Mg42と緑の小悪魔
「お?あっち側ではもう戦闘が始まったのか?」
視界の端で一瞬光が見えた気がして振り返ると西側の方の空が断続的に光を放っている。
恐らく村の炎魔法か光魔法が使える人が魔法を使ったのだろう。
こちらにいまだゴブリンの姿がない事を考えればリークたちの誘導は今のところ成功しているということか、本音としてはこちらにゴブリンが来るのはお断り願いたいのだが流石にそういうわけにはいかない。あちら側が強固とみるや逆側を攻るとかの策をロードやモナルカが講じたなら否が応にもこちらに相当数のゴブリンが来るんだからな。あっち側の戦線崩壊さえなければこっちにどれだけのゴブリンが来ようとも俺が死守してみせる。
そう決意し俺は右側にあるT字型の大きなコッキングレバーを勢いよく引くと手を離す。
これから己の命と背後にある村を守る要になる銃に護る為の弾丸が装填される。
その音を境に俺は余計な事を考えるのをやめ、ただ1つの異変すら見逃すまいとひたすらに正面の森に注意を向ける。
背後では相変わらず光がちらちらと光っている。
だがそれを気にせず俺は目の前に広がる森で潜んでいる可能性があるゴブリンの影を目を皿のようにして探す。
数分も経たないうちに森の中で一瞬キラリと光るものを発見した。
はやる気持ちを抑えながら俺は近くにあった手頃な石を3つ程掴むとそれを纏めて先程反射光が見えた場所へ向けて投擲する。
さながらOOバックのように少し間隔を空け飛んでいく石はそのまま森の奥深くへと消えるかのかのように思えたがすぐに本来聞こえるはずのない硬質な音が響く。
だがそうなることは或る意味予想は出来ていただが確認しなければいけないことがあった。
「おい!そこにいるのは誰だ!村の人か?それともゴブリンか?何かしら名乗るなりしてくれ!」
突然石が飛んできたのにもかかわらず叫び声もあげない時点でまぁなんとなく分かるんだがびっくりして声が出せなかった可能性もある。たとえ奇襲の一撃を逃しても万一の事故は防がなくてはいけない。
油断なく機関銃の銃把を握ったまま動きがあるのを待つ。
そしてそれはすぐにやって来た。
突如として森の暗がりから大量のゴブリンが低い低木の生垣を突き破りこちらへと突き進んでくる。
次々と現れるゴールデンレトリバーほどの大きさを持ったゴブリンで目の前は歪な地形に見えてしまう。
その数は瞬く間に膨れ上がり見えるだけで50匹を超えていたさらに後方からは未だゴブリンが飛び出してきている恐らく100はくだらないだろうか。
「ビンゴ……だな現れたからには壊滅させる。ゴブリンが死ぬか俺が死ぬかのナイトメアパーティーか……一緒に踊るのがゴブリンじゃなくてケモ耳の女の子だったらなまぁ男の娘でもゴブリンより……いやそれ最早ナイトメアじゃなくないか?でそのオチが夢でした……か、うんナイトメアだ」
自分へのツッコミもほどほどに俺はトリガーを引き絞る。
コッキングレバーが前方へ進んだと思った瞬間目の前が白に塗りつぶされる。
闇夜に慣れた瞳孔を絶え間なく弾ける発射炎が強引に開かせる。
弾薬箱に入れていた750発の7.92×57mmモーゼル弾はコマ送りのような早さで消費され毎秒20発ものモーゼル弾を吐き出す『グロフスタスMG42』はマズル銃口から陽炎を立ち昇らせ沈黙した。
「やっぱり早いな!知ってたけど!20回はコイツに撃ち殺されたからな!最初は連射力高すぎてろくに防げなかった!」
叫びながらも俺は新しく召喚した弾薬箱からベルトの端を引っ張りだしMG42の機関部を開放する。
そうこうしている間にも運良く生き残った後続のゴブリンは平地の中程を越えようとしていただがそれよりも進む前に最前列のゴブリン達が一斉に躓き倒れた。
その後ろを走っていたゴブリンもゴブリンの体に躓く玉突き事故が起きている。
意外とこういうのでも効果があるんだなさすがは塹壕戦のお供だな。
感心する俺の目線の先には最初に転倒したゴブリンの列があった。
いやそれでは語弊がある、正確にはその足元とゴブリンの腹、胸の位置辺りで光る三本の線だ。
それは恐らく今は血が付いていることだろう。
「有刺鉄線……念の為設置しといたのが幸をなしたか、本物はループさせて設置するものなんだが時間があまり無かった上に人手もなかったからな三分トラッピングでただの線……だがゴブリン転ばせて足を傷つけるならこれが1番だろ、唯一通れそうな隙間もゴブリンがその身を呈して塞いでくれるようだしな」
転ばせるのは本来の使い方ではないが結局相手の進路を妨害すると言う意味では一緒、利用出来るものは利用しないと勝てる戦いも苦戦する羽目になるのだから。
MG42の再装填を終わらせた俺はこの絶好のタイミングを逃さず再度トリガーを引き絞る。




