チ○コ引きちぎるぞ?
お前なんなん?
本日をもちまして1周年です!!
ご愛読してくださった皆様、ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願い致します
本日は3話投稿分投稿ラストでございます。お楽しみください
来年もお前なんなん?をよろしくお願いします!!
--照明の絞られた一室には息苦しいほど重くて粘っこい熱気が充満してた。その空間を覆い尽くす湿度は目の前の彼女の吐息から吐き出されているみたいで……
汗ばんだ肌はほんのり朱を差して、微かに触れる体温はジンジンと体の末端から芯まで浸透していく…
心臓がうるさい。
熱と空気の重さで窒息しそうだ。
「…圭介さん」
白い布団の上で僕を見下ろすその人は薄い着物をはだけさせてゆっくりゆっくりと熱を孕んだ視線を垂らした艶やかな黒髪と共に近づけて……
いやーーーーっ!!
橋本圭介、人生最大の危機!!
一体何が起こっているのかというと……それは少し時を遡ってから……
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--それはまるで飛行中のジェット機の外側に張り付いてるような感覚でした……
「ぎゃあああああああっ!?死ぬっ!!死ぬっ!!死ぬぅぅぅぅっ!!!!」
「み…美夜っ!!この手、絶対離しちゃダメだからねっ!!」
「とっくに離しとるわっ!!掴んでられるかこの風圧の中でっ!!生まれて始めてこの手錠の存在意義を知ったわっ!!」
豪速で空を駆る宇佐川さんにしがみつく私の腕に手錠で繋がった美夜の体重がのしかかる。腕が肩から引きちぎれそうっ!!
--私達浅野詩音、美夜姉妹は校内保守警備同好会として突然攫われた橋本圭介君奪還の為目的を同じくする宇佐川結愛さんと共に彼の元へ向かう。
けどその移動方法はジャンプして空を飛ぶ宇佐川さんにしがみつくという新感覚なものだった……
この人……空を蹴って加速してるっ!!この人六式使いだっ!!
「なんで着いてきたんだよ!!邪魔っ!!」
「なんでって……私達は校内保守警備同好会ですっ!!」
息もできない暴風の中で己の信念を叫ぶもイマイチ伝わらないのか「は?」みたいな顔された。
「ね……姉さん……眠くなってきた……」
「美夜!?美夜ーーっ!!死ぬなーっ!!」
これ、どこに向かってるんだろ…たどり着く前に死なない?
「…近いな」
「え!?」「なんなんだっ!!なんなんだっ!!なんで空飛んでんだっ!!お前なんなん!?」
美夜……なんで空飛ぶのとか生身で竜巻起こしたり火を吹いたり胡座のまま走ったりする人が当たり前のこの街であまりにも今更な質問じゃない?
「あの山だ」
音速で空を走る私達の目前に大きな山が…あれが目的地?あそこに橋本君が……?
--チュドーーーンッ!!
……なんて思ってたら地面に激突してました。
まさかの墜落!?美夜!美夜は無事!?
「…………」
「み、美夜ーーーっ!!」
美夜は土に埋まってた。この世界では地面に埋まる時はとりあえず犬神家スタイルが基本。基本に忠実なその様は美夜の根は真面目なところを実に顕著に表している。
言うてる場合か。
巨大なクレーターの中央で無様に転がる私達とは対称的に堂々と立つ宇佐川さん。さながらドラゴンボールの各章のラスボス。この感じはブーというよりセルです。
空の上から見えた山はただの山に見えたけど……嘘です早すぎて山があることしか認識できませんでした。
とにかく、降り立った私達は明らかに人工物の壁に囲まれた一角に到着してたみたい。
辺りはさながら城壁のような感じの壁に囲まれてて、目の前には大きな門が……
「なにごとでございますかっ!?」「今の揺れ……地震でございますかっ!?」「隕石かもしれませんでございますっ!!」
門がバタバタ開かれてそこから雪崩のように和服を着た人達が壁の内側に流れ込んできた。
……ここはどこ?ここに橋本君が?
なんて思いながら美夜を抜く努力をする。でもなかなか抜けない。大きなかぶより抜けない。
「なっ…なんでございますかっ!!あなた達はっ!!」「このクレーター……あなた方の仕業でございますかっ!?」
警戒を顕にする人達。まぁ当然。
いきなり争い事はまずい。まず橋本君が本当にここに居るのかどうかを確かめる必要がある。
私は彼らに目的を告げる為生徒手帳を掲げる。そう、校内保守警備同好会にのみ持つことを許された特別な生徒手帳。
「校内保守警備同好会ですっ!!校則第八条によりいかなる場合でも協力してもら--」
--ボンッ!!
