Ak-74とヴィントレス
「めんどくさい奴」
ボソッとサクレはつぶやくと俺のほうに向き直るとヒョイと片手を上げ何処か陰湿な笑みを浮かべた。
「俺の名前はサクレていいまっす。まぁ特にかかわることもないんでそこらの汚らしい獣だと思っててくれていいっすよ。流れ矢に当たらない事を祈ってまっす。人族様」
嫌味を多分に含ませた挨拶を終えるとサクレはザグが去っていった方向とは逆に向かって歩き出した。
「……」
こえぇぇぇ!何あれ!?流れ弾じゃなくて流れ矢!?新手のFF発言か!?サクレって奴がリークレベルだったら俺死ぬよ?身動き取れない俺はただの少し狙撃が上手いだけのプレイヤーだぞ!?
リーク以降2人目となる嫌い発言だったがリークにはなかった嫌な粘度があり恐ろしく感じていた。
「あの……」
サクレに返事をしようとした口をポカンと開け己が身がどうなることやらと聞風喪胆していると気弱な声が聞こえ我に返った。
「あ、ダリヤさんにケトンさん。どうされました?」
そこには狸のような丸い耳を持ったダリヤと垂れた犬耳のケトンの2人が並んでこちらを見上げていた。
俺に話しかけてきた声の主はそのうちのダリヤで少し重たそうに一抱えほどある中型の丸い盾を抱えている。
「えっと……サクレとザグさんのことです。リュウノスケさんにお願いするのもどうかと思ったのですが……余裕があればで良いので2人のことを気にかけてくれませんか?」
盾に顔を少し隠すようにしながらダリヤは言った。
一見ダリヤが怯えているように見えるがそういう訳でもなくただ単純に恥ずかしやがり屋なだけという事が鉄条網設営中に夫のケトンから伝えられていた。
「了解です。余裕があればですけどね……」
ので俺は物怖じすることも無く特に理由を聞くこともなく了承した。
と言うのもサクレとザグの会話やその態度から何となく事情を察していたこともあった。
そう言うのはアニメやラノベで見たぐらいだから対応出来るかは自信がなかったがある意味ラノベ的解決なら出来ると訳の分からない納得を己にさせた。
「よろしくお願いします。さぁ行きましょうケトン」
表情をゆるめ軽く頭を下げたダリヤはサクレが歩いていった方向……森側を向いて右へ歩いていく。
後ろで黙って会話を聞いていたケトンも戦闘前の緊張に圧されてか少し顔を強ばらせながらも俺に一礼するとダリヤの後を追っていった。
2人の持ち場は右側の端、南側の援護も受けやすいので生存率がある程度保証されている場所だ。
村長もここまで追い詰められているのに優しいな。まぁリア充は爆発して貰わないといけないし俺としても大いに賛成したい。自分にも出来たら良いけどなぁ……いや、その資格はないか……
歩き去っていく若夫婦に手を振りながら見送り手前にいたサクレに気持ち悪そうな目で見られて苦笑いをしながら手を下ろした俺は気持ちを切り替える為に傍らに置かれた銃を拾い上げておく。
VSS愛称でヴィントレスと呼ばれている冷戦真っ只中に生まれたソ連出身の銃だ。
この銃の特徴は全長のほとんどを占める大型のサプレッサーとストック……特にサプレッサーはこの銃の本質と言っていいほどで音をできる限り消そうとした結果サプレッサーはバレルそのものを覆っているにもかかわらずそれをさらに超えバレルよりも長くなった。
また弾丸が音速を超え衝撃波が発生することを嫌い亜音速で弾丸を飛ばせれる9×39㎜弾を使っている。
どこまであるんだAk-47の派生系Ak-74では弾薬の性質上あまりサプレッサーの意味がなく装薬を減らすと不安定になることから開発された。
ヴィントレスの銃口初速は290m毎秒速度的にはH&k mark23の初速とほぼ変わらない一方AK-74は900m毎秒でサプレッサーを合わせたときの銃身長はほぼ同じだが610m毎秒もの差がある。
低速故の貫通力不足はあるものの弾丸が重いことで威力は十分にある。
「ほう……それが長老が言っていたジュウというやつか?」
ふと声がして下を見るといつのまにやらザグが立っていて興味深そうにヴィントレスを眺めていた。




