表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
343/385

あの人に抱かれたかったんだっ!!

 --校内保守警備同好会の存亡を賭けた(?)戦いもいよいよ最終局面を迎えたようだ。私達浅野姉妹、この命にかえても使命を全うしてみせるっ!!


「勝手に私の命まで賭けないでもらえる?姉さん」



 --前回までのあらすじ!!


 野球部盗撮動画流出事件の解決に奔走する校内保守警備同好会は跡目争いに起因するトラブルで活動休止。

 独自に事件の真相を追う浅野姉妹は真犯人が愛染高校の鬼瓦君だと断定!宇佐川さんの力も借りて拘束に向かうがそこでまさかの名前を聞くことになったのだった……

 なんと事件の裏を引いていた黒幕は『離羽威亜惨リバイアサン』だった!!



 ……ということです。

 浅野詩音、がんばるっ!!



 --離羽威亜惨。

 彼らとの因縁は修学旅行--プ・ロフェッショナル島で始まった。

 彼らは犯罪集団で女性を拉致しわいせつな動画を撮影した後闇市場に垂れ流すという非道を行っていたんだ。

 そんな離羽威亜惨が我が校の日比谷真紀奈さんを襲ったので、私と美夜で粛清した。


 ……離羽威亜惨は地元警察に逮捕され組織は壊滅、私達と離羽威亜惨との戦いはそこで終わった……はずだった。


「……まさか離羽威亜惨が生きてたなんて…美夜、お姉ちゃんびっくり」

「ホントびっくりだわ。頭かち割っていいか?」


 場所は夕焼けに沈む廃工場。

 剛力山君をいじめていた鬼瓦君と、彼と接触していた離羽威亜惨メンバー2名…

 宇佐川さんの助力もあり何とか抑えられた3人を前に美夜がキレッキレの悪人面で消火器を構えている。美夜は夕ごはんの時間に帰れないと機嫌が悪くなる……


「……分かっただろ?勘弁してくれ……俺だって盗撮なんて…………」

「……事情は分かりました」


 宇佐川さんはとっくに帰ったのにすっかり怯えきった鬼瓦君は叱られた子供みたいに丸くなって震えてる。

 目の前に今まで割った頭の血で染まった消火器を持った怖い人が居たら仕方ないかもしれないけど……


「動画サイトにアカウントを持ってるのはあなたですか?」

「……あ、ああ。俺らが盗撮動画をアップロードして…その収益を奴らに……」


 ……とはいえ離羽威亜惨がこんな手に出たのは私達を誘き出す為の餌。金の為ではなく、かつ私達が目的通り出てきたとなれば、彼らも動くはず……

 とにかくこの人といつまでも居るのは危険だし、家に帰るのも危ないかもしれない。


「あなたはアップロードした動画を全て消してください」

「……それと動画サイトの収益全部慰謝料として貰うからな?」

「……え?いや。収益は離羽威亜惨に…」

「お前の暴走族仲間は「シノギ」って言ってたぞ?いくらか分け前はあったんじゃないのか?なかったとしても払え。私が預かって被害者に渡すから……それともお前の脳みそ日本酒で溶かす?」


 美夜……目の奥に「¥」マークが見えるよ?


