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大体グアムです

『当機はまもなく、プ・ロフェッショナル島、ハラーヘッ・タゾ空港に到着致します--』

「よし、全員降りる準備しろー」


 機内アナウンスに合わせて先生達が慌ただしく動き出す。寝てる生徒を叩き起したり、トイレから出てこない生徒を引きずり出したり、座席の下に引きこもった生徒を引っ張ったり…

 子供が行方不明になったり、テロリストが毒蛇に噛まれたりしたらしいけど、私達は無事目的のリゾート地に到着したみたいだ。


 --私は可愛い。

 この度世界の日比谷…国外初進出ということで、今頃プ・ロフェッショナル島は震えてるはず。きっと空港には大勢の見物人が集まって大変なことになってるんだろうなぁ……


 プ・ロフェッショナル島。

 今回世界の宝、日比谷真紀奈が訪れる幸運に恵まれた世界有数のリゾート地だとか。

 西太平洋に浮かぶ常夏の島……つまりグアムみたいな感じのところだと聞いている。


 ……いいね!いいね!この日比谷に相応しいね!


 流石に年中海水浴が楽しめるというだけあって目的地が目前の今、機内の温度は上がり私達は暑さに冬服のブレザーを脱ぎ出してた。夏服持ってきてて良かった……


 ……さて。

 心躍る修学旅行……私には大きな目的がある。

 今回私はむっちゃんこと、小比類巻睦月と同じ班を組んでいる。私は1度彼にフラているけれど、諦めるつもりは毛頭ないの……


 修学旅行という高校最大のイベント……南国の島で彼のハートを射止める……だけでは無い。


「今年は特別な日になる……」

「え?私に話しかけてた?今」


 隣の座席で窓の外へスマホを向けてた凪に向かって私は今回のプランを説明する。


「今日は2月の13日……月曜日」

「はい」

「明日は?」

「14日ですね。火曜日の……」

「修学旅行とバレンタインが被った!!」

「っ!」


 ふふ、気づいたね凪……このビックイベントが重なるこの機会を逃す手はないのよ。凪!!


「明日……班別行動の時にむっちゃんにチョコを渡すんだ♡」

「なるほど、で?チョコは?」

「現地調達」


 手作りしたかったけど常夏のリゾート地にチョコ持っていくのは……溶けるし飛行機乗るし……

 てことでそれは断念したんだけど、まぁそこはただチョコ渡してもつまらないだろうし……アレだ。私の唾でも入れようか……


「ひっ……ひひっ、ヒヒヒっ」

「…………」

「ほらそこ!早く準備しろ!!」


 このためにむっちゃんと同じ班になったのだ……

 さぁ……覚悟なさい?小比類巻よ。クソ女なんて忘却の彼方へ吹き飛ばしてあげる……


 *******************


 --プ・ロフェッショナル島、ハラーヘッ・タゾ空港。


「……知ってるか橋本……ここ、アメリカらしいぞ?」

「そうだね……アメリカ領だね」

「あれかな……まだ戦ってるアメリカ兵とかいるかな?ジャングルとかに……」

「米国版小野田寛郎さん?」


 --ビーーッ!!


「ん?」「ん?」

「ヘイ!ソコノ日本人サン、チョット待ッテ!」


 なんだ?金属探知機に引っかかったぞ?


