表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
364/385

現代カルチャー研究同好会代表、妻百合花蓮だにゃん

「--今日の同好会活動だが…残念ながら橋本の野郎は東京なので欠席だ」

「…ぐすんっ」「うわぁぁぁんっ!!橋本パイセェェェン!!」


 先輩を慕う後輩達の姿に感動する俺、小比類巻睦月。高校3年生。


 我らが現代カルチャー研究同好会…前身アイドル研究同好会から支え続けた俺と橋本があと少しで卒業になる。

 残されるのは2年の香曽我部妙子こと福神漬けと1年の妻百合花蓮ことつーちん。

 我が同好会の未来はこの2人に託されることになる。


 …というわけで俺らには決めなければならないことがある。


「…今日はこの同好会の次期代表を決めようと思う。お前達心してかかれ」

「そんな…寂しい事を仰らないで下さい小比類巻先輩。留年しては?」

「黙れ。俺には既に将来に向けての人生プランが出来つつあるのだ…こんなところで躓けない…」

「はいはい!私に任せんですか代表!!」


 勢いよく挙手するのは防護服が脱げない香曽我部妙子。まぁ…確かに順当にいけば2年のコイツが代表だろう…


 …が。


「…福神漬け、同好会のリーダーというのはな、日々の活動内容を考えレポートをまとめ…同好会費をやりくりし…会議に出席し…大変なんだぞ?」

「先輩が出来てるんだから誰でも大丈夫っしょ?」


 ムカつくから毛虫防護服に入れといた。


「うわぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

「…防護性能に難があるようでございますね、香曽我部先輩」

「つーちん取って!!取ってぇぇっ!?」

「つーちん見ろ。この福神漬けの慌てようを…グループのリーダーたるもの常に隙を見せてはいけないんだぞ?それがこのザマだぜ」

「お言葉ですが毛虫はみんな嫌いでございます」

「あっ!!痒っ!?刺されたっ!?」


 こんなカレーの副菜は端から眼中にない。俺の答えは既に決まっているのだから…


「…時期同好会代表はつーちん、お前に決めた」

「私でございますか!?」


 お前と初めて会った時…俺は確信した。俺らが身を退いた時、次の時代を担うのはお前しか居ないと……


 俺はつーちんの細い肩を掴む。少し凝っているようだ。


「お前のこの細くてひょろひょろで頼りなくてこのまま握ったらへし折れそうな両肩に、この同好会の全てを託す…そして俺は明日からもう登校しないから」

「そ、そんな…私で務まるのでしょうか?」

「かっ…かひゅ…っ!?こきゅーこんなンに…かっはっ!!」

「私は4月でようやく2年生…」

「校内保守警備同好会が新体制になって復活したそうだ。代表は4月から新2年生の彼岸神楽…フレッシュさで負けんようにこっちもお前で対抗だ」

「?」

「それにほら、2年で代表なら2年間は次の代表どうしようって考えなくていいだろ?」

「そんな理由で…」

「とにかく全て任せる。後のことは頼んだぞ?」


 俺が全責任を押し付けるとつーちんはグッと唇を噛んでなぜか瞳をうるうるさせ始めた。かわいい。


「…………はい!妻百合花蓮、先輩方のバトンを受け取り、次期代表拝命致します!!」

「うむ」

「感動の瞬間だぁぁ……」


 *******************


 さて、次の代表が決まったらやることがある。俺はひとり張り切るつーちんを余所に香曽我部を呼び寄せる。


「……俺の任期も終了だ。つまり会費を使い込んでも俺に責任は無い。全部次期代表のせいだから…」

「わぉ」

「遊ぶぞ?」

「ひゃっふぅ!!」



 というわけで…


「今日は次期代表が正式に決まったのでその挨拶に来ました」

「妻百合花蓮でございます。この度現代カルチャー研究同好会代表を拝命致しました。よろしくお願い致します」

「帰らんかい」


 きゃっと♡らぶ港中央店--


 現代カルチャー研究同好会の活動といえばまずここの存在は忘れてはいけない。アイドル研究同好会時代から懇意にしている店だ。挨拶は欠かせないだろう…


 顔役、脱糞女への挨拶も済ませ、俺達は会費を使い込む準備が万端だ。今日はチェキを100枚取るんだ♪


「これからもよろしくお願い致します。楠畑先輩」

「いやよろしくせんわ。他所でやれ?」

「つきましてはこちら、4月からの活動計画書になります。御協力お願い致します」

「なんやこれ!?これ全部うちでやるつもりかい!?おい睦月!!」

「おれ、チェキチェキオムライス♡にゃんにゃん愛情カルボナーラで」

「私、にゃんにゃん♡オムライスで。萌え萌えのおまじない付きで」

「俺は生パンティを貰おう」

「黙れ」


 今月の同好会会費は580,000円。たしか「若者文化研究の為台湾に行く」って言ったら出た。

 無論台湾になど行くはずなく、パチンコで当たった俺の親父がキャバクラに行った日の如くメイド喫茶で豪遊だ。


「店の生パンティ全部持って来ぉぉいっ!!金ならあるぞぉぉっ!!」


 札束をばらまく俺。群がるメイド。店は貸切俺は社長。

 はははははは。なんなら同好会のツケでもいいぞ?もう、俺関係ないもん♪


「おいこら睦月、ここはそういう店やないんよ」

「きゃーっ!!社長!!」「お小遣いちょうだい?」「太っ腹ーっ!!」

「ふはははははっ!!社長ではない!ご主人様と呼べ!!」

「「「「「「ご主人様♡」」」」」」

「ふはははははっ!!福神漬けもつーちんも、好きな女を選べぃっ!!」

「ええ加減にせえよ?」

「では足立美玲様をお願い致します」

「美玲ちゃんは即身仏になったんで休みでーすにゃん♡」「代表様ぁ♡これからもきゃっと♡らぶをお願いしますだにゃん♡」


 ……こ、これが金持ちの気持ち…?

