八極拳対北京原人
「ひっひっふーぅぅっ!よくも……お前みたいなブサ男が……僕らの麗子ちゃんをぉおっ!!」
「…………っ」
みんな、こんにちは、こんばんは。僕は橋本圭介。ついこの前修羅場を生き抜いた男です。
突然ですが僕は今死の淵に居ます……
理由はこの前の週刊誌に載せられた写真です……
--城ヶ崎麗子は本気坂48で活躍中のトップアイドル。
ひょんな事から彼女に目をかけられた僕は彼女からアイドルオーディションの話を持ってこられるくらいの仲になった。
……が、ある日非常識なファンに刺された城ヶ崎麗子のお見舞いに行った僕の姿が記者に激写され、あらぬ誤解を世間に招く羽目になった……
そのせいで人間辞めてるカノジョから殺されかけたんだけど……
城ヶ崎麗子の人気は今や天井知らず……
当然、ヤバいファンも居るわけで……
週刊誌の情報を鵜呑みにした過激なファン達から下校中、“また”襲われた僕は、ナイフを手にする小太りのドルオタを前に固まることしかできなくて……
「待ちなさいっ!!」
その時、同級生の黒髪ロングの印象的な美少女を先頭に僕の護衛がイカれた殺人鬼予備軍の前に立ちはだかる。
--校内保守警備同好会。
校内と生徒の治安を維持する為の同好会だ。
その先頭に立つのは……生徒会絡みで騒動を起こした、校内ではちょっとした有名人のあの浅野姉妹。
彼女らは臆することなく凶器を手にするドルオタの前に立ちはだかる。
「あなたっ!!アイドルを応援するのはいいけど!行き過ぎた感情に任せて他人を傷つけることに正義があると思ってるんですか!?」
「とっとと消えろ。仕事増やすな、ぶち殺すぞ?」
ヒーローみたいにかっこいい姉とヤクザ顔負けの妹。
「なんだお前ら……」といきがってみせるドルオタだけど、この手の人種は女子の免疫が皆無。
つまり、可愛い女の子を見た瞬間タジタジになってしまうのだ。
「貴様ァっ!!」
「ぶへっ!!」
豚のように肥えたドルオタはタジタジしてる間に同好会の男子に取り押さえられる。
そうして拘束されたドルオタはどこかへ連れていかれ、ほっと胸を撫で下ろす僕に振り返った浅野(姉)が心強い笑顔を向けた。
「安心して。私達がついてる限り、橋本君には傷ひとつつけさせないから!」
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さて、どうして僕にこんな警護体制が敷かれているかと言うと……
あれは結愛に殺されかけた翌日のことでした……
「おでの麗子に手ェ出しやがって……っ!」
「……は?」
ある日突然校内に刃物を持ったドルオタが侵入して来た。
もちろん、目的は僕。理由は週刊誌の情報を鵜呑みにしたから。
あの時は本気で焦った。
だってトイレに行こうと教室を出た僕は、殺意満々の中年男性に包丁向けられたんだから……
あ、これ死んだ。
叫びながら突っ込んでくる男にそう確信した。近くで女子の声が聞こえた。
「なんだてめぇは?」
「ぶげっ!?」
僕が今生きてるのは教室から飛び出した小比類巻君が華麗な足技でその男を校舎の外まで蹴っ飛ばしてくれたからだ。
その場は小比類巻君のおかげで無事に生き残ることが出来た…けど、僕はこの時確信した。
このままでは命が危ないと……
謎の不審者に狙われた僕はそのまま職員室で事情聴取。その時何故か同席したのが今僕の身の回りを警護している校内保守警備同好会だった。
正直場違い極まりないなぁ…なんて思いながらも僕は不審者が喚き散らしてた「おでの麗子」という発言から推測し事の発端となった週刊誌を交えて説明した。
「これはいけないっ!!」
学校の先生よりその話に過剰に反応したのは校内保守警備同好会の代表の柴又先輩だった。
先輩はその場で勢いよく土下座をキメまず僕に詫びる。
「校内と生徒の安全を守るのは俺達の役目…今回は怖い目に遭わせてしまって本当に申し訳ないっ!!」
異常な責任感と正義感にたじたじ。今この瞬間までその同好会の存在を認知してませんでしたとは言えなかった。
深々土下座した柴又先輩は頭を上げてから僕にとんでもない提案をする。
「橋本君…今回のようなことがあったのであれば用心するに越したことはないと思うんだ」
「え?用心…?」
「2度ある事は3度あると言う」
「まだ2回も襲われてません」
「我々校内保守警備同好会は君を守る義務がある」
何言ってんだろこの人…
今の今まで守られてきた自覚皆無の僕に柴又先輩は提案を押し売りした。
「これから事が収束するまで、我が同好会が君を警護する!!」
……は?