「なんだ小比類巻……全く、全体の列を乱しおって……」

「いや先生、俺金属なんて……」


 --ピーピーッ


 俺の股間でセンサーが鳴っている。


「……ああ、タマタマか」

「ヨシ、行ッテイイゾ」

「すごいね小比類巻君、君のキ〇タマは金属探知機に引っかかるのかい?」

「……ああ、昔片方無くしてな。金属製のやつぶら下げてるんだ」

「えっ!?金属製のキ〇タマなんてあるのかい!?」

「ああ。純金だ」

「必要!?」

「は?左右のバランスが崩れるだろ」



 --さて、異様に暑い常夏の島へ降り立った俺達は空港で現地のガイドさんに出迎えられた。

 テレビとかでよくある、一人ひとりに花飾りをプレゼントする歓迎の印を受け取った。緑と赤のド派手な花だ。


「きゃあっ!動いてるこれ!」「やっ…やめろ……やめろっ!!ぎゃあああっ!」「うわぁっ!襲われるぞ!!」


 違う。よく見たらハエトリグサだった。

 なんとかハエトリグサを退け俺達はガイドさん達の誘導でバスへ……


「皆さん、ようこそ!プ・ロフェッショナル島へ!!本日皆さんの島内観光のガイドを努めさせていただきます、メリー・アイザワでございます!!」


 観光バスに乗り込んだ俺達のクラスに向かって黒人女性がマイクで元気よく自己紹介をしてくる。同じように首から下げたハエトリグサが耳をかじっている。


 さて、この修学旅行の日程は1週間。来週の月曜日に日本に帰国するスケジュールで進行する。

 まず初日は島内の観光ということで、団体行動だ。バスに乗ってプ・ロフェッショナル島を巡るそうな。


「皆さん!右側をご覧下さい!」


 アイザワの指し示す方角にキラキラ輝く紺碧の海とビーチが広がっている。途端にテンションの上がる車内。


「このプ・ロフェッショナル島、その中でもここ首都、ハラーヘッ・タゾは世界で最も美しい海とビーチを有しているのです」

「すげー」「世界一だって」「確かに綺麗だ……」「やだ……ハルヒコったら♡」「君じゃない……」

「世界一のビーチです。自称ですが」


 自称かい。


「さて、あちらのビーチの奥に見える岬は現地では恋人の聖地とされている『恋の岬』でございます。岬には海を望める展望台の他、教会もあり結婚式をこちらで挙げる日本人の方も沢山いらっしゃいます」

「恋人の聖地だってよ。小比類巻君」

「残念だったな橋本……カノジョと来たかったろうに……」

「明日にでも行ってみようね」

「……は?」


 え?怖……


「この恋の岬、昔結ばれなかった恋人2人が身投げをして、岬の岩肌に引っかかってそのまま同化してしまい、今なお死ぬ事も出来ず岩肌と化しながら添い遂げているというエピソードがあるんですよ」


 ……は?怖。


「さぁ皆さん!メインストリートが見えてまいりました!ここはこの島の経済の中心でございます!」


 カラッとした青空の下を走るバスの車窓から外を眺めれば、広い大通りに立ち並ぶ様々な店がそのオシャレな外装を俺達に見せてくれる。

 流石に世界屈指の観光地。聞いた事あるような有名ブランドとかレストランとかプロレスラー育成所とかが並んでる。


「さて皆様、当バスはこのメインストリートを抜けまして、これより世界遺産、『グットクンネー寺院』へ向かいます。グットクンネー寺院は高僧、沙羅没地しゃらぼっちが725年に……」


 これから徳の高い坊さんが作った世界遺産に行くんだと……

 その間道中、太平洋戦争の名残だという当時のままの戦場を遠巻きに見たりだとか、途中下車して先住民の文化博物館を覗いたりしながら世界遺産に向かう。


 ……それにしても。

 ほんとにただのリゾート地だった…うちの高校の修学旅行だと言うから、リゾート地とは名ばかりの無人島サバイバル生活みたいなのを強いられるのかと思った……


 ……ナイフとか緊急医療キットとか浄水器とか持ってきたのに……


 *******************


 俺達を乗せた観光バスが目的地に到着してそのタイヤを止める。

 順々に降りてくる生徒達の前に立ちはだかるのは真っ青な空に向かってそびえる純白の寺院……

 世界遺産と名乗るだけあってなかなか荘厳な佇まい。寺というよりは宮殿みたいな感じだ。


「皆様、こちらが世界遺産、グットクンネー寺院でございます」


 可愛い旗を手にしたガイドさんに続いてクラス別の列をなし俺達は寺院の中に入っていく。

 俺ら以外にもたくさんの観光客を吸い込んでいく寺院の中はなんか神秘的な雰囲気を漂わせていて自然と騒がしい生徒達も大人しくなる。


「こちらの寺院は羅教らっきょうの沙羅没地が建てた寺院になり、羅教信者にとっては聖地とされています。こちらをご覧下さい」


 しんとした寺内には巨大な仏像?が佇んでいた。なんか京都の寺に来た気分。

 ピカピカで金色の坐禅を組んだ仏さん。これが羅教の信仰対象だろうか……なんて神様だ?


