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僕のパパは石油王

 くそがっ!

 いや誰がウ〇コやねん。楠畑香菜やって言うとるやろ。


 修学旅行、6日目。楽しい修学旅行も残すところ2日となり、ウチの中に焦燥感が募る…


 昨夜バーベキューの時あのウ〇コタレ男小比類巻に一服盛る寸前まで行ったのに、すんでのところでなんかよー分からん奴らに邪魔された。

 あのビーチ、出るらしい。


 そんなわけで、小っ恥ずかしい心中を当人に鯨の胃の中で告白したウチやが…あんな冷静になったら寒気のするような告白をした以上何としてもこの修学旅行でケリをつけなあかん…と、下剤を握りしめながら気持ちを新たにバスに揺られる。


「皆様、まもなく世界最大の水族館、ギョーサンオ・ルデ水族館に到着致します」


 と、賑やかなバス内で初日に食虫植物に顔かじられとったガイドさんがお知らせ。それにつられてみんなバスの窓から前方に待ち受ける白い水族館を見た。


 今回ウチらが訪れるのは規模、飼育数共に世界最大のギョーサンオ・ルデ水族館。巷じゃ一生かけても遊び尽くせんいうて評判や。


「あれが…見てよ楠畑。でかいぞ…鯨居るかな鯨」

「はしゃぎ方小学生か、長篠。やめえやピアス引っ張んな耳ちぎれたらどないすんねん」

「海難法師は?」「レン、あなた昨日食べたじゃない」

「先生!!すみません!トイレ行きたいです!!」

「なんで目的地直前で言うんだ貴様ぁ!!」


 後ろでやかましい2人とトイレを我慢出来ん同級生を白い目で見つつウチもテンションが上がってく…


「楠畑さん、楠畑さん」

「なんやねん」


 そんな浮かれテンションに水を差す声が横から…見たら通路を挟んだ隣に座る日本人の標準的な顔のパーツ集めましたみたいな男子やった。確か吹奏楽部の向井むかい君。


「楠畑さん」

「なんやねんて」

「デートしないか?」


 …あ?


 *******************


「みなさーん!!右をご覧下さい!!」


 ガイドさんの引率の元、ウチらは列になってトンネルを潜る。ガラス製のトンネルの上をデカいエイやらマグロ?やらが悠々と泳いどる。

 それを見上げるウチを見つめる向井君…


「……」

「……」

「魚見ろや」

「いや、楠畑可愛いなって」


 なんやねんコイツ。ウチが可愛いのなんてみんな知っとるわ。ウチが幼稚園の頃親戚から何個飴さんもろたか知っとんのか?


「一通り回ったら自由に回っていいって。一緒に回ろ?」

「なんでやねん。ウチ忙しいねんけど?」

「えー、俺、楠畑と仲良くなりたいんだよね」


 …コイツ、正気か?

 自分で言うのも業腹やが、ウチは脱糞女やぞ?コイツ…ウチに気があるんか?


