圭介の夢
「おーーっほっほっほっほっ!!ケースケはトップアイドルになる器ですわーーっ!!」
「……人のホテルにまで来てなんだいきなり」
橋本圭介の護衛役として東京まで随伴した私宇佐川結愛の下にまたしても厄介事の匂いが立ち込める。
それは圭介を見送った後ホテルにまで現れた巻き毛の人間スピーカーみたいな騒々しい女--城ヶ崎麗子だ。
本気坂48と言えば知らぬ者は居ないほどの人気を誇る超国民的アイドルグループ。圭介が所属するヤッテ・ランネー・プロダクション所属のアイドル共である。
城ヶ崎麗子はその中でもずっと人気No.1に君臨し続けているトップアイドルである。
そんな圭介にとって大先輩にもあたる城ヶ崎麗子と圭介との関係に今ちょっとした亀裂が走りつつある。
原因はそう--私だ。
「おーーっほっほっほっ!!あなた!!ケースケの事を本気で愛していますのーーっ!?」
「……それ、どういう意図での質問だ?」
ついこの前顔面をぶん殴ったトップアイドルが私を試すように問い詰めてくる。その声量たるや上下階から人が集まってくるレベルである。まさに歩く公害…
「私、ケースケのゆく道にあなたは不要だと考えておりますのーっ!!」
「あ?」
「アイドルとは人々に夢を与えるお仕事!!ファンの抱く幻想を守ることもアイドルの務めですわーーっ!!いえっ!!ファンの幻想を現実として受け入れ、望むままの姿で居るくらいの覚悟が必要なのですわーーっ!!」
「……喧嘩なら表に出ろ。3秒で二度とアイドルできなくしてやる」
「カノジョ持ち男性アイドルにファンなんてつくと思いますのーーー!?ましてデビュー直後の新人にっ!!」
--城ヶ崎麗子が叩きつけてくるそれは私自身がずっと胸の奥に懸念として引っ掛けていたまさにそれで、その言葉に私は一瞬言葉を詰まらせた。
コイツの言ってることも……分かる。
「おーーっほっほっほっほっ!!もう一度訊きますわーーーっ!!宇佐川結愛さん!あなた本気でケースケを愛しておりますのーーー!?」
「……あっ……当たり前……だ」
なんだ?公開処刑?新手の羞恥プレイか?
「ならば!!ケースケの夢を邪魔するような事は辞めるべきですわーーーっ!!」
「……なんだと」
「ケースケの目指す世界にあなたは必要ないんですわーーっ!!少なくとも今はっ!!ケースケが引退でもした後に一緒になることをオススメしますわーーっ!!ケースケの事を本当に愛しているのならば、ケースケの為に身を引く事こそが真の愛ですわーーっ!!」
「……」
「どうなんですのーー!?」
「……そんなん、公表しなきゃバレねぇだろ」
吐き捨てる私に対して城ヶ崎麗子の生意気にも重圧を孕んだ視線がのしかかった。
「……ファンを欺く事をケースケにしろと?本気でアイドルを目指している彼に?」
「……っ、ア、アイドルにだってプライベートなところがあったっていいだろうが。それはファンを騙すことにはなら--」
みっともなくちょっとビビっちまった私に向かって「お黙り!!」と張り手が飛んできた。
もちろん止めたけど……
「あっ!……え?そこはぶたれることろですわ…………あっ!痛、痛たたたたたたたたたたたただっ!?痛いですわーーーーっ!?!?」
「なんなんだよお前……お前圭介の事好きなのか?」
「……痛いですわーーーっ!?……そういう話ではありませんわーーっ!!私は、橋本圭介のファンなのですの!!」
……ファン?
「ファン第1号でございますことよーーっ!?あっ……潰れる……」
「……ファン第1号は私だ」
「ファンなら弁えなさいですことよーーっ!!あなたはアイドル世界をなんっっっにも分かっておりませんわーーっ!!」
気合いだけで私の握力から腕を引き離しただと……!?
