ゴブリン大戦
そして飛び込んできた光景に俺は涙が溢れてきた。
「皆無事だったのか……」
そこには多少の傷を負っている者もいたがそれでもざっと見た限りは全員居るように思える。
だがいくら周りを見渡してもレティシアが見当たらない。
少し村長の家の外周を回ってみるとレティシアが普段から身につけている形見の剣が地面に突き刺さっていた。だが近くにはその持ち主がいない。
まさかレティシアが死んだ……?
そんな事を考えた瞬間目の前が真っ暗になっていく絶望に打ちひしがれて俺はそのまま崩れ落ちた。
ふっと目を開けるとそこは地球だった。
今まで何度も見てきた光景自分の家だ。
しかしそこには居るはずのない両親とそして幼なじみがいた。
地球では放送してるのかも検討もつかない映像がテレビで流れている。
「父さん、母さん……木乃葉……」
そう呟くと3人全員がテレビを見るのをやめこちらを向いた。
全員の顔は腐ったかのように爛れていた
ああ……やっぱりか。
「許してくれとも言わない。だけど、こうやって来るからには何か償って欲しいんだろ。俺の命なんてとうの昔に捨ててる。憎いなら呪い殺してくれても構わない!
ねぇだから父さん……母さん……木乃葉……恨みがあるなら言ってくれ。もう一度声が聞きたい。それが恨み事でも何でもいい!だからせめて……その声で答えてよ!」
罪深い罪人の声はただただ静かなこの場所で虚しく響く。
そんな慟哭を聞いてもなお、3人の顔は表情も動かずただ落窪んだ眼窩を俺に向けるのみだった。
「やっぱり皆寂しいんだね、俺1人が生き残って死んだと思ったら転生して……2度も生きてる。そりゃずるいよね……だけどごめん、俺にあと少しだけ時間を頂戴い。せめて皆を殺した償いにあの村を救ってみせるから。それだけは許してその後は喜んで地獄にでも落ちるから……だけどもう俺はレティシアを守りきれなかったんだった……大切なものを守れなかった……2回も……もう死にたい……」
蹲った俺の周りを3人はゆっくりと廻る。
まるでかごめかごめのように廻る廻る廻る
「スケ……リュウノスケ!おい、リュウノスケ!大丈夫か!?」
最近聞き慣れてきた懐かしい声が呼んでいる。
余りにも悲しくて妄想で声を作り上げるとは本当に無駄に凄いと我ながら思う。
「リュウノスケ!起きてくれ!リュウノスケ!」
ほらしまいには体を揺さぶられる感覚すら再現した物理法則まで表現するのか。
「リュウノスケ!起きろ!起きてくれ!グス……おきてぇ……」
いや夢でも妄想でもない!起きろ俺!
「はい!起きまs」
勢いよく飛び上がった瞬間目の前に星が散った。
そしてそのままドサッと後ろに倒れた。
見上げた空は僅かに明るくなっている。
「ああ……俺、生きてたんだ……」
「そうだぞリュウノスケ、私たちは生き残ったんだ全員でな」
ヒョコっと視界にレティシアの顔が入る。上から俺を見下ろしているので額が赤くなっているのにも容易に気づけた。
「ごめんレティシア、頭ぶつけたみたいだね」
「全くリュウノスケは自分の事そっちのけで他人を心配するな、安心していいぞ私は元気だ……いや少し頭は痛いが……」
「て大丈夫なのそれ!?」
改めて体を起こしながらレティシアの額へ視線を向ける。
「だ、大丈夫だこの程度どうってこともない」
そう言ったレティシアは俺に手を伸ばす。
俺は無言でその手を掴む。暖かい血の通った手相手が生きているただそれだけなのにとてつもなく嬉しい。
「良かった……レティシアが無事で……レティシアの剣がここに刺さっていたから何かあったのかと思ったよ
」
「ははは!それは面白いな、だが安心しろ戦闘でもし私が死ぬときはあの剣も折れていると思うぞ」
ジョークのつもりでレティシアは言ったのだろうが正直笑えない。
「ところでレティシア、ごめんけど今何時?村の被害はどうなった?」
とてつもなく長い時間寝ていたような気がして不安になってくる。
「村の被害と何時かか……時刻はついさっきダスタナの鐘が鳴っていたぞ村の被害は……見た方が速い着いてきてくれ」
そう言うとレティシアは自分に突き刺していた剣を引き抜き歩いていく。
俺もその後を追う。
「ほら、見ろこれが村の被害だ」
村長の家から見下ろした村を見てきた俺は言葉を失った。
「凄いだろうリュウノスケやリーク達のおかげだ私はここでずっと見守っていただけだからな」
眼下の風景はレティシアの家が燃え尽きている以外全く代わりがなかった。
つまり村の勝利であった。
だがこれで終わるほどこの戦いは短くは無かったのだった。




