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娘と結婚してもらう

お前なんなん?

本日をもちまして1周年です!!


ご愛読してくださった皆様、ありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願い致します


本日は3話投稿させて頂きますので引き続きお楽しみください

 --ピンポーン


 体育祭が終わった月曜日。振替休日のその日に僕の家のインターホンが鳴る。それは僕の運命を決めるチャイム。


 週刊、人間国宝佐渡村清吉を作るの今週号を開封していた僕は早朝の来客に思わず舌打ちを零しつつ玄関に向かう…


「圭介、お客さんだ」

「分かってるよ。起きてるなら兄さんが出てよ」


寝坊助兄貴に悪態を吐きつつ玄関へ……

 僕が1階に降りてきた時にはもうお母さんが玄関先で来客の対応をしていた。

 玄関前でお母さんと向かい合うのはグラサンをつけたダンディーなおじ様。当然知らない人。でもどこかで会ったような会わなかったような気が……


 僕の足音にお母さんが戸惑い気味に振り返り告げた。


「あ、圭介、アンタにお客様よ」


 ……僕に?


 お母さんの間から玄関に入ってくるその人は強面を恭しく下げてから名刺を差し出してきた。


「はじめまして橋本圭介さん。私、こういう者です」


 --ヤッテ・ランネー・プロダクション所属

 折月早田照おれがそだてる


「私、芸能プロ、ヤッテ・ランネー・プロダクションのマネージャーをさせていただいております。折月と申します」

「……え?ヤッテ・ランネー・プロダクション?」


 ヤッテ・ランネー・プロダクションとはあの本気坂48やエル☆サレムをプロデュースしている大手芸能プロダクションである。

 僕が毎回オーディションに向かっているあそこである。


 そしてこの人。たしか城ヶ崎麗子さんのプロデューサーだ。以前病院で会った。


 また城ヶ崎さんの差し金だろうか?しかし今日はあの高笑いが聞こえない。

 大手芸能プロのプロデューサーが僕なんかに一体なんの用だというんだろうか…?


「橋本圭介さん、今日はスカウトにあがりました」


 ……?

 ス、スカウト?

 誰をですか?


「橋本圭介さん、あなたをこの折月にプロデュースさせて頂きたい!!」


 そう言うや否や折月プロデューサーが玄関に手をついて勢いよく土下座をかます。お母さんと共に面食らう僕の前で彼は燃え上がる情熱を言葉と共に吐き出して告げる。あまりの情熱の熱量に玄関に置いてあるお父さんの革靴が燃えた。


「あなたのダンスを拝見致しました!!」

「どこで!?」

「あの時私は確信したのです……城ヶ崎の言っていたことに間違いはなかったとっ!!あなたこそ!このアイドル業界で頂点を捕る器っ!!是非っ!!私と来て頂きたいっ!!」


 ………………来て頂きたいって、今?


 え?

 待ってそれって……


 僕、アイドルにスカウトされている?


 ………………

 ……………………………………


「みょーーーーんっ!?!?!?」


 あんまり唐突かつ非現実的な提案に思わず目ん玉がボロって零れ落ちていた。


 後で洗ってはめておいた。


 *******************


「小比類巻君、僕、とうとうやったよ」

『黙れ。くだらねぇ電話だったらぶち殺すぞ!!俺は今イモガイのせいで死にそうだっ!!はぁ……はぁ……』

「どうしたんだい?今どこに居るんだい?ちょっと来てもらっていい?」

『来れるわけねぇだろ病院だっ!!今俺の中で毒素と免疫が死闘を繰り広げてんだよっ!!生きるか死ぬかなんだよっ!!』

「……小比類巻君、僕、アイドルになるよ」

『は?』

「とうとう僕の実力が認められたんだよ」

『お前の何がどう認められたってんだ。殺すぞ?』

「スカウトされた」

『寝言ほざいてんじゃねー。いいからフライドポテト持って見舞いに来い。俺は死にそうだ』

「ごめん……一旗あげたら、報告に来ます」

『舐めてんのかお前一体なんの電話--』


 小比類巻君はよく分からないけど大変そうだ。

 結愛に連絡したら『寝ぼけてんのか?』って一蹴されてしまった。この一大事にみんな何考えてるんだろうか。


 今僕はキャリーケースに荷物を詰めて、東京に向かう準備をしている。

 僕のアイドル業界での第一歩がすぐそこに迫ってるんだ。


「……圭介アンタ、本気にしてるの?あれは……あれよ?きっと新興宗教の勧誘よ?アンタ御神体かなんかにされんのよ?四肢もがれて水晶体に閉じ込められて世界の安定のための楔にされるのよ?」

「お母さん、僕がなるのは霊王じゃなくてトップアイドルだよ。学校にはしばらくお休みするって言っといて」

「バカ言ってんじゃないよ」

「待たせてるから……もう行かなきゃ」


 手早く荷造りを済ませた僕はキャリーケースを手に部屋を出ようとする。今だに現実を受け入れられないお母さんが「本当に目を覚ましなさい」と止めようとする。


 止めないでお母さん……これは僕の目指した道なんだ。


 お母さんを押しのけて部屋を出ようとした。

 --その時っ!!


 バリンッ!!


 突然僕の部屋の窓が叩き割られ、空から黒ずくめの男達が侵入してくる。


「えっ!?」「きゃあああっ!?なにっ!?」


 以前殺し屋にも割られた僕の部屋の窓…なんでいちいち2階の部屋から入ってくるんですか?