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--ミッション。橋本圭介の警護。(24時間)
この頭のイカれたミッションの指揮を任され…いや押し付けられたのは私、浅野美夜とこのミッションにやる気満々のとち狂った姉、浅野詩音だ。
いつものように気だるい同好会に顔を出した私達に代表、柴又はこのとんでもない任務を私達に伝える。地獄の放課後…
俄然反対である私の意見も聞き入れず、柴又はこんなことを言い出した。
「みんな知っての通り…俺達3年は来年には卒業だ…つまり、この同好会の次の代表を決めなければならない」
「俺!」「僕に任せてください!!」「俺、自信があります」「俺ですか?ありがとうございます」
気の狂ったメンバー達の挙手を宥めて、柴又は私と姉さんの方を見た。背筋が凍った。
「俺は次の代表に浅野姉妹を推したい」
「おぉ…」「何故ですか代表!!僕は!?」「可愛い…賛成…」「確かにむさい男が代表より華があっていい…」「小生、鞭で叩かれとうございます」
狂気…
名指しされた姉さんは突然の事態に目をぱちくりさせている。しかし姉さんの横顔には拒絶の色がない。
姉さんがフリーズしてるうちに私は辞退を申し出ようとするも、挙げようとした手が姉さんと手錠で繋がってて咄嗟に挙げられなかった。
「2人も異論はないな。ありがとう。決定」
「…っ、はい!でも…私達でいいんでしょうか?」
不覚っ!!
不安そうな顔色の姉さんに柴又は大きく頷いて微笑んだ。ムカつく。殴りたい。ふざけるな。これだけやりたい奴が居てなんで私達なんだ…
「君達にしか出来ない、今回のミッションは君達が代表となる為の最終試験だ」
落ちたらどうなるんだよ。今決定って言ったじゃん…
「君達が次の校内保守警備同好会を引っ張っていくんだ…期待してるぞ」
--そんなわけで。
「ただいま…」
「おかえり圭介。遅かった…あらお客さん?」
「初めまして。校内保守警備同好会の浅野と申します」
「…はぁ?」
「今日から息子さんの警護をさせていただきます」
「……はぁ?」
「24時間体制でお守りします」
「……???」
そんなわけで、ズカズカ上がり込む私らにドン引きのお母さんと、なんかソワソワした橋本と、ヌルッと始まった浅野姉妹緊急任務…
「えっと…24時間って…朝から夜まで?」
「もちろんだよ。何かあったらいけないから。大丈夫、家の外は男子達が固めてくれてるから。家の中では私達が守るね!」
心強いのか迷惑なのか分からない姉さんの意気込みに橋本、まるで童貞のような反応…女が家に上がること事態橋本家では前例がないに違いない。
こいつ、童貞だ。
さて、手錠で仲良く繋がれた突然訳分からん姉妹をドン引きながらもてなしくてれるお母さんからお茶とお茶菓子を貰いつつ、橋本の部屋へ…
橋本の部屋はまぁ…ザ・オタクって感じ。
フィギュアとかアイドルのポスターとか…色々、橋本の部屋の中なんて心底興味ないからどうでもいいけど…意外だったのは男性アイドルのポスターやら写真集やらもあったことか…
「あの!?部屋の中でまで警護するの!?」
「何かあったらまずいから」
「姉さん、そこまですることないでしょ?てか、家の外を固めてるなら中はよくない?」
「何かあったらまずいから」
「ていうか、ご近所さんの噂になるから家の外の怖い人達何とかして…」
「何かあったらまずいから」
チラチラと窓の外を伺う橋本にも、やる気のない私にも取り付く島もない姉さん。