「おーーっほっほっほっほっ!!着いて来てくださいましーーっ!!」
「……あんだよ。私は今から3度寝するんだ」
「あなたにアイドル世界の一端をお見せして差し上げますわーーっ!!おーーっほっほっほっほっほっほっ!!」
「……いいよ別に」
*******************
「おーーーっほっほっほっほっ!!P!今日のスケジュールはどうなっておりますのーーっ!?」
「色々だ」
……なんか引っ張りこまれた車に乗せられたらなんと、本気坂48のメンバーが乗ってた。あと、圭介のプロデューサーも…
突然乗り込んでくる私に対する白い視線…聞こえてくる「え?あの人ってこの前初日でクビになったっていう…」「アイドル専属ボディーガードよね?」というヒソヒソ声…
「おい城ヶ崎!どこに連れてく気だ!?」
「おーーっほっほっほっ!!今日は私達のスケジュールに付き合って頂きますわーーっ!!」
「なんで!?」
「言ったでございましょう?アイドルの世界を見せて差し上げると。私の言っていること、骨身に染みるはずでございますわーーっ!!」
……なんてこった。
私を乗せたままなんの疑問も挟まずに発車するワゴン車。甘ったるい匂いが立ち込める車内において私の場違い感の半端なさときたら……
「この前のミュージックシチュエーションの時アンタサビワンテンポ遅れてたよ?」
「は?」
「遅れてたのわさび子でしょ?」
「なによ」
「鼻くそついてんぞ?」
「おーーっほっほっほっ!!みなさーーん!!喧嘩は止め--」
「「「「お前声デケェんだよ」」」」
……な、なんか…
テレビとかではあんなにキラキラ輝いてヘラヘラ笑ってんのに…殺伐とした空気感。全員眉間に皺を寄せて不機嫌そうというかブチ切れてるぞ…
「あとお前の香水くせぇんだよ。ぶち殺すぞ?」
「てかさてかさ、マナのやつら最近男できたらしいよー?」
っ!?
「は?舐めてんの?もしかして最近レッスン出ないの……」
「舐めてるよね?ムカつくからさー…今日ヒールの中に画鋲仕込んできた」
「きゃははははっ!!」
「次の野外ライブの時、ステージから蹴っ飛ばして落としてやろーか?」
「ウケるーっ!!」
……な、なんだこれ。
これが女ばかりの世界か……?え?もしかして私の周りの女子も影ではこんな感じなの?
バラエティとかであんなに仲良さそうに絡んでるコイツらの裏の顔のギャップに目の前でいじめの話が繰り広げられてるというのに反応出来ないくらいびっくりしてしまった……
アイドルってみんなこんなに性格悪いのか?圭介、いじめられたりしないかな?
「お前達この先トイレないから行っとけ」
「「「「「「はーい」」」」」」
「おーーっほっほっほっ!!サービスエリアですわーーっ!!皆さん気を抜かな--」
「「「「「「だから声がデケェんだよぶち殺すぞ!!」」」」」」
--サービスエリア。
停車したワゴン車からぞろぞろとアイドル達が降りていく。分厚いダウンとマスクを身につけた姿はちょっと面のいい一般人だ。
……てか高速乗ってどこまで私を連れてく気だよ。
遅れて降りてくる城ヶ崎麗子が私の横に並んで至近距離から「おーーっほっほっほ!!」と爆音をかましてくる。鼓膜が死んだ。
「あの子達はまだまだ未熟なのでございますわーーっ!!誰も見ていないところでもアイドルとしての緊張感を持たなければいけないと言うのに……」
「え?アイドルグループってみんなあんな感じか?」
「おーーっほっほっほっ!!うちのグループは特別仲が悪いですが、殺伐としたグループはいくつも知ってますわーーっ!!些細な事で亀裂が入ったり、いじめの対象になってしまうんですわーーっ!!例えば恋愛とか……」
「……っ」
「あれ?今の声……」「え!?嘘!?城ヶ崎麗子!?」「本物じゃんっ!!」