……お決まりの台詞を言い終わる前になんか…みんな吹き飛んだ。
星になる彼らを見送っていたら禍々しいオーラを纏った宇佐川さんがゆらゆらと歩を進める。
待ってほしい。美夜が抜けない。
「待ってください宇佐川さんっ!私と一緒に……校内保守警備同好会の権限がないと不法侵入……もうっ!!」
いくら恋人の為でもこれではただの不審者。なんの為に私達が着いてきたのか。
勝手に入っていく宇佐川さんを止める術はなく私は仕方なく手錠の鍵を外す。
「ごめん美夜…少し待っててっ!!」
「ふごっ!?へふぇふはへんふぁ!!ふぁふへろ!!(はっ!?てめぇふざけんな!!助けろ!!)」
「宇佐川さんっ!!待って!!」
「ふぇふぇぇふぁふぁへ!!(てめぇが待て!!)」
--ウーーーッ!!ウーーーッ!!
『て、敵襲ーっ!!敵襲ーっ!!』
大仰なサイレンと厳戒態勢を告げるアナウンスの割に誰も出てこない。
門をくぐった先は目を見張るようなお屋敷。その中を宇佐川さんは迷うことなく堂々とした足取りで進んでいく。
宇佐川さんは橋本君の電波を受信してるらしいから、こんな広いお屋敷でも迷うことがないんだ。
「……近い」
「えっ!?本当ですか!?」
どうやら近いらしい。一応消火器を構えて犯人からの反撃に備えるけど、目の前でどんどん恐ろしいオーラを増幅させていく宇佐川さんを見てたら消火器構えてるのバカバカしくなって下ろした。
そして近いと告げた宇佐川さんがある一室の障子の前で立ち止まった。
その室内は薄暗くて、なんかピンクの照明が照らしてるのが色味で分かる。そして部屋の中には重なり合うようなふたつのシルエットが……
宇佐川さんが容赦なくその障子をぶち破った。すごい蹴りだった。
「っ!?」「わひぃぃっ!?」
……信じられない光景。いや、信じたくない光景。
いやらしいピンクの照明が薄ら照らす和室の中には布団が一枚敷かれているのみ。
そしてその上に仰向けに寝かされた少年は今回の目的のその人で間違いない。
問題なのはその上にまたがる半裸の女の子です。
この人は知ってる。我が校の生徒は全て頭に入れてある。あの子は1年生の妻百合花蓮さん……
何故かお互い半裸の2人が布団の上で体を密着させていた。誘拐された、助けに来た男の子が美少女となんか……不純!!
「な……なにごとでございますかっ!?」
「う……うわぁぁぁんっ!!結愛さぁぁんっ!!結愛さん助けてっ!!僕の純潔が……ひっ!!」
……その時の宇佐川さんの形相はとても言葉にできません。なんかもう……凄かった。
「いや……違うんだよ?結愛さん。これはね?無理矢理なの。合意してないの。これ!レイプ!!そう!!レイプ!!被害者僕ね!?ミーねっ!?」
「…………遺言はそれだけか?」
「「ひぃぃぃぃぃぃっ!?!?」」
「ふっ……不純異性交友は禁止ですっ!!」
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「君、はっきりしなさい。娘との結婚が不服なのか?そうじゃないのか?」
ろくに説明もされぬまま進む僕と妻百合さんとの婚姻。僕の意志をフルシカトする妻百合家に異を唱える僕にヤクザ顔負けの圧をかけてくるのは家元さん。
なんか後ろの襖が開いてぞろぞろと怖そうなおじさんが入ってきた。みんな鬼の形相で僕の背中を刺すような視線で見てくる。
「いや」なんて言ってみろよ?っていう圧を感じる。
「母親の私が言うのもおかしいけれど…花蓮はよくできた子よ?」
終始優しげなお母さんの笑顔にも心做しか有無を言わせぬ殺気を感じる。
「気は利くし礼儀正しいし器量もいいし。あなた、このチャンスを逃してこれ以上の娘さんと結婚できるの?」
「いや…だからカノジョ居……」
「妻百合の家元になれるんだぞ?栄誉あることだからな?」
「いやだからアイドルに……」
「つまり姉上をフるってことでございますか?」
なんか後ろで金属音がカチャカチャ鳴ってる!?
「…圭介さん」
「つーちん!!つちーん!!君から言っておくれよ!!僕にはカノジョと約束したアイドルの道が--」
「神事の舞を継承できるのはただ1人…その1人が妻百合を継ぐ運命……」
「君それしか言わないなっ!!」
「不肖花蓮、安産型とよく言われますでございます」
「知らないよっ!!」
僕は頑張った。
うん、とってもよく頑張った。どちらかと言うと周りに流されやすい質の僕だけど僕にも譲れないものがある。
でもそれも首筋に冷たい感触を当てられて折れた。もうポッキリ折れた。
「生きて妻百合を継ぐのか断ってここで死ぬのかどっちだね?圭介君」
あぁもうとうとう言っちゃった。
「…その沈黙は受けるということでいいんだね?圭介君」
命には替えられないけれど、ここでうんって言ったら負けな気がする。いや、もう負けているのか?