「……そんなことより警察に行ってください。あなたがしたのはれっきとした犯罪行為です。脅されたとか、そんなのは言い訳になりませんからね?」

「慰謝料か死かだ」

「行きます……殺さないで……命だけは……」


 ……うーん、廃工場で命乞いする男を見下ろす私達。正義はこちらにあるはず…なのになぜかマフィアにでもなった気分。


 こうして鬼瓦君は警察に出頭することを条件に解放した。約束を反故にしたら宇佐川さんを差し向けると念を押したので大丈夫だと思う。


 野球部盗撮動画流出事件の実行犯に関してはこれで捕まえたことになる。

 ……そしてここからは浅野姉妹の問題。


「さぁ終わった帰ろうか姉さ--」

「馬鹿言わないで」


 素早く美夜の腕に手錠をかけつつ私は宇佐川さんの覇王色に倒れた外人2人を睨みつける。美夜、心底面倒臭そうだ。


「離羽威亜惨を放ったらかしにしてたら私達いつ襲われるか分からないんだよ?」

「ポリスに頼もう」

「美夜、この事件は私達が決着をつけないといけないの…」

「なんで?」

「私と美夜のやったことだからだよ」


 私と美夜は隅っこで気を失っていた離羽威亜惨メンバーを叩き起す。


「起きろこらぁっ!!」


 消火器で……


「ゴバッ!?」「ッ!?ヒィッ!?」


 起こすつもりが美夜があんまり強く叩くもんだから1人頭から赤い噴水作ってまた倒れた。それを隣で見ていた目を覚ましたもう1人がガタガタと震え出す。


「……美夜、私達と離羽威亜惨はプ・ロフェッショナル島でぶつかった……だけ。日本で校内保守警備同好会をしてる事、どこかで情報を得てるはず」

「で?」

「私達に近しい存在に協力者が居るかも……その人から片付けないと危ないかもしれない」

「姉さん……片付けるとか言ってるけど…私らヤクザでもなんでもないんだけど?」


 もちろんですよ?


 そしてやることが決まれば美夜の動きは早い。担いだ消火器を振りかざしさっき美夜が頭かち割った1人の頭部に再び振り下ろした。

 すごい音がした。


「オーマイガッ!オーマイガッ!!」

「私らの事は誰から訊いた?答えろ」

「……組織ハ裏切ラナイゾッ!!」

「あぁん!?日本語聞き取り辛いんだよ!!来日すんなら日本語くらいマスターしてから来い!ぶち殺すぞ!?」


 ゴンゴンゴンゴンッ!!メキメキッ!!


「美夜!?死んじゃう死んじゃうっ!!美夜の方がヤクザじゃん!!」

「おいお前……レッドキャップって妖怪知ってるか?」

「……?」

「旅人を殺してその血で自分の帽子を赤く染めあげることを史上の喜びとしてるサイコーにイカした野郎だよ……私はな、この消火器の赤をより深くする為なら何っ人でも手にかける……そういう女だ」

「美夜……っ!あんたって子はっ!!」


 バチーーーンッ!!


「ぶべっ!?は!?」

「折角更生したかと思ったら……お姉ちゃんに隠れてそんな非道を!?ゆ…許さないっ!!お姉ちゃん絶ッ対許さないからね!?」

「……いや、今のは単なる脅し…………」

「この……大馬鹿妹!!チンピラ!!ロクデナシ!!ド屑!!ビンタ100連発の刑!!」


 バシンッ!!バシンッ!!バシンッ!!


「ちょっ……べっ!!げっ!?ぐべらっ!?」

「……コ、コイツラ仲間同士デ…オーマイガ……」


 美夜の頬っぺがアンパンマンになったので後で自首させます。さて……


「……喋る気になりましたか?それともこんな顔になりたいですか?」

「べぇばんびぼい…(姉さんひどい…)」

「ガタガタガタ……」

「喋らないとそこの裁断機でふたつにしますよ?」

「べぇばんぼぼうばべべぶばいっべ(姉さんの方がえげつないって)」

「……シャ、喋リマス…………」


 *******************


 --浅野美夜、激怒。

 こんなにキレ散らかしてるのは高級中華のフカヒレが春雨だった時以来かもしれない。オレンジから藍色に染まっていく空の下、深紅の眼光を輝かせ私と姉さんは学校へと向かっていた。

