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無事に到着したのだが……

その後、無事に村に着いたのだが……


「すまないが、村の中に入れることはできん」


開口一番村内に入ることを拒否されたりしかも後ろに控えている獣人の村人達の手には鍬や鎌、中には槍や剣を握っている人もいたどう考えても快く歓迎はされているわけではない。


「なぜだ、長老。リュウノスケは私の命の恩人なのだぞ。」


レティシアは必死に説得しようとしている。


「もちろんレティシアを助けてくれたことは感謝してもしきれない。もちろんリークからも話はきいているただ我々は獣人。人族に虐げられてきた長い歴史の中でそう易々とは埋まらない深い憎しみが出来てしまった。この村にいる者達の中には子供を殺された者もいる。その点は察してほしい」


瞳を伏せて村長はそう述べたしかし


「ただそれでも命の恩人には変わりない。なので村の皆と相談した結果、村から少し離れた場所に住む人がいなくなって使っていなかった家なら住んでも良いことになった。もちろん雨漏りなんかも直した、必要な物があったら可能な限り用意する。だからリュウノスケが良いのであれば村の皆が君を認めるまではそこに住んでくれないか」


不安げな顔をしたレティシアは、俺のほうを振り返る。


「どうするんだ?住むかどうかは龍之介の自由だ。そんなことは私がさせるつもりはないが、村の誰かがリュウノスケに危害を加える可能性もある。もちろん住まないなら近くの人族の町まで私が責任を持って送る」


レティシアは断られたらしっかり責任を持って人族の町におくるつもりでいるようだが、正直その選択をとるつもりはない。人族の町に行ったところで安定して暮らせる確証もない。村人が襲ってくることに関しても全くの0とは言えないがそれは古めかしいが鳴子を取り付けるなり対策をすることが出来る。なによりせっかく家を整備してもらったのだから無下にはできない。


「雨風しのげる場所を用意してもらっただけでもありがたいです。大事に使わせてもらいます」


「おおそうか皆で頑張った甲斐があったなあとは儂一人で十分じゃろう、皆もそんな物騒なものは今後リュウノスケに向けないように、解散」


住民が各々の家へ帰っていくのを尻目に見送った村長は、俺のほうにむきなおると


「では家へ案内しよう」


とだけ言うと見た目にそぐわぬ速さで歩き出した。


その光景に呆然としていると、レティシアが耳打ちしてきた。


「凄いだろう。あれで150歳だぞ」


「150歳!?見た目50代前半なのに」


「そうなんだ、そもそも人族も獣人も寿命は大体60歳ぐらいだから長老はかなりの長生きなんだ。しかも剣術の腕もたってな子供たちに剣術を教えている。私も小さい頃から剣術を習っているが、何度長老の木剣で殴られたことか……」


その時の光景を思い返したのか、しょんぼりするレティシア


「そんなに強いのか、今度教えてもらいに行こうかな」


俺の場合使うことになりそうなのは銃であって剣ではないのだが、他多少なりとも扱えれば戦術の幅も広がる。


「やめておいたほうがいい、長老は客人だからってまったく容赦しないぞ。前に長老を襲った人族はたった一瞬のうちに顔がスライムみたいになって、生きているかも怪しいぐらいだった」


レティシアは真顔で恐ろしげな発言をした。


「……やめときます、ん?なんで村長が襲われたんだ?」


奴隷として売ろうとするなら女子供のほうが良いはずだ。この世界に初老の男性を守備範囲に入れている人なんてほとんどいないだろう。前の世界にも多分いなかったはず。執事としてならあるかもしれないが獣人は忌み嫌われていると言うし。


「それがな。昔、長老がこの村を作る前は大陸全土に名を轟かす冒険者だったみたいで、よく手っ取り早く名を挙げようと長老に挑みにいているんだ。その人族もここまで時がたっていれば簡単に倒せるだろうと高を括ってきたらしい。つい3週間前にも別の人族が来たんだが……まあ結果は前と同じだ。前回の件もあって長老も反省したらしく素人の私にもわかるぐらい手加減していたぞ。おかげでその人族は顔面スライムにならずにすんだ。アンデット並に奇妙な歩き方になってはいたがしっかりと自分の足で帰っていったぞ」


まるで今回は何もやらかしていませんよーとでも言いたげな顔で説明してくれた。


「……」


やめよう、村長だけは絶対に怒らせないようにしよう、何が何でも絶対に!


「えー、儂がなんかあったか?」


瞬間移動でもしたのか、さっきまで2メートルほど先を歩いていた村長が突如後ろから話しかけてきた。


「「出たーー!!」」


うん、全力疾走、レティシアも俺もお化けにでも出くわしたかのように突っ走る、死ぬ気で突っ走る、なのに


「フハハ、何処へ行こうと言うんだね」


天空を飛んでいる城に出てくるムスカみたいなセリフを言いながら村長が楽々と並走してきた。


「「ぎゃあーー!!」」


その後パニックに陥った俺とレティシアを心底楽しみながら村長は、目的地まで案内してくれた。


まったく、勘弁してくれ。


「ほら、ここが君の家だ」


散々追い回されて疲れきり、地面に突っ伏した俺は何とか上を見る。


「これっ……て……」


その家を見て絶句してしまった。


「気に入らなかったかね?」


目の前にある家は、別に憎悪を形にした豚小屋のような粗雑なものではなかった。しかし、豪華絢爛な屋敷でもなかった。どこにでもあるような中世風のレンガで作られた家だ。ただそこに村人たちの根の優しさが感じられる……ような気がする


「村長さんありがとうございます。とても良い家ですね」


さっき村長の発言は恐らく本当の事だろう。

俺自体にはなんの恨みもなくても人族には代わりない。子供達を殺された人達から見たら、いるかはわからないが卑怯で残酷なゴブリンと大差なんかない。それでもここまで綺麗な家を用意してくれた。ただそれだけのこととも言えるが俺は出来る限り村人の誠意に答えたいと思った。


「そうか気に入ってくれてうれしいよ。じゃあ儂は帰る。ああ、言い忘れた儂の家はここから北に少し行った所だ。村とは少し離れているから村の皆も文句はないだろう。なにか困ったことがあったらそこにでも来てくれ。」


村長は必要最低限のことを伝えると、スタスタと歩いて行った。

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