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人道性と合理性

 

 想定外の状況が起きたことでゴブリンの動きに乱れが生じだす。


 盾となる重装歩兵ゴブリンを失いながらも前進するゴブリン、本来の目的を放り出して後ろへ逃げるゴブリン。前者はMG42の餌食に後者は特戦隊の役割を兼ねているのか弓兵ゴブリンに射殺されていた。


 そんな混乱で倒れていくゴブリンは着実に増えているはずなのに群れの規模は多少少なくなったようにみえるだけでさして変わっていない。


 思った以上に重装歩兵ゴブリンの盾に弾丸をはじかれており、なかなか軽装ゴブリンや弓兵ゴブリンへの損害に繋がらない。


 過度に銃身を加熱しないようトリガーを短く多少の間をあけながら打ち続ける。


 敵に向かって撃つ弾が切れたら再装填、ただそれだけの単純な動作ただそれにおいてもこの状況を覆すためにはただ一つの滞りもましてや銃を壊すと言ったミスも許されない。


 細くいつ切れてもおかしくない絶妙な調律は重装歩兵ゴブリンの壊滅によって俺の方が優勢となった。


 次々とゴブリンの命を刈り取っていく死の弾丸は絶え間なく続く。


 しばしの間戦場にはMG42の生命を切断する音とそれに掻き消されるゴブリンの断末魔の声だけが騒々しく響いた。


 しかし何事にも永遠に続くものはない。


 それと同じくして俺の優勢もまるで紙が雨に撃たれるようにジワジワと追い詰められていく。


 その優勢の瓦解は軽装ゴブリンが積み上がった死体の山を乗り越え、有刺鉄線の防衛線を突破した時だった。


「越えられた!?こんなに早く!?ゴブリンに人の心、せめて仲間を仲間と思う心はないのかよ!仮にも地球では亜人と呼ばれていただろ!フィクションではあるがな!それが仲間の死体を盾にするか!?」


 当初こそ突然の状況変化に右往左往で撃たれるだけだったゴブリン達だったが重装歩兵ゴブリンの体まで貫通はしていない事を誰が気づいたのか重装歩兵ゴブリンを肉壁として使ったのだ。

たとえその肉壁が生きていようとも邪魔な四肢を乱暴に引きちぎり盾として絶対の死への贄とした。


 もちろんソフトポイント弾を使っている以上盾と金属鎧そして弾力のある肉を貫通してなおさ後ろのゴブリンを殺せるほどの威力は残っていないどころか傷すら付けれないこともあるだろう。


 あくまでも合理的、ゴブリン側の勝利という全体の目的、思想の為に論理や価値観、生存と言った個の目的が粉砕される。


 全くこれ以上に軍隊として優秀でクソッタレなものがあるだろうか、


 上下関係の最たるものがこれとはある意味面白い。結局生き物とは精神的な力よりも圧倒的な物理的での力のほうが動けるのだ。


 それを有効利用した結果がこれ。俺が想定していた突破されるシナリオよりも早くさらには戦闘不能者すら減らしている。


 モナルカやロードには直接ご指導願いたい


『どうやれば人の心は消せますか?』とな


 頭では金属鎧すら食い破る威力を減衰させる為にやれる有効的な手段だと、合理的だと判断が付いていていはするがだからと言って到底受け入れられるものでも賛同することが出来る内容でもなかった。


「まぁ合理的ではあるしお手軽にできる中では最良手だとも思うけどさぁ……はぁ〜軽装ゴブリンの奴らは全員有刺鉄線を越えたか、今さら手榴弾やらで死体の山崩したからって何も変わらないな、崩しきる前に俺が軽装ゴブリンに虐殺されるだろうなぁ


 全くどうしてこうまで俺が余裕で死ねそうなシチュエーションが出てくるだろうなぁ、まさかロリ神が仕組んだりはしてないよな?いやそれはないな。いやどーせそういうこと仕組むならモナルカでも送り込んで来るだろうし……考えても無駄か、さーてゴブリンの皆様方、不肖私めと一緒にインベーダーゲームをやりましょう。達成感もクソもない素晴らしいゲームですよどうぞお楽しみあれ!」


 独り言を最後の方は何故か丁寧な口調になりながらも、ぶつくさ呟いている間俺の指はひたすらトリガーを短く引いては離すループを繰り返していた。


 既に2回の再装填を挟んでいるゴブリンの量も目に見えて減ってきてはいたがそれでも6割近くのゴブリンが負傷して地面を這うこともなく前進し続けている。


 当然だがこの世界はゲームでも夢でもない、俺がやっていたゲームのようにショック死しそうな程の痛みがこないわけでも軽減されることもなければましてや欠損した四肢が僅か数十分の間にニョキニョキとイモリのように生えてくるわけでもないだろう。


 そういうことが出来るポーションやら魔法やらは多分この世界には存在するのだろうだがそれをゴブリン達が持っているとは思えないし思いたくない。


 とは言っても地球にも四肢は生えてこないまでも痛みを軽減するポーションは存在する。


 誰でも簡単にお医者さんごっこをする事が出来るモルヒネシレットなるものが第二次世界大戦のアメリカには既に存在していた。


 そんな痛みと同居生活を送っているような兵士達とっての魔法のポーションだが痛みも怪我もしていないのに使おうとする輩が出てきてしまうのが難点である。


 そんな現実逃避をしているが既に有刺鉄線は越えられ今まさに生死を賭けた地獄のインベーダーゲームを興じているわけではあるが決して勝算がない訳では無い。


 星光に照らされた軽装ゴブリン達をよく見ればその半数程の軽装ゴブリン達はどこかしらの部位を欠損しているように見える。


 いくら目を凝らしても発砲炎で一瞬ぼんやりとしか見えないので腕が吹き飛んでいるとかひざ下から無くなっているという大まかな情報でしかないが連射速度で連合国軍を叩きのめしたMG42の成し得る技と言えるのかもしれない。



 そう誇らしげに思っていた矢先にこれまでゴブリンの進撃を阻み続けていたMG42が突如としてトリガーを引いてすらいないのに暴発した。

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