 ちなみに私の瞳の赤は今まで頭蓋骨を割ってきた奴らの返り血の赤だから。よろしく。


「……コケにしやがって…離羽威亜惨より先にシメてやる」

「美夜、顔に殺すって書いてるよ?ダメよ?」


 ……姉さんは甘い。

 やはり分からせなければならない奴には分からせる必要があるんだ。


 時刻は19時過ぎ……もうとっくに生徒達は下校した時間だろうけど…恐らく奴らならまだ居る。


 巨大鳥ロックの死骸が挟まった正門を押し開け、「なんだ君達今頃来て」と喚く守衛を消火器で叩きのめす。


「美夜!?美夜!?乱暴が過ぎるよ!?もういいじゃないっ!!美夜の消火器は十分赤いよ!!これ以上罪を重ねないで…っ!!」

「やかましいわ。消火器は元々赤いだろうが…」



 --離羽威亜惨が語った『協力者』…その名前に聞き覚えはなかった。が、顔写真と詳細を聞いた私はそれが誰だかがすぐに分かったんだ。

 なぜならそいつとは面識がなくても、事件の捜査に乗り出したタイミングで何度も動画で顔を見たから--


 そう…あの動画でだ。


 案の定野球部はまだ練習に精を出していた。が、ボールを拾い帰り支度をし始めていた頃だろう…

 青春とむせ返る汗の臭いとが入り混じるグラウンドに私達は突撃していた。


「校内保守警備同好会ですっ!!あっ!!違うっ!!今は校内保守警備同好会ではありませんっ!!高梨たかなし君!!出てきてくださいっ!!」

「…?」「……?」「浅野姉妹だ」「こんな時間になに?」「嫌な予感がする…」


 姉さんの呼び掛けに騒然とする野球部員達。屈強な野郎達が怪訝そうな視線を向けてくる中、校内保守警備同好会じゃない浅野姉妹には価値なんてないんだってちょっと寂しくなった。


「高梨出てこい!!例の事件の調査結果を知らせるからっ!!」


 私が一芝居打つ。すると心当たりがあるのか何人かの部員がハッとして胸と股間を隠すみたいに押さえる中、坊主頭の部員がぬらっと現れた。


 そう、コイツこそ全ての元凶--離羽威亜惨に私らの情報をリークしていた…そして剛田を介して私に事件の調査を依頼してきた……


「…浅野姉妹ですか?えっ…例の事件ってのはあの--」

「全ての元凶がぁぁぁっ!!!!」


 ゴンッ!!


 消火器は人を殴る為にある。激情のまま私は消火器で側頭部をフルスイング。悲鳴の上がる校庭でクソ野郎がばたりと倒れた。


「美夜…死んじゃうから。いつから消火器で頭殴ることしか能がない子になっちゃったの?」

「そもそも消火器ネタの始まりは姉さんだから」

「…っ!!一体…何を…俺が何したってんだよ!!」


 抗議の視線を向ける高梨に私は全てを知ってるぞアピールを始める。これをすると大抵の敵は本性を晒す。この手の連中はバカなのでとぼけるということを知らない。


「…お前、離羽威亜惨に協力してたな?しらばっくれても無駄だ。離羽威亜惨のメンバーが全て吐いた」

「私達への復讐を企てる離羽威亜惨と共謀して私達を表に引っ張り出したんだね。この盗撮事件、全て離羽威亜惨とあなたの茶番だったって事なんだね?」


 私らの追求に「…ふっ」とニヒルな笑みを浮かべる坊主。ほら見ろ、コイツら馬鹿だ。


「…どうしてこんな事を……?私と美夜を引っ張り出すならもっと簡単な方法もあったはず…あなた達の仕掛けたことで大勢の野球部員の尊厳が奪われたんだよ?仲間じゃないの?」


「野球部員の尊厳って何?」「なんか盗撮騒ぎがあったとは聞いてるけど…」「ああ…気持ち悪」


 容赦ないマネージャー達のヒソヒソ声と視線は体をくねくねさせながら胸と股間を隠すみたいに押さえる野球部員達に向けられていた。

 が、怪物のせいでオカマ化が進んでいる野球部において今さらである。


 まぁそんなことはいい。


 全てが暴かれた高梨は姉さんと私に嘲りの視線を向けてくる。手の上でまんまと転がされたピエロ2人を小馬鹿にした視線…ムカつくからとりあえず両目を爪楊枝で潰しておいた。