 今までは俺ん家の生活費とか、俺ん家の学費とか、俺ん家の家具の新調とか…そういう必要経費として計画的に使っていたが…

 そうか…同好会費もこんなに豪快に使えばこんなに気持ちいいのか…


 ふはははははっ!!見てろ!!俺には既に完璧な人生プランがある!!これは未来の俺だっ!!大金持ちになったらキャバクラでこれやってやるからな!!


 ふははははははっ!!見ろ!!メイドがゴミのようだっ!!


「おい睦月、猫耳メイド侍らせて楽しそうやな?短小早漏野郎」

「なっ…!?お前…」

「ご主人様様♡タバスコはいかがですかにゃん?♡」

「あ、ごめんなさい嘘です」


 離れろこの卑しいメイドがっ!!


「…そういやな?ウチ今度からバイトリーダーになるんや」

「なに?つまりメイド長…?」

「…いやまぁ…とにかくこのポンコツメイド達の教育係やねん。せやから--」

「高校卒業してもメイドやるつもりかお前…」

「せやから今度からおどれら「現代カルチャー研究同好会」係が代わるからな(怒)」


 脱糞女、出世。

 卒業後も地元には帰らないらしいし…ここでのバイトは続けるようだ。そしてとうとうメイド長に指名されたようだ。給料上がるんだろうか?


 てか、「現代カルチャー研究同好会係」ってなんだ?


「…今までは睦月とウチの関係のせいでウチがおどれらの処理係やったけど今度から現代カルチャー研究同好会には別のメイドが付くからな」


 しょ…処理係?


 そう言って脱糞女が奥から1人のメイドさんを連れてきた。


 茶髪のポニーテールの細身で低身長の…幼さを感じさせる美少女だ。吊り目が気の強そうに感じさせる。


古谷ふるたにや。好いとんのは名探偵コ○ンの安室さんや」

「初めましてにゃん♡現代カルチャー研究同好会処係の古谷にゃん♡萌え萌え〜〜きゅん♡にゃん♡」


 …高校生だろうか?脱糞女の扱い方的に後輩っぽい……いい歳こいてにゃん♡とか萌え萌え〜とか言っちゃうあたりかなりイタイ……


「現代カルチャー研究同好会次期代表のつーちんだ」

「妻百合花蓮でございますだにゃん。よろしくお願い致しますにゃん」


 ……つーちんも初めて連れてきた時には困惑していたが今ではにゃんとか言っちゃうもんなぁ…


「…なぁ睦月、それよりも圭子はどないしてん?なんか急に辞めてんねんけどアイツ…」


 圭子とは多分、橋本圭介の事である。なので俺は真実を告げる。


「ああ…アイツならアイドルになるって東京行ったよ」

「ふぁ!?まじなんけあれ!?」


「--次からは活動で当店を使う場合には使用料を頂くにゃ♡」

「し、使用料でございますか…?」

「そうだにゃ♡通常の料金とは別に1時間5万円頂くにゃ♡」

「5万円…!?それはいくらなんでもぼったくりではございませんか…?」

「お言葉ですがにゃ♡あなた達今まで「ツケ」ばっかりでまともにお金も払ってないですにゃ?」


 俺に白い目線が飛ぶ。俺は気付かないふりをしながら脱糞さんと話す。


「圭子はウチのNo.1やったんやで?あないいきなり辞められたら正直なとこ困るわ」

「チ○コ生えたメイドが人気No.1……?」


「楠畑先輩の時は通用しても、この古谷は許さないにゃ?条件が呑めないなら、ここへの出入りは禁止にゃ♡」

「ちょっ!ちょっと待ってくださいまし!!うちの同好会ときゃっと♡らぶ様はずっといい関係でやらせて頂いておりますのですよ!?そんな急に一方的に条件をつけられましても…」

「お黙りだにゃ♡そもそもおたくらの活動に協力する義理はないにゃ♡」

「くっ…毎月の活動費ですら5万円にも届かないというのに…」


 そんなことないぞ?台湾行くって言ったら580,000円出るから。

 それにしても…このメイドやり手である。

 俺には分かる…コイツはその使用料を自分の懐に収める魂胆だ…目が俺とそっくりだ。


「おい睦月や、頼むで…もう少し圭子にうちで働くよう言うてくれへん?美玲も居らんでうちも大変やねん」


「とにかく…払えないというのならお付き合いはここまでだにゃ!!」

「そ、そんな…っ!!どうしたらよいのでございますかっ!?小比類巻先輩っ!!」



 ……やれやれ。

 どいつもこいつも俺が居ないとダメだな。

 しかしつーちん。お前もいつかは気づく日が来るだろう…


 別にうちの活動にメイド喫茶は必須というわけではないことにな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