一体なににそんなにやる気になってるのか…こんな同好会の代表になることが姉さんの何をそんなに刺激したのか…
あと私達を繋ぐ手錠に意味はあるのか…
「メーデー。こちら浅野詩音、そちらの状況は?」
『メーデー、こちら林田、家の周りに主婦と思われる女性3名、こちらを伺っている様子、排除するか?』
「攻撃してこなければ大丈夫です。メーデー」
『メーデー』
そしてメーデーに意味はあるのか…
--そんな、これだけでクソめんどくさい謎の仕事。地獄はここからだった。
「…あの、浅野さんだっけ?そろそろ遅い時間だし…帰った方がいいんじゃない?あと、外の人達も…」
「お気遣いありがとうございますお母さん。でも息子さんを24時間警護しなければなりませんので」
「……え?」
「え?」
…我が姉はもう止まらない。そして泊まるつもりだ。ガッデム。
「圭介兄ちゃん、この人達お友達?」
「圭介お前…隅に置けないな。もう次の彼女か?」
「翔平も兄さんもやめてくれよ…違うから、ただのSPだから」
「?」「?」「?」
家族団欒の食卓に立ったまま混ざる浅野姉妹…
「え!?風呂にまで!?」
「何かあったらまずいから」
「姉さん…流石に風呂にまで敵は入ってこないから。総理大臣でもそこまで守られないから」
「いやでも、美夜?そんな気を抜いてたらいざって時に対処できないよ?しっかりして!」
「……」
なぜか同級生の風呂を覗く浅野姉妹…
「…………僕、もう寝るんですけど」
「お休み橋本君」
「姉さん、もういいんじゃない?私達はよくやったよ。母さんから死ぬほどメッセージ来てるよ?私達も帰ろう」
「何かあったらまずいから」
「…………え?僕監視されながら寝るの?」
「何かあったらまずいから」
そして同級生の就寝を見守る浅野姉妹…
「……あの、あなた達?もう22時よ?外の子達もいい加減帰らないと--」
「ご心配なく。仕事ですから」
「……仕事」
「息子さんは私達がお守りします。ね?美夜」
「……」
そして同級生のお母さんからドン引きされまくりの浅野姉妹…
橋本の部屋の前の廊下から、細く扉を開けて中を伺う姉さん。
その隣で猛烈な眠気と共に今置かれてる状況ってなんだろ?人生ってなんだろ?って考える私…
「……姉さん、なんでそんなにやる気出すわけ?ちょっと常軌を逸してるよ?」
「折角柴又さんが期待してくれてるんだから。頑張らないとね?」
「……たかが同好会の……しかもこんな非常識な同好会の代表になるのが、なんでそんなに大事な事?」
私の問いに扉の隙間からじっと部屋を見守る姉さんがこちらに一瞬視線を寄越して微笑んだ。
「だって…美夜がようやく学校の人に認められたんだよ?お姉ちゃん、頑張っちゃう」
その顔があまりにも嬉しそうで……
色々ズレてるとか常識どこやったとか言えなくなってしまった。
……元々私達がこの同好会に入ったのは学校のみんなへの贖罪。学校のみんなに認められる為に…その目的が今形となって目の前にあるんだ。
姉さんはきっと、私がこの学校で認められたのが嬉しいんだ……
そんな姉さんの真っ直ぐな気持ちを前にして、私もこれ以上なにも言え--
--パリンッ!!
「っ!?」
「何事!?」
「……は?」
寝てた橋本、部屋を見てた私達…
三者三様のリアクションで突然夜の静寂を破った音に意識を向けた!
甲高い音の正体は部屋の窓ガラスが割れる音…
そして、窓から学習机の上に乗り込んでくる侵入者の姿を私達はしっかり捉えてた。
…マジ?マジで家まで襲撃に来たの?