「ぐはぁぁ!?」

「…散々振り回しやがって。お前のせいで校内保守警備同好会は存続の危機だ。私らに恨みでもあったのかよ?」

「美夜…爪楊枝で目を刺しちゃダメだよ?」


 両目を潰されても尚クソ野郎は充血した目を憎悪に滾らせ私らを口汚く罵った。


「お馬鹿!!アンポンタン!!そんなに可愛くないっ!!バーーカバーーカっ!!」


 しかし罵倒が小学生レベル…


「なっ…だ、誰がそんなに可愛くないですって!?美夜っ!!消火器貸して!!」

「キレるとこ違うくね!?もしかして姉さん…校内美少女ランキングで日比谷に負けた事……」

「べっ!!別にそんなの気にしてないもんっ!!」


 …………姉さん。ああ姉さん、アンタいつからそんなキャラになっちまったんだよ。


「恨みだと!?浅野姉妹!!校内保守警備同好会!!お前らが剛田先輩に今までどんな仕打ちをしてきたのか忘れたとは言わせねぇぞっ!?」

「「…え?」」


 私らへの並々ならぬ憎しみを隠すことなく唾と一緒に吐き飛ばす高梨は予想外の名前を出して私らへの積年の恨みをぶつけてくる。


「何度も何度も……何度もっ!!俺の敬愛する剛田先輩を虐げ!!ついには無限監獄に投獄までしやがったっ!!お前らの行った非道の数々!!死んでもらわなきゃ示しがつかねぇ!!」

「……」「…なに、言ってんだ?」


「え?何?」「何言ってんだコイツ」「なんか…気持ち悪ぃ…」


 私らだけじゃなくて仲間の部員からまで言われる始末。が、そんなことお構い無しに奴は声高に宣言する。


「俺は剛田先輩が好きなんだっ!!」


 …これには浅野姉妹、空いた口が塞がらねぇっスわ。


「愛してるっ!!ずっと抱かれたいと思ってたっ!!」


 熱量が半端じゃなかった。その絵面を想像しただけで気を失いかけるレベルで寒気がした…


「…いや、えっと…その……性的趣向に関しては他人がとやかく言うものでもないので…その…」


 見ろ、さっきまであんなに怒り狂ってた姉さんが水をかけられた熱したフライパンの如く冷めてしまった。


「……お前、事件でショック受けたフリして剛田に抱かれてんだろ?」

「そこはありがとう」

「やかましいわ」

「だがっ!!それくらいでお前らが剛田先輩にやってきた非道の数々は許されねぇぞ!?」

「いや校内所構わず男を襲ってるアイツが100悪いから」


 つまりコイツ、私らへの逆恨みから離羽威亜惨と手を組んでかつどさくさで自分の願望も叶えましたってか?もうドン引きもいいとこである。

 なんか…もうどうでもいいというか関わりたくないって言うか……


 ……だがそういう訳にもいかないみたいだ。


「--浅野詩音、浅野美夜…俺と剛田先輩との恋路を阻む邪魔者…」

「「いや阻んでない」」

「お前らには死が相応しい……」


 グラウンドの奥から、闇に塗れてゾロゾロと足音を揃え出てくる無数の人影。その全てから並々ならぬ敵意を感じる。

 蜘蛛の子を散らし逃げ出す野球部達と対称的に私らはそこから動けないでいた。


 ……奴らの目的は私ら。私らが逃げれば火の粉が広がる。


 現れた連中はそう…離羽威亜惨。


 暗闇から覗く金属の輝きは構えた拳銃の銃口だ。そのグリップを握るのはでっぷりした黒人…


「あなたは…」「マックリー…」

「…久ジブリダナ。浅野…コノ日ヲ待チワビタゾ」


 マックリーとはプ・ロフェッショナル島で出会った警官の仮面を被った離羽威亜惨メンバーである。


「オ前ノセイデ俺達ハ大変ナ目ニ遭ッタ…」

「何を…っ!!あなた達が日比谷さんを襲うから--」「姉さんその話まだ信じてんの?」

「黙レッ!!俺ラハオ前ラニ何モシテナイノニ叩キ潰サレタンダッ!!」

「黙れ。てめぇらみたいな犯罪者集団どの道いつか潰されてんだろ?」


 …まずいぞ。

 ここで離羽威亜惨との戦闘は想定してなかった。消火器という最強の武装があるとはいえ向こうは30人くらい居るし…銃とか持ってるし…

 てか、よく考えたらコイツら普通に犯罪者だし…


 あれ?これやばくね?死んだ?