お前が高笑いするもんだから気づかれたぞ。ワゴン車の周りにサービスエリアで休憩してたドライバー達が生存者に群がるゾンビの如く集まってきた。
「おーーーっほっほっほっほっ!!みなさーーーんっ!!本気坂48の城ヶ崎麗子でございますわーーーっ!!」
「うぉぉぉぉっ!!」「すげぇ!!本物だっ!?」「握手してくださいっ!!」「お、俺のハンカチーフを貰ってくれっ!!」
なんか軽く恐怖すら覚えそうな群衆に囲まれても城ヶ崎麗子はブレない。いつも通り…それこそテレビで観るまんまの城ヶ崎麗子を演じきる。
真横でそんなプロ根性を見せつけてくる城ヶ崎が私に言った。
「ファンとはアイドルのプライベートにまでは踏み入らない…アイドルとファンの関係性を理解した上で応援してくれる…しかし全てのファンがそうであるとは限りませんわーーっ!!アイドルとは1歩外に出ればどこでもアイドルですわっ!!プライベートはないようなものなのですよーーっ!!」
「……」
「些細なスキャンダルが命取りになるこの芸能界…誰がどこで見ているか分かりませんことよーーっ!!なぜ芸能プロダクションがタレントに恋愛禁止など言い渡して厳しく縛るか分かりましたことーーーっ!?」
人の波にもみくちゃにされながらも一欠片の嫌な顔もこぼさない城ヶ崎麗子の語る行き過ぎたとも思えたアイドル論…
それを実践して見せつける彼女の姿に私は完全にぐらついていた--
*******************
「--宇佐川さーーん、今から年末の音楽番組の収録に参りますわーーっ!!今日は帰れませんことよーーっ!?おーっほっほっほっ!!」
「え?この人も連れてくの?」
「そんなことより麗子お前マジで車の中で笑うな。うるせぇ」
「殺すぞ」
……私は圭介に相応しくないのかな?
私は圭介にとって足枷なのかな?
真横から爆発する高笑いも右から左へ流れていくくらい私の頭の中はそんな考えでいっぱいいっぱいだった。
そんな考え事をしてる間にもワゴンは目的地に到着した。どっかのテレビ局だと思う。
宇佐川結愛、初テレビ収録へ……
「え?P……これ私も出るかんじ?」
「なわけあるか。そもそもなんで居るんだい君」
「お黙りP!!宇佐川さんは私達のボディーガードですわーーっ!!おーっほっほっほっほっほっほっほっほっ!!おーーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっ!!」
「っ!!おい黙れ!!」
現場入り早々その高笑いで照明器具をぶち壊しかける城ヶ崎麗子をPが制止する。それと同時に収録現場に現れた恰幅のいいおじさんにPが腰を低くしながら駆け寄った。
「誰?演者?」
「違いますわーーっ!!あの方はスポンサーですわーーっ!!うちの事務所にも多額の出資をしてくださっているんですわーーーっ!!あの方の采配で事務所の方針が変わることもあるんですのよーーっ!!おーっほっほっほっほっほっほっ!!」
せっかくヒソヒソ声で話しかけたのに全てを台無しにする城ヶ崎麗子の高笑い。
それに気づいたのかスポンサーとやらがにこやかに肉たっぷりの頬を緩ませてこっちに来た。
本気坂48の面々が若干顔を引きつらせたのはなぜだ?
「やぁ君達。久しぶりだね。頑張ってるかい?」
「おーーっほっほっほっほっ!!お久しぶりですわーーっ!!高笑いしてますかーーっ!?おーーっほっほっほほっほっほっ!!」
「こんにちは」「ちわ」「ども」
いわゆる上客って割にはみんな愛想が悪いな……
なんて隅っこで本気坂の連中を眺めていたらおっさんがこっちに詰めてきた。黄ばんだ目が私の頭からつま先までをじろりと舐め回すように観察する。
あぶねぇ……あまりの不躾さにパンチが出かけた。
「見ない顔だね。もしかして新人?なら私に挨拶しなきゃダメじゃないか」
なんだコイツ……っ!?いきなり手をスリスリ撫でてきやがったぞ!?