「橋本圭介様でございますね?」

「なななな、なにあなた達はっ!?」

「お連れしろ」


 こちらの質問にも答えず男達が僕に掴みかかってくるっ!!


 こ、こんな時はっ!!校内保守警備同好会に直接繋がる緊急連絡用のブザーをっ!!


 --ビービービーッ!!


「むぐっ!?むぐぐっ!!」

「本家までお連れしろ」「丁重にな」


 抵抗する間もなく僕はあっという間にハンカチを口に当てられ何かを嗅がされる。薬品の臭いと共に襲い来る睡魔は抗い難い引力で僕の意識を引き連れていく……


「きゃああああああっ!!圭介ぇぇっ!?」


 *******************


 ……ここは一体?


 目が覚めた僕は畳の上に敷かれた布団の上に横たわっていた。派手さはないながら高級感漂う和室の内装は寒い日に暖かい緑茶を飲んだ時みたいなほっとする感覚を与えてくれる……


 んで?ここどこ?


 気がついたら和服に着替えさせられていた訳だけど……


 今まで何度か攫われたことはあったけどこんな丁重な扱いを受けたのは初めてだ。乱暴な連れ去り方に反して誘拐犯からの敵意は感じられなかった。


 ……で?どこ?ここ。


 そんなこと言ってる場合じゃない!僕のプリンスストーリーがっ!!

 僕は掛布団を跳ね飛ばして飛び起きた。部屋から飛び出したら品のいい日本庭園が飛び込んできた。


 周りは山!


 ……ここどこ!?


「--お目覚めですか。橋本様」


 呆然とする僕の横にすっと現れたのは薄ピンクの和服を着た中居さんみたいな女性。床に正座してお行儀よく頭を下げてくる。

 間違いなく僕は誘拐されたんだけど、なにやらおかしいぞ?


「……えっと?」

「早速ですが家元がお呼びでございます。こちらへお越しくださいませ」


 ……家元?



 --美人さんに連れられて迷路みたいな広ーーい家の中を歩かされ15分。

 ……いや、広すぎ。


 説明もされず訳も分からず連れてこられた一室はなんも無いのに無駄ーに広い和室。

 そしてその中に何人かの人達が待ち構えていた。


 最奥に和服を着た怖そうなおじさんと優しそうなおばさん。

 その傍に控えているのは……


「つ、妻百合さんっ!?」


 そこにはお上品な着物を着込んだ我が同士、妻百合さんが……っ!

 なんと誘拐犯は妻百合さんだった!!その隣には九尾の狐の時一緒に居た顎の長い人も居た。


「…橋本先輩、おはようございますでこざいます」

「ど…どういうことなんだいこれは?え?え?」

「ご紹介させて頂きます」

「いや待っておくれよ。ここどこ?なにこれ?」

「こちら私のお父様、妻百合流家元でございます」

「花蓮の父です」

「そしてお隣が母でございます」

「母です」


 ??????????

 なにこれ?どゆこと?


 とりあえず座れと言うことで座らされる。僕が腰を下ろすと上座に座る家元さんが居住まいを正して本題に切り込む。


「橋本圭介さん。こんにちは、初めまして。改めまして、妻百合流家元です」

「あ、どうも……」

「いつも娘がお世話になっております」

「あ、はい……」

「早速だが橋本君、結婚式はいつがいい?」


 は?


「方々の方にご連絡しなければなりませんからね、お父さん」「ああ、早い方がいいな。入籍は今日にでも……」

「ちょっと待ってくださいよ」


 ちょっと話が分からない。僕の高性能脳内チップがフリーズを起こしている。何が起きているのかを確認しなければならない。


 混乱する僕の前に出てきたのはつーちんだ。


「橋本先輩、橋本先輩には我が妻百合流次期家元になって頂くことになっております」


 ?


「家元は代々妻百合の人間が務めることになっておりますので、橋本先輩には妻百合の人間になって頂くことになっております」


 ??


「なので、橋本先輩には私、妻百合花蓮と結婚して頂くことになっております」



 ???


「不束者ですが、よろしくお願い致します」


 !?!?!?


 おかしいな。説明を受けたのになんのこっちゃ分からないぞ?

 疑問符が頭を埋めつくして目眩がしてきた。お目目がぐるぐるし始めた僕をほったらかしにして家元が話を進める。


「君は我が妻百合の家元にしか継承の許されない神事の舞を継承した」


 ……?シンジのまい?

 ………………

 ……っ!?

 神事の舞!?

 あれかっ!?九尾の狐の時のあれかっ!?


「継承したからには家元になってもらう」

「いやいや」

「本当は姉上が次期家元になるはずでございましたが、圭介兄様が継承なされましたので」

「いやいや、待ってくれ顎君」

「しきたりでございますので。よろしくお願い致します」

「待って!?つーちん待って!?!?」

「つきましては、妻百合の系譜を後世に繋げて参ります為に、少し気が早いでございますが、私と橋本先輩とで子供を作らなければなりません」


 待ってくれ。もう、全てが、分からない。


「あの……へ?いや僕にはお付き合いしている人が……」

「おいおい花蓮。これから旦那になる男だぞ?先輩呼びはおかしいだろ。なぁ?圭介君」

「うっかりしておりました、家元」

「待って?」

「はっはっはっ!」「お似合いよ花蓮」

「姉上、祝福致します。これで妻百合も安寧でございますね」

「てへっ☆でございます」

「僕の意見はっ!?」


 --突然強制的に妻百合流の後継者に指定された橋本少年!

 僕の運命や如何にっ!!!!

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