湖城
霧のかかった湖に佇む大きい古城、そのレンガ造りの壁面には蔦と陰りが覗いていた。人気の無い城には明かりが一つもついていなかった。
無気味なほど静かな湖畔に一人の足音が寄ってきた。トレジャーハンターのケインんだ。
湖にボートを出したケインはオールに力を入れる度に、うなじに当たる霧の感触が何とも言えないほど不快に感じた。
重く、暗い水面には近くの山と古城が映る。
しかし、ケインは不思議に思った。数十メートル進んだところだろうか。オールを漕いでも視界の城はちっとも近づかなくなってしまった。
欲すれば欲するほど遠くなる古城。
仕方なくケインはボートを引き返すことにした。
今度は陸地に安心を欲して。