「よろしい」
「まぁ!おめでたいわっ!!赤飯を炊かなきゃ!!」
「鯛の尾頭付きもお願いします母上!!」
………………
「圭介さん、よろしくお願い致します」
助けて。
「では早速、次の次の妻百合の家元をお作りしましょう。圭介さん」
……?
!?
「妻百合の修行は過酷かつ時間がかかる。今のうちから世継ぎを残しておかなければ間に合わないからな」
「いやいやお父さん!!僕らまだ学生ですけど!?」
お父さんとか言っちゃった。
「では圭介さん、赤ちゃんお作り致しましょう」
--橋本圭介、モテ期到来。
強制的に風呂に入れられて寝室に放り込まれた僕は初めてラブホテルにやって来て相手のシャワーを待っている童貞の気分。
高校入学まで女子から存在すら認知されていなかったこの橋本君がカノジョとオトナになった上に違う女の子と……?
……いいのか?
どう考えても良くない。
そもそも僕はまだ「じゃあ家元になります。娘さんいただきます」なんて言ってない。
帰ろう。逃げるんだ。つーちんには悪いけど僕には……
「--お待たせ致しました」
スっと控えめに障子が開いた先に、逆光で透けそうな程薄い着物を一枚身にまとったつーちんが立っていた。
ピンクの照明に照らされた顔色はとりあえず赤くなってるのだけは分かった。
お風呂にでも入ったんだろう。着物から覗く肌は火照っていて恥ずかしそうに視線を逸らした姿に……
僕も勃っていた。
……………………とりあえず、ちゃんと話し合わないといけないからもう少し居ることにしようかな?
つーちんが遠慮がちに僕の座る布団の上に座る。
「…つ、妻百合さん……」
「圭介さん。私、お勉強して参りました。ので、全て私にお任せ下さいませ」
お任せしていいのか?
お任せしてみるか!?
つーちんが僕の肩に手を置いて体重を乗せてくる。押し倒された僕の上につーちんが馬乗りになったっ!!
いいのか!?橋本圭介っ!!
いいんだよな!?
「……圭介さん。妻百合の未来の為に…共に参りましょう……」
参りますっ!!
「--殺すぞ?」
こうなった経緯を説明したら鼻の頭がくっつくくらいの距離から結愛さんが呟いた。
場所は僕の結婚が決まった(勝手に)あの部屋。そこには家元やお母さん、つーちん他妻百合の偉そうな人が勢揃いしていた。
僕とつーちんの蜜月を邪魔…いや助けてくれた結愛さんと校内保守警備同好会の浅野さんと共に僕らは再びここに集まった。
「説明を聞いてもらったから分かると思うけど僕は被害者だからね?僕はね?一言も同意してないからね?ね?結愛さん?」
「………………殺すぞ?」
あ、ダメだ死んだ。
「つまり、橋本君をこの家の跡継ぎにする為に無理矢理連れ去って既成事実を作ろうとした。そういうことでいいんですね?」
「君達は一体何者なんだね?」
「校内保守警備同好会です」
毅然とした態度でこの怖い人達に向かい合う浅野さん…この人は関わってからイメージが大幅に変わった人筆頭。学年首席でこの行動力……半端じゃない。
「これはれっきとした犯罪行為ですよ?」
信じられないことだが、我が校の生徒がド正論を言っている。
「これは妻百合家の問題だ」
「黙れ」
ここでようやく僕から視線を外した結愛さんが家元さん達に凍てつく眼光を向けている。あまりの冷たさに隣のお母さんが凍りついた。
「コイツは私の男だ。勝手にテメーの娘と引っつけようとするんじゃねー。舐めてんのか?」
氷像になったお母さんにびっくり仰天しながらも家元さんはあの魔人宇佐川に対して1歩も退かない構えだ。
「彼は妻百合流の家元を継承する資格を持った。その時点で彼の進む道は決まったんだ。君も何者かは知らないが、愛する彼のゆく道を応援してあげるのが真の愛だとは思わんかね?」
「誰に物言ってんだ殺すぞ?」
「貴様ァっ!!家元様に向かって……っ!!」
後ろに控えてた怖い人達が凍りついた。部屋の温度がマイナス10度くらいになる。
寒いっ!!
