいいかな?
「ユニバーサススタジオオオサカ!?行きたいわっ!!このボケっ!!」
「えぇ……誰もお前は誘ってないんだが……」
「大阪やで!?行くやろ!!明日?行くで」
『……と、言うことなので。脱糞さん連れてきていいなら行くって。小比類巻が言ってます。』
神よ……いや恋のキューピットよ……
日比谷真紀奈の隣でドヤ顔をキメるのは未知なる力を用いて1度は断られたデートのお誘いを了承させたミートボール・ブルーマウンテン・チーズカマボコ…通称ミブチさん。
これが天界の力……いや、この日比谷真紀奈、むっちゃんと結ばれる運命にある女。これは私の引き寄せた豪運か。
「いや、このミブチさんの力です」
『日比谷はん?どないしますのん?行くんなら行く、行かないなら行かない、ハッキリしてどすえ』
「いいよ!全然おっけーだからっ!!ありがとう!!むっちゃん大好き!!明日は忘れられない1日にしてあげるよ!!」
『ほな待ち合わせの時間とか詳しくはライムしてくだはい。あ、あたしライムしてないどすえ。脱糞さんにしてどす』
「分かりました」
なぜ脱糞女に……?
「ふっふっふっ……これが恋のキューピットの力よ……みんな、私の事崇め奉って!!」
「どうでもいいけど早く帰ってくれるかな!?」
*******************
年パス持ってて良かった♡
--USO。ユニバーサススタジオオオサカ。
大阪にあるチ○ージマン研!の世界を余すことなく体験することができるってのが最大の売りのテーマパークである。
私達は駅に居た。新幹線改札口前。
当日凪の家から出発した私と凪、ミブチさん。ここにむっちゃんとおまけのウ○コが加わる事で今日のメンバーが揃う。
ここから大阪まで新幹線で片道2時間半…既に戦いは始まっているということである。
むっちゃんとおまけのウ○コが来る前に私達は事前に立てた作戦を擦り合わせる。
「まず、必ず排除しなきゃいけないのが脱糞女。アイツは上手いこと途中下車させよう」
「どうやって?」
「凪がお腹空いたって言って駅弁買わせてきて」
「なんで私なのさ……」
「アイツが居なくなったらもう後はこっちのものだよね☆」
「日比谷さん性格悪いよ…折角なんだから脱糞さんも連れて行ってあげようよ……」
脱糞さん呼ばわりしてる時点でお前も性格悪い。
「あのね?カノジョが一緒に居たんじゃデートもクソもないじゃん?」
「…………でもなんで私がやるの?」
「何のために連れてきたと思ってるの?」
「今日の日比谷さんいつにも増して酷い……」
「むっ!天使レーダーが運命の糸を察知したぞ!」
……来たか。
服装よし。髪型よし。メイクよし。
とうとう決戦だ……帰り、この駅に降り立った時、私の腕はむっちゃんと組まれているはず…
だって私には恋のキューピットがついてるもの!!
人混みの中からこちらに近づいてくる気配。私は120点のスマイルを作って振り返る!
「あっ!むっちゃ--」
「あらァ♡沢山居るわねぇ♡」
「本日はよろしく頼む」
「はぁ……はぁ……沢山の……声が聞こえますぅ…………ガタガタガタガタ…」
なんでだよ。
大本命むっちゃんこと小比類巻睦月とおまけのウ○コ、楠畑香菜--だけのはずなのに要らないのが3人も着いてきてる!?
ただでさえ脱糞女と凪要らないのに更に3人も増えてる!?
--陽気なメンバーの紹介だっ!!
「遊園地なんていつ以来かしらぁ♡うふっ♡楽しみよ♡」
モンスター、剛田剛。
「歓迎遠足以来では……?ひぃぃぃ…ガタガタガタガタ……」
バイブレーション、古城幸恵。
「ふむ…恥ずかし話、昨日から眠らなかったぞ」
太眉毛…誰だコイツ!!