ドルオタの執念にドン引きガクブルの私の前に現れたのは、アイドルに異常に執着するようには見えない刺客。
目立たないようにか黒いコートを着込んだその刺客はまさに殺し屋って風情…
ただその容姿は、ひまわりのような美しくも明るい金髪を編み込んだ、サファイアブルーの瞳を濡らした日本人離れした美少女だった…
そんな美少女が突然男子の部屋に夜襲をかけてきて、さらにこんなトンチキな台詞を吐き散らす。
「『アイドル健全応援委員会』カラ、依頼ヲ受ケマシタ!ノア・アヴリーヌデス!!アナタヲ殺シマス!!」
……は?
「ミンナノ、アイドルヲ穢シタアナタハ死ヌベキダソウデス!!天誅デス!!」
…………は?
*******************
「待ちなさいっ!!」
侵入者を威嚇して止めたのは姉さんだった。
「校内保守警備同好会です!彼には指1本触れさせませんっ!!」
「『アイドル健全応援委員会』デス!!用心棒ハ金ニナラナイノデ委員会ニ雇ワレ殺シ屋ニナリマシタ!!私ニ狙ワレタカラニハ覚悟シテクダサイ!!」
どっちも何言ってんのか分かんねーしお前が殺し屋になった経緯とか知らんし……
てか殺し屋なのか…
明らかに今までと毛色の違う襲撃者…姉さんは警戒しつつも、女相手に「ひぃぃ!」と逃げ惑いさらに女の私達の後ろに隠れる橋本を庇いながら尋ねる。
「……外にいた私達の仲間は?彼らに見つからず部屋に入るのは不可能なはず…」
「アノ役立タズデスカ?眠ッテモラッテマス」
……おい。警護の要の男衆全滅でどーすんだよ。私達だけで?終わってんな…
現状に絶望する間も与えずに殺し屋ノアなんとかが進軍してくる。殺しに来たなんて公言する奴だ…一体何を隠してるのやら…
「姉さん逃げるよ!!こんなの付き合ってられるかっ!!」
「何言ってるの!?橋本君を守らなきゃっ!!美夜!助けを呼んできて!!ここは私が何とかするから!!」
「いや…姉さん…」
「私は大丈夫…さぁ!」
ガシャンッ!
「さぁ!じゃねーよ。手錠何とかしろ!!」
「あぁっ!?大変!!ピンチの時も一心同体!」
「コントやってないでなんとかして!?君ら僕を守ってくれんでしょ!?」
……こいつっ。マジで助けてもらう気満々かよ。男の風上にも置けないな。
やはり学生なんてどいつもこいつも…いよいよってなったら女でも簡単に切り捨てようとするんだ。
「私ノ八極拳デ粉々デスッ!!」
少しずつ変わってきてた学生という生き物への認識も再び失望に塗り変わり始めた時、殺し屋が突撃してきた。
コンパクトかつ素早い動作。電光石火の踏み込みが他人の家の床を踏み砕きたながら私達の間をすり抜けた。
「橋本君っ!!」
次の瞬間には、なんにも反応できない私達の目の前で橋本がゼロ距離でぶん殴られて吹っ飛んだ。
昔話のおむすびみたいに廊下に転がる橋本。細い腕で男1人ぶっ飛ばすその膂力に驚愕…
こいつあれだ…漫画とかで見る素手を信条とするタイプの殺し屋だ……
「やめて!!なんでこんなことするの!!殺し屋なんて……っその人があなたになにしたのっ!!」
転がる橋本と殺し屋の間にかっこよく割って入る姉さん。
「痛い痛いっ!!急に動くな……いだっ!!」
ただ手錠で引っ張られる私も巻き添えだ。転けたし。
「私ニハ恨ミハアリマセン。私ハ私恨デ人ヲタ傷ツケルコトハシマセン。全テハバイトノ仕事ダカラ……」
「バイトごときがなにプロフェッショナルみたいなこと言ってんの?殺し屋のバイトってなんだ。どこで求人してんのよ」
「『アイドル健全応援委員会』デス」
「おいノアなんとか。そんな訳分からん奴らの口車に乗って、この先の人生取り返しのつかない十字架背負ってもいいの?」
「そうです!!まだやり直せます!!」
私と姉さんの訴えに返ってきたのは鉄の意志--
「私ニハバイト代ガ必要ナンデスッ!!」
たかがバイト風情がなんていう覚悟…てか橋本、お前の命時給いくらか知らんがバイト代以下だとよ。
てか『アイドル健全応援委員会』ってなに?