「ね、俺吹奏楽部なんだけどさ…」

「知っとる」

「え?嬉しいな」

「なんか腹立つなぁアンタ…お、見ろや。なんやあのデカい魚…」


 なんか馴れ馴れしいけん注意逸らして離れよ思ったら…


「クエだね」「スズキ目ハタ科の魚よ」


 後ろからアニマルマニアが勝手に解説しおった。


「へー、なんか深海魚みたいな顔してるね」

「…せやな。お、おい向井君、あれなんやろな?あれ、見てみほら、あれ--」

「タマカイだね」「スズキ目ハタ科の魚よ」

「へー、道理でクエと似てるね」


 …くそが。いや、誰がクソやねん。



「ねぇ、楠畑、部活とかしてる?」

「してへんよ」

「吹奏楽とか興味無い?」

「ないなぁ」

「俺、音楽得意でさー」

「せやろな。吹奏楽部やしな」

「…なんだよー。もう少し構ってくれよ。折角仲良くなりたいって言ってるんだし…俺なんかした?」

「魚見るのに必死やねん。ウチは」


 …コイツパーソナルスペース狭くて苦手や。


 トンネル抜けて大きな水槽とか深海魚のコーナーとかガイドさんに連れられて回る中、どんだけ塩対応してもコイツはめげずにウチに着いて回りよる…

 その執着ぶりは友達に声かけられてもウチのストーキングを辞めんレベルや…

 そのうち友達も空気読んで話しかけてこんことなった。挙句田畑長篠までなんか空気読んで離れて行きよった。こんな時だけ空気読むな。


「写真撮らね?」

「めんどいしええわ」

「なんだよー」


 てくてく子犬みたいに着いてくるコイツが段々哀れにすらなってきた。

 ウチに気があるのを隠しもせえへんコイツに何故か複雑な心境になってきた。どないしてしもたんやウチは…


 この下剤をあのウ〇コタレ男に盛らなアカンのやけど…少し構ってやるかと話を振ってやった。


「吹奏楽では何しよん?」

「おっ、気になる?今度コンクールあるから見に来てよ」

「せやな。暇やったらな。で?楽器なに?」

「俺、ボディパーカッション」

「それ楽器ちゃうやん」


「見ててよ」と人目も憚らず自慢のボディパーカッションを披露し始めた。どう収拾つけたらええの?


 向井君は手拍子や足踏みで軽やかにリズムを刻み、聞いた事あるよーなないよーな音楽を奏でよる。無駄に上手いのとドヤ顔が腹立つ。


「そこ、静かにしなさい。他のお客さんに迷惑だろ?」


 と、先生から怒られて肩をすくめて舌を出す。茶目っ気溢れる仕草に苦笑を返した。



「--では、ここからは自由行動です。12時には1階ロビーに集合すること、解散!!」


 一通り回り終わって、先生の合図と共に生徒達が散り散りに解放されてく。その勢いはマグロの群れさながらで一般客が吹き飛んどった。


「楠畑、一緒に回ろーぜ」


 そんなマグロの大軍にも怖気ずウチに寄ってくる向井君。こんだけ素っ気なくしとってもめげんとは…


「ウチ忙しいんやけどなぁ…」

「いーじゃん、別に誰かと約束がある訳じゃないんだろ?」

「……」


 こんな時に限って速水も田畑も長篠も絡んでこん。仕方ないから金魚の糞連れて館内を移動する。引き寄せられるように向かったんは深海魚コーナーや。ここにターゲットが居る気がしたから…


「ウチと回っても楽しくないよ?友達はええん?」

「ええ、ええ。ところで楠畑ってなんで関西弁なの?大阪出身?」

「埼玉や」

「え?」


 視線を巡らせたらどこ見てもうちの生徒が居るけど、肝心のあのウ〇コやろうだけは見当たらへん。てかここ暗くてよー見えん。

 約束しとって昨夜土壇場で抵抗を見せた男や…野生の勘でウチから逃げとるんか?