「…………は?死にた--」
「わーっ!!待ってくれ宇佐川さん!!違うんですよ助平山さん。この子は事務所のスタッフみたいなもんで……」
名前がやべぇ……苗字だか名前だか知らんけどこんな名前で生まれてきてコイツどんな気持ちだったんだろ……
「ふぅん……でも可愛いね。折角ならアイドルデビューしたらどうだい?」
「そんなことより手を離してくれよ」
「う、宇佐川さん……勘弁してくれ……」
間に入ったPが冷や汗ダラダラだ。物理的に引き離される私とおっさん。おっさんの冷ややかな視線にPが必死にペコペコしていた。
いくらなんでもビビりすぎじゃないか?
と、首を傾げている私の横に本気坂の1人がそっと寄ってきた。
「あんまり感じ悪くしないでよ…あのおっさんの気分次第でうちの事務所の仕事が増えたり減ったりするんだから…あの人を怒らせたらこの業界干されんのよ。あんたうちのスタッフなら私らの仕事の邪魔しないで……」
「なんでそんなに力持ってんだよ……」
「色んなコネがある上に株とか持ってるからじゃない?大企業大田権グループの幹部だし……」
……金か。
「……なんか、どんどん汚いとこが見えてきてお前らに幻滅しそうだよ」
「当たり前でしょ?芸能界だってビジネスなんだから……それにあんたの考える汚いなんて序の口だから」
「見てみ?」
私の周りに集まってくる本気坂メンバーがおっさんを指差す。その先ではやたら至近距離で接するおっさんと城ヶ崎麗子が居た。
てか、ケツ鷲掴みにされてるし…
Pは見て見ぬフリだ。局のスタッフとなんか話してる。
「……なんだあれ。いいのか?」
「城ヶ崎は人気だからねー。いい気味よ」
「逆らったら本気坂は業界から干されるからね。城ヶ崎も分かってんのよ」
「アイドルなんて芸能界では若造。弱いもんよ……あのおっさんに今まで何人のアイドルが泣かされたか……うちのメンバーだってさぁ……」
--そんな話を聞いて傍観に徹するつもりは無い。
だってそれ--いじめっ子じゃねぇか。
「……?」「ねぇちょっと!」「やめてよね……」「まじ?話聞いてた?」
拳を握りしめた私を本気坂が本気で止めにかかるが無視して私はおっさんと城ヶ崎麗子の元に--
城ヶ崎にベタベタと触れるおっさんとの間に物理的に割って入った。
「……?」
「おほ?あら?宇佐川さん……?」
露骨に不快そうな顔を向けてくるおっさん。が、不快度ならあんなもん見せられたこっちのが上だ。
「……おいおっさん。私、アイドルのボディーガードってのやらせてもらってんだけどさ……」
「おっ……おっさん!?君ぃ…さっきから随分な態度じゃないか。私が誰だか分かって--」
強気な姿勢を崩さないおっさんの不機嫌そうな声に現場に緊迫感が漂った。
この男を怒らせたら事務所の死活問題らしい。Pや本気坂が本気で止めに入ろうと駆け寄って来た。
--そしてそれを止めたのは私の放つ強烈な怒気だった。
現場のセットがミシミシと軋む。見えない圧が撒き散らされ空間そのものが激しく圧迫されるような緊張感--
金と権力に胡座をかいて今日まで生きてきた脳天気なスケベ野郎にも自身の置かれた危機的状況は伝わったらしいや。
こんな奴が圭介の飛び込む世界に居るのは不愉快極まる。何より、立場を盾に一方敵に弱者をいいように弄ぶなど……
「--お前、いじめっ子だな」
「き、君……一体……い、いじめ……?」
私の拳はいじめっ子には容赦しない。自重してた(つもり)の拳を久しぶりに開放する。
拳を振り上げた私の姿にその場の全員がギョッとした。が、誰1人私の拳圧を前に止めに入るなどという勇敢な行動には出られない。
ただ1人--城ヶ崎麗子だけはオロオロすることなくただじっと私らのやり取りを傍で見つめていたけど。
「死--」
死なないように加減はしつつ、私は握った拳を真っ直ぐおっさんへ--
--ここで私が事務所の人間としてこのおっさんをぶちのめせばヤッテ・ランネー・プロダクションは業界から干されるのか?