「すごいね小比類巻君……写真撮っていいかな?」

「ええんちゃう?……寺院が世界遺産ってことはこの仏さんも世界遺産なのか?」

「もちろん。この寺院そのものが全て、ユネスコ世界遺産に登録されています」


 おぉ……流石にガイド。俺の素朴な疑問を拾い上げて解説してくれた。

 ……これ、全部金なのだろうか?金ピカだが……


「……世界遺産に来た人間国宝…まさに奇跡の巡り合わさせだね…Congratulation」

「あ、日比谷さん。元気?」

「元気♡」

「なぁ、あれ全部金かな?金だよな?だって金ピカだもんな?いくら位するんだろうな?」

「え?……えっと……多分むっちゃんが5回くらい大学に進学できるくらいじゃない?」

「日比谷さん……世界遺産だよ?多分一生遊んで暮らせるよ……」


 と、阿部もといポリゴンさんがツッコミを入れた。メリーさん曰く一生遊んで暮らしながら毎年天皇賞・秋に300万くらい突っ込めるくらいにはなるらしい。


「--御仏様の前で金の話など……不謹慎でございます」


 と、こいつをどうやって持ち帰ろうかと難儀していた俺達に流暢な日本語が飛んでくる。

 オレンジの布切れを纏った色黒ハゲ……つまり焦げたコーヒー豆みたいな男が裸足でこちらにやってきたでは無いか。


「皆様、本日寺院の案内をしてくださる明珍めいちん僧でございます」

「ようこそ……はるばる日本からよくぞおいでくださいまし--……ん?」


 人の良さそうな坊さん?は目尻にシワを寄せて俺達修学旅行生を歓迎……するのもほどほどにその細い双眼をカッと見開いた。


「……これは」

「?明珍さん?どうされました?」


 明らかに様子のおかしい坊さんが周囲を……いや俺達生徒の列をジロジロと睨め回す。


「……っ!ついにこの日比谷真紀奈の美貌が仏の信仰にも届いたか……っ!」

「流石日比谷さんだね!相変わらずのポジティブさと意味不明さだね!」


 流石に常に日比谷のそばにいない…チョミリオンさん、ツッコミのキレが他の追随を許さない。

 見込みのあるツッコミにほぅ……と感心していると……坊さんの鋭い視線が一点に向かった。


 --その先の男?と目が合った坊さんはツッッと一筋の雫の道を頬に垂らす。つまり、泣き出した。


「……え?え!?明珍さん!?」


 隣でドン引きのガイドさん。見守る俺達もドン引きである。

 その中で坊さんは確信にも似た感情を声に込めて呟いたのだ……


「……神よ」

「あらん♡」


 視線の先に居たのは一際目立つあの野球部のオカマ、剛田。

 知らなかったが羅教ではオカマは神様らしい。なんてこったい。


「…あなた、随分徳を積んだのね。アタシの正体に気づくなんて……うふっ♡」

「……まさか俗世で……神と出会えるとは……」

「……」「……」「……」「……」


 色黒オカマにその場で跪く坊さん。

 ガイドも俺らも観光客もみんなドン引きよ。気づいたら奥から他の僧侶も出てきてみんなその場で跪くじゃないか。

 マジでドン引きよ……


 これにはプロのガイドさんもどうしたらいいのか分からない。あたふたしながらも場の空気を変えようと必死である。

 しかしどうしろと?


「……あの」

「さて…寺院賭けて闘るかしら?うふ♡」


 いや世界遺産ですが?どうした急に?なんだこのオカマ。


「……寺院は、差し上げまする」


 差し上げんのかい。

 もう完全にこいつらだけの世界。置き去りもいいとこの俺ら修学旅行生…


 ……?あのオカマが寺院差し上げられたんなら、この金ピカもアイツの物……?

 ……え?じゃあアイツと結婚したら俺のもの?一生遊んで暮らしながら天皇賞・秋に毎年300万突っ込める生活が俺のもの?


「是非私めを……弟子にしていただきたい」

「いいわよ。ケツの穴差し出してくれたらね♡」

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