 くそ、このままやったらウチの恥ずかしい告白損やんけ。

 ウチはやっぱり…アイツの事が気になっとんのはこの恨みを晴らす為だけ…

 それだけなんや。それを証明する。

 誰がなんと言おうと……


「楠畑ってさ、2組の小比類巻と仲良いよな?」

「あ?良くないわ」

「でも、あいつの同好会のポスターに楠畑載ってたぞ?」


 …やっぱり嫌い、アイツ。


「あのポスター見てさ、楠畑可愛いなって思ってたんだ」

「よう本人を前に素面でそんなこと言えるよな?恥ずくない?」

「可愛いと思ってるもん。こうしてデートしてるのもさ、気になる人のこと知るためじゃん?一緒に遊ぶのが1番だよ」

「…………ウチの事好きなん?」


 ちょっとジトッと尋ねたら「どうかなぁ〜、まだ秘密」となんかムカつく返答が返ってきた。

 なんかチャラチャラしとるわ……こういうんは苦手や。


「でさ、君は小比類巻とは--」

「えーん!えーん!」


 向井君が突っ込んで来ようとしたその時、静かな館内に甲高い子供の泣き声が響いた。

 なんやろかと2人してそっち見たら、人混みの中で全身真っ白な服着た男の子がびえんびけん泣いとったんや。

 色黒で、白い着物みたいな服に頭に頭巾みたいの被っとる…


「なんだ?」

「迷子やろか?親居らんし」


 人混みの中で誰からも関心を向けられないその子にウチより先に向井君が駆け寄った。


「どうしたんだい?パパとママとはぐれたのかい?」


 目線を合わせてそう尋ねる向井君。たった今デートしとった女をほっぽり出して迷わず子供の方へ向かう後ろ姿をウチは眺めとった。


「انا تهت」

「え?」


 そして子供の返答に固まる向井君。

 聞きなれない言語が飛び出て硬直。しかし、直ぐにその顔を再び柔和に崩し安心させるように子供の手を取った。


「…なんて言った?」

「いやウチに訊くな。知るか」

「多分迷子だよな?俺、水族館の職員に預けてくるよ。楠畑、勝手に回ってて…」

「え?付き合うで?」

「いいよ。折角来たのに迷子の世話なんていやだろ?」


 そう笑う三枚目は子供と手を繋いで二三言葉を交わしてからウチを置いて歩きだす。

 …まぁ、お互い通じとらんけど。


 ……


「一緒に行くわ。デート誘っといて放ったらかしにされるのムカつくわ」

「…ごめんな?楠畑」

「ええよ。ついでに道中親探そか」


 ウチが男の子の反対の手を繋いだら途端に安心したんか嬉しそうに笑っとった。


「…なんか誤解しとったわあんたの事。普通に良い奴やな?」

「え?惚れた?」

「そういうとこ治したらモテるんちゃう?」


 道中この子と似た人探してみたけど見つからん。呼びかけてみても流石海外、日本語通じへんわ。

 この子もここら辺の人種やなさそうやし…異国の地ではぐれた子供とそれを探す異国人。

 親探しは諦めて迷子センターにでもぶち込も思っとったら……


「Stop!」


 後ろからやかましい怒号が飛んできた。

 けど英語分からへんからスルー。両手を繋がれた坊やがキャイキャイ楽しそうや。とても異国で迷子になった子供とは思えへん…


「Two people there, stop!!」

「え?俺らに言ってない?」

「英語分からんから知らん」

「لا أدري」


 そのままスルーしようとした…その時や。


 --パァンッ!!


 けたたましい破裂音と一緒になんかが割れる音がした。遅れて誰かの悲鳴。

 ザッと人が捌けるのが分かって流石のウチらもこれには振り向いた。

 その先では楽しい水族館が修羅場と化しとったんや。


「Don't move」


 ウチらの視線の先でウチらに向かって真っ直ぐ黒い筒を構える覆面被った2人組…

 奴らの手にしたモンと血走った目はウチに既視感を抱かせた。


 これは……あん時、銀行強盗に巻き込まれた時と同じ感じや。


 *******************


「小比類巻君、水族館と言えばなんだろう?とりあえずサメとイルカとダイオウホオズキイカ見とけば間違いないかな?」

「橋本、ダイオウホオズキイカ見れる水族館はそうないぞ?多分…アイツら深海から上がったらすぐ死ぬから」

「それがここには20年生きてるダイオウホオズキイカが居るんだって」


 海の悪霊から生還した小比類巻睦月、今年1番の衝撃走る。

 生きたダイオウホオズキイカが見れると言うのか!?