そしたら折角アイドルデビュー目前の圭介の夢は--
--すんでのところで止まった拳をから放たれた風圧はおっさんの脆弱な頭の見栄のみを吹き飛ばし見事な輝きをご開帳させるのみに留まった。
……が、おっさんの顔にはそれ以上の恐怖が確かに刻み込まれている。
私はおっさんの鼻先でゆっくりと拳を収めた。
「……はぁ……ひぃ……ひぃぃ……」
「…………おっさ…………助平山さん」
「あっ……ひぃ……」
金や権力では命は守れないということをおっさんは今日学んだようだ。
そして、暴力で解決できることなど限られているということを……かつて後輩から教えられた事を私は改めて思い知った。
「……うちのアイドルにあんまりベタベタボディタッチするの、やめてもらっていいですか?」
「…………は、ひぃぃ……」
*******************
撮影が始まればさっきまであんなに緊迫した空気感だったのに一気に甘ったるい顔になったアイドル達がたるんだ空気にしてしまう。
いやまぁ……実際撮影に望むスタッフや演者は緊張感溢れてんだろうけど見てるこっちはそんな気分だ。
切り替えがすげぇ。
車の中であんなに愚痴愚痴言ってた連中とは思えないほど……この世にこんなわざとらしい生き物居るのかってくらいの変わり様だ。
プロってすげぇ……
「おーーっほっほっほっほっほっ!!宇佐川さぁーーんっ!!」
「やかましいぞ」
遠巻きに撮影を眺めていた私の横に休憩に入ったんだろう城ヶ崎麗子が現れた。
さっきの礼のひとつもあんのかと思ったが……
「あなたヒヤヒヤさせてくださいますねーーっ!!何でもかんでも殴ればいいと思っていませんことーー!?おーーっほっほっほっ!!」
「うん思ってる。ちょうど殴りたくなるうるさい顔面があるんだ…」
「おーーっほっほっほっほっほっ!!しかし先程のぶん殴りたくなる変態は殴りませんでしたねーーっ!!」
「……あれは…」
「--あの男を殴れば事務所の評判に関わり、所属するケースケの邪魔をしてしまう…そんな顔をしておりましたわーーっ!!」
私の心情をズバリ言い当てた城ヶ崎麗子が私の顔を覗き込みながら「おーーっほっほっほっほっ!!」と爆笑する。人の顔を見て笑うとか……
「……」
「まぁ手を挙げかけただけで手遅れ感はありますけどねーーっ!!おーっほっほっほっ!!」
「……まぁそれは…………」
「あなたのような、気に食わない人には初対面でも殴り掛かるような野蛮人が--」
ボコッ!!
「おっ!?ぶべっ!?」
「チョーシに乗るなよ?誰が北京原人だ」
「……くふっ、なんという破壊力……はぁはぁ……おっ……おーーっほっほっほっほっほっほっほっ!!あなたのような野蛮人が拳を収めるとは……ケースケへの深い愛情をあの一幕で垣間見ましたわーーーっ!!」
鼻血出てんぞ?
「……どうやら私、野暮なことを言ってしまったようでございますわね」
「……あ?」
ぐんっと人差し指立てながら忠告するように顔を近づけてくる。鼻血でてんぞ?
「決して交際がバレてはいけませんことよーーっ!?もしそうなったら潔く身を引くことですわーーっ!!この世界、ケースケはどこを向いても敵だらけですことよーーっ!!」
「……なんだよ。いいのかよ?」
「おーーーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっ!!助けてもらった恩もありますことですし!!」
……まぁ、別にお前になんと言われようと…
私はアイドル目指してる圭介が好きなんだ。アイドルって夢に全力で向かってく圭介が好きなんだ。
好きだから付き合ってんだ--
圭介がアイドルやってるから付き合ってんだ--
「それと、事務所に掛け合ってあなたを再雇用して差し上げますことよーーっ!!あなたが居なくなればあのハゲおやじの怒りが再燃して事務所に八つ当たりされるかもしれませんし……ケースケとも近くに居れますことよーーっ!?」
「……なんだお前、良い奴だな」
「当たり前ですわーーーっ!!おーーっほっほっほっほっほっほっほっ!!おーーーっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっ!!」