「おはよう日比谷さん。なんかね、コイツらも行きたいって言うから新幹線代と入場料お願いしていい?」
「今日はあんがとな?日比谷アンタええやつやん♪ウチ、大阪憧れやったんや♪」
……………………
どういうことだ?とミブチを見るけれどミブチさんも肩を竦めて困り顔。
流石むっちゃん……いつも私の想像の斜め上を行く……
「あっ…と、急にそんなに連れてこられたら……てか、この太眉の人、誰?」
「後輩の小次郎君だ。体育祭の借り物競争で世話になった小次郎君」
「わたしだ」
知らねぇ……
「えっと、へぇ……なんか、意外な面子だね……どうしたのこのメンバー……」
剛田と古城さんとか…面識あるだろうけど遊びに誘うような間柄なの?分からない……さっぱり分からない。どうしてこの面子なの!?むっちゃんっ!!
「……やっぱり厳しいか。いや、日比谷さんの財布なら簡単かなって……いいよじゃあ。俺帰るから……ごめんなさい無理言って」
「いやいやいやいやいやいや。待って?誘ったのむっちゃんなんだけど?いいよ分かったよ!みんなで行こう!!みんなで行ったほうが楽しいもんね!お金?任せとけっ!!」
早くもこめかみ辺りがヒクヒクし始めた。
「ところでそこのねーちゃんは誰やねん」
「そうよぉ?小次郎きゅんの前にあなたが名乗りなさぁい……ん?あなた、なんだか不思議なパワーを感じるわねぇ……」
お前が言うな筆頭剛田がミブチさんに詰め寄る。何故か脂汗をダラダラ垂らすミブチさんが「な、なに……!?コイツから神格を感じる!?」と戦慄してた。
よく考えなくてもこのガタイのオカマに詰め寄られたら脂汗も出るよね。
「はよ名乗れ」
「それが礼儀だ。わたしは名乗った」
「……あなた、人間?」
「はっはっはっはっ……」
過呼吸になってる!?
「あ…………ミブチって言います。阿部さんとは小学校からのお友達で……」
「私なんだ!?」
*******************
ぷぁぁぁぁんっ!!
『ご乗車ありがとうございます。次は〜活けづくり〜、活けづくり〜…』
「ぎゃあああああああああっ!!!!」
--新大阪に向けて新幹線が発車した。自由席が空いてて良かった……
予定ではどっかの駅の停車中に脱糞女を降ろすはずだったんだけど……
「剛田ぁ、お前最近カレシとどう?」
「うふっ♡ようやく従順になってきたわぁ♡」
「ひぇっ……ガタガタガタガタ……」
「……おばあちゃん…今でも思い出す……おばあちゃんのあの味を……」
「アンタのばあちゃんの味?どないな味やねん」
「塩見が効いていた」
「なぁ?ここに居るんみんな先輩やからな?」
車内はカオスな状況だ……当然のように…まぁ当然なんだけどむっちゃんの隣を陣取る脱糞女だけでなく、おかしな仲間達が狂喜乱舞を繰り広げていた…
横3列並ぶ私と凪とミブチさんは動揺を隠せない……
「はぁ……はぁ……はぁ……」
特にミブチさんったらもう過呼吸が止まらない。死にそうだ。
「……日比谷さん、日頃の行いだね」
「こうなったら何としても全員途中で降ろす!!」
「無理だよ」
「凪何とかして。ベスト・オブ・ヒラメキーノでしょ?あなた」
「違います。恋のキューピットさんに頼んだら?」
「はっはっはっはっはっ……なんでだろ……ドキがムネムネ……止まらない……」
「……ねぇ、「当日のデートプランは任せろ」って言ってたけど大丈夫なの?」
「かっ……はぁ……」
「……え?医者にみせた方がいい?」
この天使さんほんとにどうした?