「どこだ…」

「おぉ…食いつくねぇ…深海魚コーナーだって」


 その時俺は相方を置いて深海魚コーナーに走っていた。途中で怪しい黒ずくめの男を見かけたがあんなのに構ってやるのは工藤新一くらいなので俺は無視する。


 目的の深海魚コーナーはエリア全体が薄暗く、一層暗い水槽内は四角い黒水晶みたいだ。そこに上から差し込む観賞用ライトに照らされたグロテスクな魚達は俺の興味を惹き付ける。


「小比類巻君、ダイオウホオズキイカ居たよ」

「どこだ!!そこか!!会いたかったぞダイオウホオズキ--…」


 --たった今亡くなられました。合唱


 ダイオウホオズキイカさんの水槽にはそんな張り紙がされていた。たった今亡くなられたらしい……

 それを証明するように、水槽の底で見たこともないくらいデカいイカさんがぐったり横たわって…


「くっ……そったれ…なんで…どうして…こんなっ!!」

「え?泣いてるの?大丈夫かい?」

「どうして…っ!!嘘だァァァっ!!」


 じいちゃんの葬式より涙が出る。俺はお前に会う為にこの島まで来たってのに…


「くっ…橋本……」

「……小比類巻君」

「知ってるか?こいつらマッコウクジラに深海でいじめられてんだぜ?鯨に食われる仲間だろ?俺達…」

「あぁうん…それでシンパシー感じちゃったんだ…」

「橋本…俺はな?元気だ「えーん!えーん!」った頃のコイツと…やかましいな!!誰だ!!人が感傷に浸ってる時に…っ!」


 俺の悲しみに被せるように響く泣き声に振り向くと遠くの人混みに1人泣く少年の姿…


「……?迷子か?偉そうな面しやがって。ああいう子供は原宿でパンケーキでも食べてオシャレに育てばいいんだ……」

「え?えぇ!?小比類巻君僕あの子知ってる!!」

「ブラジルのトングさんだろ?」

「違うよ。テレビで観た。アラブの石油王の息子さんだ」


 立ち上がれ小比類巻。ダイオウホオズキイカごときの死に涙している場合ではない。

 なぜなら金脈に繋がるVIPがここで泣いている。


「……橋本、その話本当だな?嘘だったら深海に沈めてアンコウの餌にしてそのアンコウを俺が食うぞ?」

「あ、はい…本当です」

「迷子だな?よし、迷子だ。落し物を届けると一割報酬貰えるらしいぞ。石油王の息子の一割って何億?」

「……小比類巻君、僕はもうツッコむのも疲れたよ」


 人混みをかき分け勇む俺が可愛い可愛い石油王ジュニアへと向かっていった…

 その時だ。

 奴が唐突に現れたのは…


 *******************


「Give the child over here!」


 拳銃向けた覆面がなんか喚いとる。騒然とする水族館内…明らかに的にされたウチと向井君はただ相手を刺激しないように硬直するしかない。

 ウチらに挟まれた坊やは我関せずって感じや。


「I'll shoot!!」

「何をしてるんですか!!校内保守警備同好--…」


 次の瞬間。

 ウチらの間を掠めて弾丸が飛ぶ。後ろから騒ぎを聞きつけやってきた手錠姉妹の真横の案内板に風穴が開通。


「ひぃ!?」

「姉さん!何に首を突っ込むなとか言わないから私を巻き込むな!!」


 助けに入ろうと伺っとった勇敢な野次馬達もその一発に完全にビビり散らかして撤退。ついでにやかましい姉妹も腰を抜かして撤退。

 群衆にぽっかり空いた穴の中央で立ち尽くすウチらの中で真っ先に動いたのが向井君やった。


「ひぃぃぃ!!」


 逃げた。

 いやまぁ…逃げるよな。

 それが銃を持った無頼漢相手に悪手か否かはさておき、奴の行動は間違いなく正常。

 むしろ異常なのはその場で坊やの前に出たウチやろ…


 産まれたての小鹿みたいに震える脚でも逃げ出さんかったんは、単純に動いたら撃たれる気がしたから。

 ぶっちゃけ逃げたい。ただ坊や1人残してトンズラこかないくらいにはウチにも正義の心があった。


「I'll kill you」

「何言うとんのか分からへんねん…日本語プリーズ?」


 悪手やった。そりゃ悪手じゃろう蟻んこ言う前に覆面が引き金にかけた指を絞った。

 ウチの顔面と直線で結ばれる銃口…


 あ、死ん--…


 --パァン!


