世界の脱糞展
--私は可愛い。
天界の神々が私の美貌に嫉妬して天罰を下してくるくらい可愛い。
求婚者があまりにも多すぎてそれぞれに達成不可能の試練を与えなきゃいけないくらい可愛い。
石油王からプロポーズされるくらい可愛い。
そんな私、日比谷真紀奈ですけど…
今日は戦いです。
私の今後の人生を決定するくらいの大事な戦いです。
--私は今、むっちゃんこと小比類巻睦月君とデートしてます。
停滞し続けた私の恋…その歯車が突然回り出したきっかけはむっちゃんがフラれたという情報を聞き及んだ時から。
むっちゃんはこの日比谷真紀奈を差し置いてメイド喫茶でウ○コ垂れてるクソ女のケツに夢中だった。
しかしウ○コメイドにフラれたむっちゃん。その失恋のショックに付け入るかたちで私が割り込もうという、そういう作戦。
むっちゃんの心には今大きな穴が空いている。
その穴を埋めてあげられるのはこの日比谷真紀奈の美貌をおいて他にないはず…そうでしょ?
癒しを求めるむっちゃんに1日この日比谷真紀奈がベタベタ甘々に接してあげればむっちゃんももうイチコロよ。私の魅力で。
あくまで私の魅力でね?なので決して、失恋の失意にいるむっちゃんを今がチャンスと小賢しい手を使って籠絡しようとかそういうモテない女の考えそうな作戦ではないのです。
ウブでシャイなむっちゃんの心を開くタイミングとしてはいいんじゃない?っていうそれだけの事。
これくらいの好機でなければむっちゃんをオとせないとかそんなことは断じてない。
さてさて。
デート最初の軽食では、むっちゃんが輝かしい漢気を見せてむっちゃん持ち込みのねぎ焼きを堪能した。
自分一人で食べたかったろうに…むっちゃんの器の大きさに日比谷、感服するばかりです。
そして1本のネギを2人で分けるというこのカップル感。流石むっちゃん、乙女心をよく分かってる。
小腹も膨れたところで私達が次に目指すのは市内でもそこそこ大きな複合施設。
映画館とかご飯屋さんとかスポーツ出来るとことか色んなお店が入ってて、ここで1日潰せる。暇つぶしのお重詰め合わせみたいなとこ。
市内在住なら誰でも1度は足を運んだことがあるんじゃないかって……
「なにここ?すげー。色んなお店が入ってる…おお、てっぺんまで吹き抜けだ…」
運んだことなかった。
流石むっちゃん。遊び呆けずストイックに勉強に打ち込む学生生活…私も見習わないといけない。
むっちゃんは学年上位の成績なのを私は知っている。
さて市内在住でない私が知っている施設内で私達がまず目指すのは…
「で?日比谷さんの買い物ってなに?」
「よくぞ訊いてくれました。むっちゃんの目の保養になるところだよ」
ランジェリーショップです。
そう!
滝川先生の教え、「好きな男をオとすにはエロ」!
相手のフェチを知りそこを強調する!今日はスケスケTバックでこの日比谷真紀奈のプリケツを拝ませて--
「そう、じゃあ俺あそこのサボテン屋見てるわ」
「ちょちょちょ!ちょ待って!!」
キムタク出ちゃった。
踵を返すむっちゃんを無理矢理引きずって私はランジェリーショップへ。
以前凪と来たけど…ここには際どい下着がたくさんあるんだ。ビーズ付きとか。
個人的に可愛い下着欲しいし、この後の『本番』にも必要!
「えー?やだ。内気でシャイなナイスガイの俺に女性下着の専門店なんて……」
「いやいや!むっちゃんに選んで欲しいんだ!サボテンより楽しいから!!確実に!!」
なぜ?どうして嫌がる?日比谷真紀奈のケツですよ?
羽交い締めにして入店。
店員さんから変な目で見られながらもむっちゃんと店内を物色。
女性用下着とは女の正装でありあえて隠すことにより女体をより神秘的に際立たせつつ可愛らしい意匠によって飾り立てる…
つまり下着とは見せるためにある。
つまり下着は異性に選んでもらった方がいい。
ウェディングドレスだって相手に見せるでしょ?そういうこと。
凄く居心地の悪そうなむっちゃんと共に店内をぐるっと一周。
「むっちゃん!どれが良かった?」
「…………え?どれでもいいんじゃ--」
「黒かな?レースかな!?」
「…………ちなみに用途は?」
用途!?