「ひっ……」
「おいオッサン、お前人の男に手ェ出しといてタダで済むと思ってんのか?」
「ストップっ!!宇佐川さんっ!!僕力沙汰はいけませんっ!!ここは話し合うべきですっ!!妻百合花蓮さん!」
「はいでございます」
今にも噛みつきそうな結愛さんを何とか制した浅野さんがつーちんと向かい合う。
「彼が家元になるということはあなたと結婚すると言うことなのですね?」
「はいでございます」
「あなたはそれでいいんですか?家が娘の婚姻を勝手に決めるなんて時代遅れです」
「しかしこれは妻百合のしきたり……私も妻百合に生きるものとしての責任が……」
「あなたの意志を聞いています」
真っ直ぐな浅野さんの言葉と目につーちん、一瞬僕の方をちらりと見てから気まずそうに下を向いて……
「……嫌でございます」
ガーーーンっ!!
「……何ショック受けてんだ殺すぞ?」
「受けてない受けてない受けてない受けてない受けてない受けてない受けてない受けてない!」
「圭介さんの事は先輩として敬愛しておりますが……私のタイプはダニエル・クレイグ様のようなお方でございます」
渋いな……
そんな娘の本心を受けて家元さんも声を荒らげる。
「私だって本当はこんな男に娘はやりたくないっ!!」
「こんな男!?」
「しかし……これが妻百合の掟。我々は神事の舞を継承していかなければならないんだ」
「他のやつでいいじゃん」
「そんな軽々しく大勢に継承できる秘伝では無いっ!!」
「動画配信してたくせに」
結愛さんの怒りは今だ天井知らずに上昇中。もはやそのツッコミはナイフのような鋭さを帯びていた。
「我々は妻百合の秘伝を途絶えさせる訳にはいかないんだっ!!」
「なんで?」
「神事の舞は妻百合が唯一受け継いできた陰陽術。これは重要な封印の儀に必要な……」
「いや、あの狐もう天に召されたから、いらねーじゃん」
結愛さんからの激しいツッコミ。家元にダイレクトアタック!!
固まる家元さんはつーちんの方をチラリと見る。つーちんもまた頷く。
「もう出てこねーからアイツ。ずっと天でマッサージしてっから」
「……」
家元さんは固まっていた。
いやそれでいいのか家元さん。連綿と受け継いできた秘伝じゃないのか?
「とりあえず落とし前だな?人の男に手ェ出した……」
「つまり圭介君。君は娘にその気がないにも関わらずたらしこめて淫行に及ぼうとしたと?」
あれ!?
「いやいやいや。ヤらせようとしたのそっちですよね!?」
「……私、危うく穢されるところでございました」
「つーちん!?」
なんか勝手なこと言い出した!!助けて結愛さん!!
「………………」
「結愛さん!?」
「殺すぞ?」
今度は僕に方々からの矛先が向かいかけ、それを止めてくれたのは「まぁまぁ」と割って入った浅野さんだった。
「とりあえずです。橋本君も花蓮さんも乗り気ではないようですので、この話はなかったことにしましょう」
「なるわけねぇだろ浅野。コイツら私の男に唾つけようとしたんだぞ?」
「いつまでもヤクザみたいなこと言わないでください」
「ヤクザ言うなっ!!ヤクザは嫌いだっ!!」
「橋本君、橋本君がこれ以上話を大きくする気がないならこれで解決ということにしませんか?」
「もう帰りたいです」
僕にはアイドル活動が待ってるんだっ!!
僕の意志を尊重しおそらくこの場で最も常識を持っていて穏便な浅野さんが手を叩き「これでおしまいっ!!」と橋本圭介誘拐事件の幕引きを宣言した。
帰れる……これで帰れる。
明日からつーちんとどんな顔して会えばいいのか分からないけどとりあえず帰れる。
そしていざっ!!アイドル活動へ--
--むんずっ!
「え?」
「なにが「え?」だ。おい圭介」
全てが終わったはずだった。
のに、僕の髪の毛をひん掴む結愛さんは今だ怒髪天を衝く勢いでキレ散らかしていた。
「テメー私というモンがありながら何他の女と寝ようとしてんだ。そっちの落とし前はどうつけるんだ?あ?」
「神事の舞が不要ならば君なんぞに家元の地位を渡すわけにはいかない。圭介君、よくもうちの娘をたぶらかしてくれたな?」
え?え?
「殺すぞ?」
「待ってくれ結愛さんっ!!話聞いてた!?全て理解した上でこの話し合いの席に着いたんじゃ--」
「…………とりあえず、チ〇コ出せこの浮気猿」
「娘をたぶらかした罪は償ってもらう」
………………?????
!?!?!?!!!?
「……ねぇ、こんなオブジェ庭にあったかしらでございます」「なにこれ……地面から人の足が生えてございますよ?」