「俺達ガアノ後受ケタ屈辱…ウッ!!思イ出シタラ頭ガッ!!」


 何があったんだよ…


 マックリーが血走った目で私らを睨みつけ引き金に指をかける。間違いなく狂人の顔。一斉に後ろの連中も鉄パイプやらナイフやらを構える。


 前回連中を倒せたのは運が味方したからだ。今回は何も無いグラウンド…ヤバい。


「死ネェッ!!浅野姉妹ッ!!!!」


 膨張した風船の破裂音みたいな銃声が火花とともに銃口から飛び出した。私らの認識を超えるスピードで飛んでくる弾丸…

 撃ち出された後で対応なんて不可能だ。


「美夜--っ!!」


 つまり姉さんは弾が何処に飛んでこようと私の前に出て盾になるつもりだったことになる。


 私の前に飛び出した姉さんの肩に弾丸が被弾した。

 私の目の前で細かな赤い飛沫が舞い散り姉さんが後ろに大きく弾かれた。スローになる視界の中で姉さんの流れていく黒髪を私は目で追った。


 ……姉さん。


 確実に私の中で何かがプッツンした。


「当タッタ!!当タッタゼ!!ヘヘッ!!ヘヘヘヘヘヘッ!!エヘへへへッ!!」

「1発当タッタクライデ喜ビマクル犯罪グループノボスッテ…」「ナンカ…ダサイヨナ?」「ボス…」

「次ハオ前ダ浅野美--」


「--死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!」


 怒りで真っ赤に染まった世界の中で私は真っ直ぐ、それこそ弾丸のようにマックリーへと突っ込んだ!!

 喉が張り裂けるかと思うくらいの絶叫とともに消火器を抱えながら。


「美夜…ダメっ!!」

「コイツ突ッ込ンデ来ヤガッタッ!!」「コノオ馬鹿サンガッ!!」

「美夜……っ!!」


 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すっ!!!!


「ダメーーーっ!!それ以上その消火器を誰かの血で染めては…ダメーーっ!!!!」


 だから消火器は元々赤いっつってんだろ?


 放たれるは第2の弾丸。それは容赦なく私の胸辺りに飛んできた--多分。

 別に意識したつもりはなかったが消火器が弾丸を弾いた事を考えると多分そこら辺を狙われたんだと思う。


 白い粉末状の消火剤がジェット噴射みたいに前に向かって噴き出す。それはマックリーからの射線のみならず私から見たマックリーの位置も覆い隠す。

 それでも私は構わず軽くなっていく消火器を振り上げた。


「--おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 何も見えない白煙の中でとりあえず適当に振り下ろした腕に「ゴチンッ!!」と確かな手応え…

「クエッ!!」って悲鳴と共にマックリーと思われる人影が足下に転がる…


 消火器で防げたとはいえ「撃たれた」という事実が後から追いついて、全力疾走も相まって呼吸が荒くなる。

 真っ白な世界は怒りを一旦ビートダウンさせてくれながら徐々に晴れていく霧のように薄れていく…


「はぁ…はぁ…はぁ……」

「美夜っ!!危ないっ!!」


 姉さんの声が飛んだ。

 同時に重なるのは複数の足音だ。

 晴れてきた視界の端にはこちらへ刃物を向けて襲いかかってくる外人の群れが映っていた。


 容赦なくこちらへ切っ先を向けた男達は私の逃げ場を無くすように囲いつつすぐそこまで迫っている--


 --姉さんの悲鳴を受けながら消火器を構えた。


 全員は無理…でもせめてもう1人連れていく。


 刃は……あと数センチにまで迫っていた。



「--そこまでよん♡」


「っ!?」

「ッ!!」「ナ、ナンダ!?」「体ガ…ッ!!」


 走馬灯だろうか?気っ色悪い声がしたと思ったら敵の動きがピタリと停止した。

 だとしたらこんな感じで走馬灯に入んのやなんだけど…なんかねっとりした気色悪い声が……


 とか思ってたらどうやら時間はスローになってないし走馬灯ではなさそう……


「…あ、あぁ……」


 離羽威亜惨から少し離れた所で高梨が震えてた。爪楊枝生やした両眼は血涙を垂れ流しながら一点を見つめていた。


「話は全て聞かせて貰ったわん」

「…あ、あなた……」


 私はここで声の正体を知る。

 ナイフを手にした数十人に囲まれるというバイオレンスな状況で、私の向けた視線上…姉さんの隣にその男は立ってた。


「とりあえず、あなたのガッツに♡よ、美夜ちゅわん♡」

「「剛田剛!?」」


 全裸で。


「姉さんから離れろこのケダモノォォォ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