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部活動、同好会リレーファイナル

『只今より午後の部を開始します。部活動、同好会リレー出場選手は入場門まで集合してくだ「ただいまっ!マレーヒヨケザル借りて来たよっ!!」さい』

「ほら!借りてきたっ!!ねっ!」

『はい、5位です』


 ……ついにこの時が来てしまったか。


 殺気立ったリレー選手が入場門に並ぶ中で応援席からペンライトを振り回す我が姉の痴態を長めつつ、ふざけた入場曲と共に進軍する。


 同好会の代表なんだから出なきゃダメ--


 というふざけた理論から私浅野美夜、校内保守警備同好会を率いて入場。すっかり大所帯になったこの同好会、彼岸神楽を筆頭に猛者ばかりを選出した。

 これは勝った。


 入場、各部活、同好会の紹介も済み、その時が来ようとしている。


「うふっ♡またこの日がやって来たわね美夜ちゃん♡」

「げっ…剛田」


 ガチムキマッチョを引き連れた剛田がなぜか野球部に…あれ?お前夏の大会で引退したんじゃねーの?


「は?なんで?なぜ?何故?」

「あたし、野球部のオフィシャルアドバイザーに就任したのよ♡今年も戦えるわね♡莉央ちゃんはもう引退しちゃったらしいけど、悲しいわァ。同好会はいいわよねぇ♡引退とかないし♡」


 いやいやキモイ。なんだよオフィシャルアドバイザーって。


「つーちんつーちん。あたしもう死にそうなんだけど……あたしの肌にさ、砂粒が…なんかベタベタするっ!わぁぁぁっ!」

「香曽我部先輩、落ち着いてくださいませ。モビルスーツでの出場は認められませんでしたので我慢なさってくださいませ。肌がベタつきましても死にはしません」

「おい橋本、アンカーはお前だ。負けたら責任を取ってもらうからな?」

「え?」

「純金青眼の白龍を3枚没収だからな?」

「…え?」


「ぽけぽけぽけっ!ぺーーーっ!」

「あーー!うーーー!」

「たまちゃん…たまちゃん…はぁはぁ……フィルム食べていい?」

「……」


「……なぁ知ってるか?」

「なに?」

「…は?」

「は?」


「……宮島先輩、これなんなんですか?暑いし……なんか臭い」

「良き」

「阿久津君、それは俺じゃない。武だ」

「…良き」

「これは宇宙人の皮だ」

「いや…キモイです。脱いでいいですか?」

「阿久津君、これはオカルト同好会の正装だ。みんなユニフォームで来ているだろ?我々も負けてはいられない」

「皮かぶって走るとかババ・ソーヤーかよ」


 それにしても隣の野球部といいどいつもこいつもイカれた奴しかいないぞ。


「これでいいんですか?」

「うわぁびっくりした」


 女の子の背後からぬっと現れて声をかけてくるこの男は一体…?