『次は〜えぐり出し〜、えぐり出し〜』
チャンスです。
「あ…あー!そういえばお昼ご飯まだだねー!!」
「日比谷さんまだ10時半……」
「駅弁とか買ってくれば良かった--」
「あたし、牛すき焼き弁当ね♡」
「ウチはなんでもええ」
「俺もトリュフが乗ってれば……」
「海鮮丼がいいです……ひぃっ!?ひぃぃぃぃぃっ!!!!」
「うむ……イクラを食したい」
………………
「はぁ……はぁ……私…………三色丼…」
「おめーが注文つけんじゃねーよ」
「はひっ!?日比谷さん……怖い……ガタガタガタガタ……」
「じゃあ、お金出すからじゃんけんで負けた人が買いに行って来るってことで」
「なぜだ?先輩が出すのなら先輩が--」
「黙れ太眉毛」
早くしないとえぐり出しから発車しちゃうでしょ!!凪!!なんとかじゃんけんの流れにしろ!!
「……小次郎君、先輩がお腹を空かせているんだ。ここは後輩たる君が買ってくるのが筋ではないのかね?」
……っ!?むっちゃん…流石むっちゃん。やはり私とむっちゃんは赤い糸でねっとり絡み合ってる……
そうだ行け太眉!まずはお前が降りろ!!
「あらぁ?後輩いじめは良くないわよォ?折角真紀奈ちゅわんがじゃんけんって公平な方法を提示してくれたのに…♡」
黙れオカマゴリラ!!お前はオカマなのかゴリラなのかはっきりしろ!!てかゴリラが新幹線乗っていいわけないでしょ!?
「せや、というか…睦月おどれさっきから図々しいねん。男ならおどれが出せや」
「金ないもん僕。そんなに言うなら僕ここで降りるもん」
「わぁぁっ!!いいんだよ!!私が出したいんだからいいんだよっ!!余計なこと言うな脱糞女!!」
「……やかましいわ。誰がクソ垂れ女や」
「あらぁ……早く決めないと電車出ちゃうわよぉ♡」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタ…こ、小人が……小人が近づいて来ますぅぅぅ!!」
早くしないとえぐり出しが終わって次の駅に行っちゃうじゃん…目玉をえぐられる乗客の悲鳴が焦りを生む。
「じゃあ……指スマで負けた奴が…」
「なんでそないな時間かかる方法やねん」
「知ってるか?脱糞さん。指スマって地方によって言い方変わるらしいぞ?」
なんて……
邪魔者降車計画が頓挫しかけたその時--事件は起きた。
「くはっ……!!」
「ひぃぃっ!?あのっ!!なんか……ミブチさんの様子がぁぁぁぁっ!!」
オドオドした古城さんの悲鳴にみんながミブチさんを見ると顔面蒼白のミブチさんがとうとう吐血してた。訳が分からん。
病気?え?天使って病気すんの?
「え?ちょっとミブチさん?大丈夫…?」
「はーーっはーーっ…あぁ……強力な神格の放つオーラが……私のストレス中枢を刺激して……かはっ!!」
「何言ってんのか全然分からない……」
「ぶべらぁぁぁぁっ!!!!」
1リットルくらい血を吐いた。ふざけた事しか言ってないけど少なくとも三色丼を楽しめるコンディションでは無いのは確かな様子。
「ひっ…………ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
激しく吐血するミブチさんの姿に絶叫する古城さん。そのせいで車内の注目が一気にこちらに向いた。
さっきまで夢中で乗客の目玉を抉ってた小人が駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか!?」
大丈夫じゃないけどあなた何?車掌か何かだったの?
目玉えぐり出し小人さん、ミブチさんの尋常ならざる苦しみ様に緊急事態だと判断。そして……
「きゅ……救急車ぁぁっ!!」
--こうしてミブチさんは途中下車を余儀なくされた。
そしてそんなミブチさんを放っておく訳にもいかず仕方なく私はえぐり出し駅に到着した救急車にミブチさんと乗り込んで病院まで走るのだった……
……………………は?