やっぱりむっちゃんは日比谷真紀奈のケツを叩く為に産まれてきたような人だ。下着とは何たるかをわきまえてらっしゃるのね。
「もちろん勝負下着です」
「じゃあ…………赤」
「赤!」
「いや、やっぱり黒…」
「黒!!」
「……白にしとくか」
「白!!!!」
分かるよむっちゃん…今むっちゃんは頭の中でこの日比谷真紀奈を裸にひん剥いて何色の下着が1番興奮するかシュミレーションしてるんだね!?
でも生で見るのが1番だよ!!
「赤か黒か白ね!着てみよう!!ちなみにレースフリフリか面積少なめか……あ、穴が空いてるやつとか……」
「なんでもいいんじゃない?」
「どれがいいかな!?これ!お股のラインに切れ込みが……っ!!」
「それがいいと思う」
「なるほど!!でもこれ黒しかないね……あとは……あっ!これ凄く小さい!!何が隠れるのってくらい!!これの赤と……」
「それがいいと思う」
「うわぁ……すごいやこれ……スッケスケだよむっちゃん!!純白てか、もはやビニール袋……」
「それがいいと思う」
「分かった!!」
おおよその目星をつけてから試着室へ。「あれ?着るの?ん?俺どうしたらいい?」と試着室のカーテンの向こうでむっちゃんのあたふたする声が聞こえてくる。
急がなきゃ……むっちゃんが待ってるので……
「日比谷さーん。さっきから周りの視線が痛いんだけど。てか、サボテンが気になって仕方ないんだ俺。いいかな?サボテン買ってきていいかな?日比谷さん下着選んでるしサボテン…」
「どう!?」
着替え終わって、シャッ!!とカーテンを開け放つ私の目とむっちゃんの目がバッチリあった。
あれこれ言いつつ女の子の着替えを待ってくれるむっちゃんへ大サービスだよっ!!見て!!これ!可愛い!!お股にスリットの入ったド派手な深紅の下着をむっちゃんへ--
「わぁ日比谷さん。ナニシテンノ?」
私の目の前で下着に負けないくらいの深紅の噴水があがった…と同時にむっちゃんが後ろに倒れた。
……っ!
むっちゃん…ごめんなさい!!
私、自分の魅力を正しく理解してなかったかも……っ!
刺激が強すぎました。
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「ごめんねむっちゃん…私、自分の戦闘力を甘く見てたよ」
「日比谷さんはアレかい?露出癖でもあるのかい?」
むっちゃんに選んでもらった下着を買って、鼻にちり紙詰めたむっちゃんと複合施設の2階へ上がる。
ここの2階にはゲームセンターとかボウリングとかバッティングセンターとか遊べる場所が沢山あるのを私は知っている。
健康なムラムラは健康な体からという事で、一汗流そうということだ。
サボテンを名残惜しそうに1階を見つめるむっちゃんを連れてエスカレーターを登ったら目の前で私達を出迎えるバッティングセンターへ直行。
「…野球か。オカマを連想するから苦手だな俺」
「むっちゃん、今日は嫌なこと全部忘れなきゃダメだよ」
いざバッティングマシーンの前にバットを持って立つと、こちらに狙い済ましたマシンにちょっとビビる。
隣でフラフラーっと構えるむっちゃんに習い、私もバットを構えた。
ただ立ってバットを振るだけ。この日比谷真紀奈、いかに運動音痴とはいえこれくらいこなして--
--バコーーンッ!!
「わひぃっ!?」
ボールがっ!!私の頬を掠めた!!
「日比谷さん、もう少し離れないと危ないぞ?」
「むっちゃん!あいつ今私を殺す気だった!!」
「あー、そうかもしれない。そんな気がする。奴の目には『スゴ味』がある…」
「目ってどこ?むっちゃん…」
なんてネット越しにむっちゃんと話してたらまたやつは私の準備が整う前に--
--ギャドンッ!!
ボールの弾道が空気を1本切り裂いて、私の体が風圧で浮き上がる。後方に着弾したボールが破裂して四散、その威力を物語る。
「スピードが上がった!?」
--ヒュンッ!!
「早!?もう次の球がっ!?」
「落ち着くんだ日比谷さん。バッターボックスであんまりワタワタするな」
「むっちゃん助けて…コロサレル…」
「日比谷さん、ここに来たってことは『覚悟して来てる人』……ですよね?ボールに当たるかもしれないという危険を常に『覚悟して来てる人』ってわけ--」
「何言ってんのむっちゃん…」
--フォッ!!