「浅野先輩、あなたは思ったことはないのか?この学校はおかしい」

「いっつも思ってるよ」

「ここは学び舎として相応しくない。その根源を作っているのはこのふざけた同好会達だ」


 おい、もうすぐスタートの合図がかまされるって時に何長くなりそうな話してんだよ。


「……そういうあんたは?何者?」

「校内改革同好会の代表、巣子正義です」


 まーたイカれてそうな奴が現れた…


「この学校の存在意義がよく分からない同好会達の活動が学校の秩序を乱している…浅野先輩はそう思いませんか?」

「常々思ってるよ。お前も変な同好会作んな」

「その筆頭があなた達だ」


 頭がおかしい上にいきなり喧嘩吹っかけてきやがった。


「校内保守警備同好会…一体何をする同好会なんですか?」

「こいつは驚いた…そんな今更な疑問を抱く生徒がまだ居たのか。私以外に」

「なぜ生徒が校内を警備する必要が?」

「全くその通りだな」

「しかも校内や通学路をブラブラするだけの警備とは名ばかりのお散歩クラブだ」

「全くもってその通り」

「私はあなた達の存在を認めない」


 ……まぁ、お前が認めようが認めなかろうが学校が認めてるからそれでいいんだが……


「--あなた」


 とその時、またしても話をややこしくしに来たのが我が同好会のエース様だ。


「いきなりイチャモンをつけてなんですか?私達校内保守警備同好会が不必要な存在だとでも?」

「……彼岸神楽。校内保守警備という免罪符を盾に校内に刀など持ち込んで……それが生徒を取り締まる側のやっていい事か?」

「それは間違いないぞ神楽」

「……時には武力での制圧が必要な時があるんです」

「お前が武力制圧される側筆頭に見える」

「私もそう思う」


『それでは……』


「……ここでケリをつけましょうか?校内改革同好会」

「正義は負けない…つまりお前達は闇の炎に抱かれて死ぬ」


 やめろめんどくせぇ…


「分かったじゃあこうしようスノコジャンティー君」

「巣子正義です」

「正義は負けないんだな?つまりこのリレーに勝った方が正義ってことで負けた方は潔く闇の炎に抱かれて死ぬってことで」

「浅野代表、こんな奴に構う必要はありません。必要なら拘束します」

「……いいでしょう。正義がどちらにあるか……はっきりさせましょうか」

「うん」


 勝っても負けてもどっちでもいいや。


『位置について……』


「……吠え面かきなさい。素潜りジャンケン」

「巣子正義だ」


 校内保守警備同好会のスタート選手の隣に巣子正義が並びクラウチングスタートの構えを取る。

 彼はやる気だ……我が校の生徒達が恐れ慄くこの校内保守警備同好会を相手に…

 それもたった1人で……


 それが問題である。


『どんっ!!』


 スターターピストル(M9)の発砲音と共に各部活動、同好会一斉にスタート。そして次のバトンを受ける選出がスタートラインに並ぶ。

 …が、巣子正義の後ろには誰も居ない。


 ……校内改革同好会。1人しか居ない。


 リレーなのに完走するまで1人……勝ち目ゼロの戦いである。結果を見るのもアホくさくて私は彼の走りを見るのをやめた。


「うふっ♡楽しみね♡あたしに負けたら美夜ちゃん。デートしてちょうだいね?」


 どっちかっていうとコイツの方が問題である。

 なんか知らんけど私ら姉妹を気に入ってるらしいこのオカマには『同意』という概念がないらしい。過去何人の男がコイツに無理矢理掘られただろう……


「あたしもあなたもお互いに最後から2番目……もしあたしが勝ったらこれまで校内保守警備同好会に課せられたペナルティを帳消しにしてイイ男10人あたしに紹介してあなたもあたしとデートしてもらうわ♡」

「それ、私にメリットは?」

「あなたが勝ったらお姉さんとデートしてあげるわ♡」

「お前は懲罰房にぶち込んでやるよ」

「んもぉ!あたしこう見えて世界の救世主なんだけど?」


 意味が分からんオカマに構ってる間にリレーは加速していく。巣子正義は何周遅れかわからん。てか、視界から消えた。



「よっしゃ離した!つーちんっ!」

「小比類巻先輩……お任せくださいませっ!」


 ここまで驚異的なスピードでトップを走っていたのはなんと現代カルチャー研究同好会。続いて陸上部、野球部……武闘派揃いの校内保守警備同好会は4位。校内改革同好会はドンケツである。


 現代カルチャーの1年のちびっ子がスタートを切る。早くも次はアンカー。私らとは約半週くらい差がついてる。

 え?校内改革同好会?消えた。救急車来たから多分あれ。


「…先輩方から受け取ったこのバトン…はぁ……橋本先輩へ必ずトップのままお届け--」

「失礼する」


 健気な1年の横を圧倒的スピードで通過していくのは……チャリだった。


 …は?


「代表!」

「え?あぁ……うん」

「うふっ♡勝負よっ!」


 私と剛田がほぼ同時にスタート。が、別に奴の勝負に乗った覚えはないのでどーでもいい。

 それよりあのチャリなに?


「じ、自転車……!?反則ではございませんかっ!?どなたですか!?」

「わたしだ」


 大切なあの人を亡くした小次郎君じゃねーか。


「我が自転車道部はチャリまでがユニフォーム。つまり、これはユニフォームであって反則ではな--」


 --ドカァァンッ!!


 堂々トップに躍り出た小次郎君を後ろから吹っ飛ばしてトップに躍り出たのは……


「うふっ♡世界中のハニー達♡あたしを応援して♡」


 剛田だ。


 私?4位をキープだ。後ろから続々と汗くせぇ奴らが追い上げてくる。急かされるように脚を回転させるけど化け物オカマとの距離は遠い……まぁこれはどう足掻いてもトップは……


「みーーーよーーーっ!がーーんーーばーーれーーっ!!」

「浅野代表ーーっ!!」「美夜ちゃん頑張ってーーっ!!」「お前ならやれるーっ!!」「美夜ちゃぁぁぁぁんっ!!」


 …………


「あらぁ?思ったより頑張るわねぇ美夜ちゃん。お姉ちゃん達の声援に力、貰っちゃった?」

「うるせぇゴリラ。私はなぁ…こう見えて……負けず嫌いなんだよっ!!」


 現代カルチャーのちびを何とか抜いて剛田の後ろに着く。その後ろに着くのは陸上部だ。現代カルチャーのちびはなんか途中でコケてた。


 ……まぁ応援だけでこの距離の差を巻き返せる程現実は甘くないわけで……


「頼んだわよっ!」

「うすっ!!」


「はぁ…ぜぇ……っ!はぁっ!!」

「浅野代表」


 野球部のアンカーにバトンが渡って数秒遅れて、瀕死の私がアンカーへバトンを渡す。

 私の手からバトンを受け取るその女が有り得んくらいイケメンな面で私に言った。


「ありがとうございます、勝ちます」


 ここまで詰めた私に礼を言ってからアンカー、彼岸神楽が疾走する。肛門を負傷してる(らしい)とは思えない程のスピードはまさにスポーツカー。


 ……勝った。


「ひいっ!?ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」


 後ろから爆速で剣術女が走ってくるんだ。そりゃ野球部のアンカーも怖かろうな…

 そして野球部の坊主の頑張りも虚しく……


「抜いたーっ!!」「きゃーっ!」「神楽ちゃぁんっ!!」「ビバッ!!校内保守警備同好会っ!!」


 …………

 みんなで掴んだ勝利ってやつ?

 まぁ……これはこれで悪く--


「--良き」

「え?」


 ……勝利を信じて疑わなかった私達の期待を乗せた神楽がゴールテープ目前でグラウンドを滑る謎の灰色の肉ダルマに抜き去られた。

 マジでは?である。


『ゴーールッ!!1着はオカルト同好会!!』


 紙吹雪と共にゴールテープを切るのは胡座かいたまま砂の上を滑るグレイ型宇宙人…


 ………………

 は?

 なにあれ?走ってないし……てか、あれどうやって動いてんの?


「……またこのパターンかよ」


「……良き」



「はぁ!はぁっ!私はまだ……負けていないっ!!正義は必ず勝つっ!!」

「……いいから保健室に来たまえ。肺が破裂しているよ」

「莉子せんせー……正義は…」

「分かったから」

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