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告げられる状況

 

村長の言葉が静まり返った部屋にむなしく響く

 皆一様に己の無力さに打ちひしがれ苦し気な表情で歯を食いしばり沈黙している。


「……だが儂はこの森が、この村が好きじゃ数々の国を旅した末にここに骨をうずめると決めた儂のような老いぼれはもう若い者についていき追い抜くことはできんじゃろう。ならばせめて儂は大陸に名をはせた者として他の者が同じような思いをすることのないようにモナルカと刺し違えるつもりじゃ」


 そう静かに言った村長の瞳に諦めや自棄は浮かんでいない。


 そこにあるのは若き頃を己の剣と魔法で切り拓いてきたプライドと何としてもゴブリンモナルカだけは倒しあわよくば全滅させると言う不屈の闘志だった。


 そして人間とは不思議なものである。


 ボタンを押すなと言われれば押したくなる。開けるなと言われれば開けたくなる。これをカリギュラ効果と言うようだが……とにかく絶望に染まりきった者たちの心に闘志という名の炎をともらせた。


「長老も残るなら俺も残って戦うぞ!」


「そうだそうだ!何がモナルカだ!ゴブリンごときに俺らの村を荒らされてたまるかよ!」


 先程まで絶望に染まっていた村人達は長老の意図しない鼓舞により次々に抗戦の意を言い始めた


 だが俺はとても同調することは出来なかった

 まだ確定していないとはいえゴブリン1000匹は相当な数だ。

 どんなに弱くても束になれば脅威になる。相手がそこそこの知能を持っているならなおさらだ。


「長老は……居りますか……!」


 ドタバタと走る音が聞こえ次いでドアが開け放たれる。


開け放たれた扉から倒れ込むようにして入ってきたのは若い男、恐らくこの男が村長を呼んだ者だろう。


「ここにおる。森の偵察が終わったようだな……どうじゃった」


 聞き返す村長だがおそらく聞かなくても彼の切羽詰まった表情から帰ってくる言葉が大体予想できているようで顔をこわばらせている。


「はい……東の森の丘にゴブリンモナルカがいました。」


 その場にいた人が覚悟とも落胆とも言えない表情をする。


 しかし偵察にでた彼の報告はそこで終わらず事態を更に絶望に追い込むことになる。


「それから……そ、その……南の森に……ゴブリン、ロ、ロードが4匹……か、確認されました……」


 顔を真っ青にした偵察の男性が声を震わせ絶望的な情報を報告する。


「なんじゃと!? ゴブリンロードが4匹も確認されたのか!?」


 村長は血相を変えて男性にぶつかりそうなほどの勢いで詰め寄った。


「は、はい! 私が直接見たわけではないですが確かに北の森に偵察にでた者が発見しています!」


 村長の気迫に気圧された彼は疲れているのも忘れたかのように背筋を伸ばして肯定する。


「なんと……モナルカにとどまらずロードまでじゃと……モナルカ1匹でも危機的状況に陥るというのにロードが4匹も……すまない、報告ご苦労じゃった。どうなるかはまだ決まっておらんのでな、家で疲れを癒してほしい」


「は、はい!失礼しました」


 偵察の男性が出ていったのを見届けた村長は深いため息をつくと再び絶望に染まり静まり返った部屋を見回す。


「皆の者、先の通りモナルカの存在が確認されたことに加えてロードが4匹、発見された」


 絶望的な報告を聞いて1トーン落ちた声で内容を反復した村長は次いでいった。


「モナルカ、そしてロード4匹が確認された以上できる限り早く判断を下し行動せねばならない。ゆえに早急に今後の方針を決めようと思う。抗戦か村を捨てるか……はたまた他のなにかいい案か」


 その言葉を聞いた者たちは我に返り次々に意見を述べる。


「やはり抗戦だ! むざむざゴブリンに土地を奪われてたまるか!」


「いやモナルカの配下だけでも1000匹、ロード1匹につき250匹……モナルカ1匹分の戦力と同等なんだぞ! 悔しいがもう……村を捨てるしかないだろ!」


「そんなこと言わないでよ!思い出のあるこの村を捨てれないわ! 他の村やあとは……ギルドに依頼を出すのはどうかしら? そうすれば戦力が増えるわ。そうすれば村を守れるかもしれないのよ!」


「それこそ愚策だろう! 他の村に人をよこしてもらうよう言ったところでロード4匹、モナルカ1匹だぞ! 皆殺しにされるのはわかりきっている。ギルドへはもしかしたら来るかもしれないが時間がかかりすぎる!」


「じゃあ黙ってこの村を捨てないとなの!? そこまでここに愛着はないの!?」


「そういうわけじゃない! ただその案はあまりにも現実的じゃないと言っているんだ!」


 案が浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返す。


 おいおい、所によっては殴り掛かりそうなほど激化しまっているがこれ大丈夫なのか!?


「村の将来を真剣に考えてくれるのはありがたい、大いに結構! じゃがそれでここで無駄な仲間割れを起こし体力を消耗してどうするのじゃ! そうまでして得る利点を声高らかに話せると言う者は出てくるのじゃ!」


 部屋全体がビリビリと震えるような錯覚を覚えるほどの怒号に村人たちは無論、レティシア、俺も体をビックッと跳ね上がらせた。

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