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飯テロリスト

 --大都会TUKYO。


「綴りが違うぞ。紬ちゃん」


 この度、東京での新生活が始まった私、潮田紬は浪人生。憧れの人、広瀬虎太郎と同じ大学に行くべく…そして同じ大学に入学してこの想いを伝えるべく、日々精進している。


 今隣で指摘してきたのが恋のキューピット、ミブチさん。正確には天界人口管理局日本支部少子化対策特別室室長、ミートソース・ブルーマウンテン・チーズカマボコさん。

 私と虎太郎は天界公認カップルの為、私達をひっつける為に下界に降りてきたらしい。


 今私は彼女の協力の下、虎太郎を射止める為に努力している。


 さて、ここは都内とある大学病院の受付。そう、以前死体洗いのアルバイトしたところ。つまり虎太郎と同じバイト先……の受付。

 あの後クビになってすぐまたミブチさんが手を回して私は舞い戻ってきた。私が望んだわけじゃないけど「ちょっと!なんで1日でクビになってんのよ!?」てこの人が勝手にキレて…


 本当は勉強で忙しいんだけど……


 で、「アンタ1人じゃ何も出来ないんだからっ!」ってミブチさんも同じ部署で働くことになった。


 てなわけで今はバイト中。


「……やっぱり大学合格してから告白するの?」

「はい。私決めました……ていうか、最初から決めてたことです……」

「つまり来年まで待つの?あのね…前も言ったけど、女なんて星の数ほど居るんだからね?悠長に構えてたら他の人に運命取られるよ?」

「え?なんのためにあなた来たんですか?」

「おい調子に乗るなよ?」

「くっつくかどうかは私次第ですよね?なら私の好きなようにやる…しっかりサポートしてください。お願いします」

「あのさ…言いたくないけど東京のスペル間違える子があの大学入れるとは思えんのよ」

「勉強教えて下さい」

「私は下界の学問には詳しくないから…」

「でも虎太郎と同じ大学通ってますよね?」

「いやあれは……裏技というか…あ、私が入学させてやったら告白する?」

「そんなことしたくない」

「……どこから出てくるんだい?そのプライドは…あ、そうだ。下界のどこかにこの世の全てが記された禁書、『万象アカシック記録レコード』が……」

「あれゲロまみれだからやだ」

「……え?実物を見たことが…?」


 さて、私達は1階玄関前の総合受付をしてるんだけど…さっきからぺちゃくちゃおしゃべりばかりで仕事をしないこの不真面目なバイトの前にその人はやって来た。


「ちょっと」

「はい、いらっしゃいませ」「いらっしゃいませは違うくない?紬ちゃん」

「俺は『飯テロリスト』だ」

「ご予約の患者様ですか?」

「俺は『飯テロリスト』だ」

「お名前をどうぞ」「紬ちゃん。聞いてやれ。テロリストだってよ」


 謎の中年男性(きっと精神科の患者さんに違いない)は重たそうなトランクから何かをおもむろに飛び出す。近くで会話を聞いていた人が「きゃーっ!!テロリストがーっ!!」って叫んでいる。

 目の前でトランクを開く自称テロリストに皆過剰に反応し軽いパニックに…

 東京とはこんなことで騒ぐのか?よくあることでは?


 テロリストが取り出したのはカレーだった。まだ温かい……


「ここで飯テロさせてもらう」

「……」「やべぇのが来たぞおい」


 *******************


 --飯テロリストとは。


「俺は革命の戦士だ」


 革命の戦士らしい。具体的には……


「俺はこの日本の抱える社会問題を解決し、1人でも多くの前途ある若者を救いたいんだ。君達のようなな……」


 美味しそうなカレーの匂いを漂わせ男は受付の前に座ってしまった。どうしたものか…

 とりあえず話を聞いてみよう。


「どういうことですか?」

「日本人は働きすぎている。君、今日は何時から働いている?」

「……え?朝の10時から……」

「早すぎる。労働など昼から…いや、今日は働こうかな。そんな気分の時だけで構わないんだ」

「おじさんはなんの仕事をしてるんですか?」

「革命戦士だ」

「……はぁ」「働け」


 じゃああなたも今働いてますよ?


「この日本で今何人の若者が過労、仕事のストレスで命を落としているか…俺は忍びない。日本人はもう働くべきじゃない。そこで俺は立ち上がった」


 テロリストは座ったままカレーを食べつつ言う。


「俺は日本中でこうして仕事の邪魔をして回っている。既にいくつかの地域では俺の思想に同意を示してくれている場所もある」

「……カレー食べてるだけでは?」

「邪魔している」

「まぁ……確かに邪魔ですが……」

「ふっ…いずれ分かるさ」


 得意げなおじさんは周りから白い目で見られながらも黙々とカレーを頬張り続ける。お腹空いてきた……

 そうしていると当たり前の事だけど奥から警備員が飛んできた。しかし絶体絶命のピンチを前におじさんは余裕を崩さない。


 あろうことかラーメンまでトランクから取り出した。少しこぼれてた。


「何してるのあんた!!」「こんな所で、迷惑だろ!!」

「君達、働くことに意味などない」

「何言ってるの!」「こっち来て!!」

「…その愚かな考えを捨て、俺と一緒に食わないか?」


 ずるずるっ。


「腹が減っただろう?」

「……」「……」


 なんとビールまで……

 なるほど……これが飯テロリスト……

 中々強烈な飯テロリストからの攻撃。院内に漂う食の誘惑の香り……私は思わず吸い寄せられそうになる中……


「美味いぞ?さぁ……」

「ふざけてんのか」「こっち来い」


 おじさんは2人の警備員にホールドされてそのまま引きずられていく……

 流石大都会の警備員。なんて強い心…まぁ、この程度のことで警備員が出てくるのもびっくりだけれど……


「ちょっ……えっ!?君達……いいのか!?そんな……待ちたまえ!!」

「……これが……大都会TUKYO」「だから違うってば」

「寿司か!?寿司がいいのか!?寿司だったか!?」

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