「なんか…」
--シュバッ!!
「段々スピードと次弾発射が速く……っ!」
--ボボボボボボボボッ!!!!
「むっちゃーーーんっ!!」
「…出ればいいのに」
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逃げるようにバッティングセンターを後にしたら店の看板に『シャトルランバッティング』って書いてあった。ふざけるな。
「ハラハラしたねむっちゃん」
「見てるだけでハラハラしたよ」
……さて、次。なんだけど……
この日比谷真紀奈。数多の男に言い寄られてきたから本能的に分かる。
むっちゃん…なんか退屈そう……
この日比谷真紀奈とのデートで“退屈”?
そんな天変地異より起こりえない事態が今隣で現在進行中だと言うの?日比谷真紀奈と歩けるだけでショック死するくらい喜ぶものだけど?凪だったら鼻血で大気圏超えるけど?
でもむっちゃん、やっぱりどこか退屈そうというか……寂しそうというか?
「…………サボテン」
そっか。やっぱり失恋のショックはそう簡単には塞がらないか。それくらい真剣だったんだね。本気で人を好きになれるむっちゃん、素敵。
がしかし、むっちゃんのピュアさに絆される暇はないわよ!この日比谷真紀奈とのデートが終わった最後に「退屈だったよ」なんて絶対言わせないんだから!!
……何か……むっちゃんの気を引けるもの…
「………………サボテン、みたい」
なにかないか?なにか……
「………………サボテン、トモダチ」
「……っ!!」
必死に視線を巡らせた私の目にそれは飛び込んだ。私の頭に雷落ちる!!この時まさに私に天啓が舞い降りたのだ!!真紀奈よ、これでオトしなさいと!!
--世界の脱糞展
なんでこんなところにあるのか心底疑問な訳分からん展覧会が……っ!
これは一体誰に需要があるんでしょう……?
しかしっ!!
--……あ、あんな脱糞女のどこが…?
--え?そこがいいんじゃない。
むっちゃんは脱糞が好き!!スカトロ!!
ここに入ればむっちゃんもそういう気分になってくれるはず!既成事実が出来ればもう2人を阻むものはないっ!!
「むっちゃん!!ここ行こうか!!」
「サボテ…え?……だ、脱糞……?」
「行こう!!脱糞が待ってる!!しかも世界の!!」
「……?……???」
なにかに後ろ髪を引かれるむっちゃんを無理矢理脱糞展に引きずり込んだ!!
勝ちました。
これはもう実質ホテルに連れ込んだも同義でしょ?目の前でスカトロが目白押しで横に日比谷真紀奈なら=日比谷真紀奈のスカトロでしょ?
むっちゃん……私はむっちゃんがアブノーマルな性癖でも大丈夫だからっ!!むしろありがとうっ!!浣腸してくださいっ!!
むっちゃんからのケツへの折檻を想像して早くもエクスタシーしそうになりながらも脱糞展へ足を運ぶ。
やはりというか、客は私達だけでした。
『--こちらは、シロサイの脱糞です。とてつもない迫力です』
脱糞展は壁に貼られた脱糞写真とその“現物”と音声アナウンスによって世界の脱糞を紹介するというものだった。控えめに言って汚い。
ただこれでむっちゃんが私の脱糞を想像するなら4500円払った価値はある。
『こちら、アフリカゾウの脱糞です。とてつもない迫力です』
「むっちゃん、アフリカゾウだって!」
「…………」
『こちら、イリオモテヤマネコの脱糞です。希少ですね』
「天然記念物の脱糞だっ!!」
「………………」
『こちら、フレミッシュ・ジャイアントの脱糞です。うさぎは自分の糞を食べるのです』
「スカトロ!!むっちゃんスカトロだっ!!」
「俺日比谷さんがわかんねー」
『こちら、田村義和、43歳独身の脱糞です。オフィスでの脱糞を撮影した貴重な1枚です』
「健康なバナナだね!!」
「日比谷さん、こういうの好きなの……?」
「うんっ!!」
「っ!?」
むっちゃんが好きなら私も好きっ!!
「--いやー、楽しかったねむっちゃん!」
「……そ、そうか。良かったよ」
「ところで…どう?」
「何が?」
「その……具体的に言うと下半身の血行というか……」
「……???」
……うーん、ズボンの上からでは膨らみは確認できず。私とのスカトロ鑑賞でも興奮は足りず……
栄養が足りないのかな?そうに違いない。
「……よし、ご飯にしよう!」
「脱糞展の前に行きたかったな!?」