「きゃあ!!」

「マジかよ…っ!!」


 野次馬達の騒然とする声…そして漫画とかでありがちな咄嗟に目を瞑ったウチ。しかし、ウチの意識が途切れることも激痛が走ることも無く…

 これまた漫画とかでよくある展開でウチが目を開けたら……


 うちの高校の制服の後ろ姿がウチの目の前にあった。

 その背中--見慣れた男の後ろ姿はウチと銃口との線をカットするように立ち塞がり、銃声の鳴った直後でも仁王立ちしとった。

 漫画やったら恋に落ちる3秒前や。

 しかし生憎と世の中そんな都合よく出来てへんもんで……


「ぎゃああああっ!!撃たれたぁ!!」


 その場で転げ回るその男は白馬の王子様やのうてウ〇コタレ男やった。


 それでも衝撃やけど。


「いやそりゃ撃たれるやろ飛び出したら!!は?何しとん!?」

「くそぉっ!!俺のキ〇タマが金属製じゃなかったら小比類巻家断絶だったぞ!!」

「どこにもろてんねん!!」


 再び騒然とする館内。

 飛び出てたスーパーマンは全然スーパーマンやのうて一発貰ったらあっさり倒れおった。が、それでもその場からは退かずグリン剥いた目で無頼漢達を睨みつける。


「……痛てぇなコラ。殺すぞ?」


 1度は倒れたウ〇コタレ男は内股で再び立ち上がる。ウチはどうしたらええんか分からんで立ち尽くしとった。


 ……コイツ、ウチを守って……?

 なんか前もこないな事あったな…なんでウチの行く先々に現れるんや気持ち悪。


「What a hell!?」

「get out of there!!」

「うるせー。コイツにどれだけの価値があるか分かってんのか?」


 …え?ウチってそない大袈裟に言われる程……


 と、無謀なウ〇コタレ男に対して奴らは非情にも再び引き金を絞る。

 たった今ウチに向かって容赦なく弾丸撃ち込んだ奴ら……当然それは脅しなんかやなく…


「アホっ!逃げ--」


「--おやめなさい」


 ウチの悲鳴に重なるように、突然その場にそぐわないねっとりした声が重々しく響いた。

 その場の全員の視線がそっちに向かったやろ。覆面達も例外やなかった。

 そして絶句。


「…Oh my God」


 そこにはよー分からん金色のオーラを纏った黒々した巨漢が佇んどったから。あれなんや?湯気?

 場に乱入してきたそいつもまたうちの生徒…

 野球部のエースにして我が校の男子が異口同音に恐れ慄く怪物--剛田剛。

 ゴリラより強いと噂のあのオカマが自分の真後ろに立っとるんや。そりゃ拳銃持っとっても怖…


「Fuck!!」


 またしても火ぃ噴いた銃口はオカマの腹筋にほぼ密着して放たれた。その事実が作り出す惨劇に誰もが目を覆おうとしたけど、その予想はあっさり裏切られる。


 離れた銃口からポロリと間抜けに落ちていく弾丸…無傷の腹筋……

 ヒトの腹筋てあない硬くなるん?ビスケット・オリバかよ。


「あなた達……アタシの未来のフィアンセの睾丸に--」


 そして今度は剛田の番やった。

 なにやら恐ろしい事を言いながら何故か金色に輝く拳を振り上げてそれを真っ直ぐ覆面の頭の上に振り下ろす。


「何してくれてるの?」


 雷でも落ちたんか思った。それくらいの衝撃と爆音。腹の底まで振動させるみたいな爆発の余波がウチらにまで届いて吹っ飛んだ。

 それはまさに天災やった。



「……あらぁ?やりすぎちゃったわね♡」


 爆心地でただ1人、更地になった辺りを見回してそうてへぺろ☆する奴にウチはただただ戦慄する他なかったわ。


 人間てあない強くなれるん……?

 え?てか人間?アレ……


「……っ!がはっ!!今ので……タマが潰れ…っ」

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