と、その時…私と姉さんを繋ぐ手錠の鎖が後ろから引っ張られる。体勢を崩して後ろに倒れ後頭部を強打する私らに代わって前に出てきたのは橋本だった。
「2人とも…彼女の狙いは僕だ。逃げて…」
「橋本君!?何言ってるの!?」
「巻き込んでごめん…でも、僕のせいで君らが傷つくのは見てられない…」
「橋本君…」「お前……」
…こいつ。
カッコつけてるつもりかもだけど寝巻きのTシャツが猫耳メイドのプリントされたシャツって時点で手遅れだった。
「…自ラノ命ヲ差シ出シテ友ヲ守リマスカ……」
「友達では……ないです」
姉さん…酷。
「イイ覚悟デス。アナタノ目ニハ強イ勇気ノ意志ガアル…出来レバ、殺シタクナイデス…」
どこか辛そうにそんなことを言う殺し屋の表情には本気の躊躇いがあった。そんな面するくらいならなんでこのバイトしてんだ?
が、彼女の覚悟はもう決まっている。
圧倒的強さを持つギャグみたいな殺し屋を前に、それでも橋本は…
「ふっ」
「?」
不敵に笑って見せた。
手に持った通話中のスマホの画面を見せて…
「僕もね…タダで死ぬ気はないんだよ?お嬢さん」
こいつさっきから言い回しがキザだけど寝巻きが猫耳メイドなんだよなぁ……
通話中の画面を見てなぜか殺し屋の顔色が変わった。
そして、その刹那だった…
--家の2階が吹っ飛んだのは。
「きゃぁぁぅ!?」「お父さん!!」「なんだっ!?何事だっ!?」「地震だァァっ!!」
爆風と吹き飛んだ家の瓦礫にもみくちゃにされながら姉さんと一緒に吹き飛んだ私達は夜の道に放り出されてた。
すぐそばに落ちてくる橋本家御一行。周りがパニくる中無惨にも吹き飛んだ我が家を見たお父さんだけが「ああああっ!?ローンがぁぁぁっ!!まだ残ってるのにぃぃっ!?」と野原ひろしみたいなこと言って喚いてる。
そして。この保険適応外の突然の大災害の原因は--
「…ッヤハリ…宇佐川先輩」
「…こふーっ」
殺し屋と対峙しながら口から煙を吐く三つ編みの女…
「えぇ!?結愛さんっ!?」
「……え?この北京原人、姉さんの知り合い?」
「人の彼女を北京原人とか言うな!!」
「えっと…うん、家政婦してるお家のお孫さんで……」
…いつから家政婦してんだよ。
わけも分からないままぽかんとしてるとまた衝撃波が私達を襲う。
そこでは掴み合うだけでなぜか地面が陥没していく殺し屋と北京原人が…
「先輩、コレハ仕事ナンデスッ!!」
「私の彼氏いじめるのが仕事ぉ?お前……マジでいい加減にしろよ?」
「クッ…マサカ先輩ノ彼氏ダッタナンテ……デモ!オ仕事ナノデ!諦メ--」
何か喚いてた殺し屋の首が真上に弾ける。
膝蹴りを食らわした北京原人は手四つのまま殺し屋を振り回す。その回転は竜巻を呼ぶ。
……これ、なに?
「……ガバッ!?馬鹿ナ……以前ヨリ遥カニ強イッ!?」
「うおらぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
竜巻に巻き上げられた周りの車や電柱、街路樹、家。夜空に向かって伸びる死の旋風はその大きさを増していき……
私達はそれをただ、巻き込まれないように踏ん張りながら見つめていた…
……なに、これ。
…………え?
なんなん?これ……
--結局、殺し屋を吹っ飛ばした竜巻が近隣を更地にしたあとでも、その答えは出なかった…




