ミーリャ
「お兄ちゃんの荷物ってこれ?」
地面に置いた薬莢を不思議そうにながめているミーリャは俺に尋ねてきた。
「そうだよ。ただ中に悪いお化けが入ってるから覗いちゃだめだよ」
とても中身など見せれない。頭にもいくつか弾丸を撃ちこんで脳漿やら血やらで慣れてない人が見れば吐きそうな有様になっているからとても小さな子供に見せれるものではない。適当なことを言ってはぐらかそう………
と思ったのだが
「お兄ちゃん……その悪いお化けをおじいちゃんのところに持っていくの?おじいちゃんをミーリャから遠い所に連れていくつもりなの?お兄ちゃん悪い人なの?ねぇ答えて!?」
ミーリャはポロポロ涙をこぼし始めた。
「あ、ごめんそんなつもりじゃ……」
よく考えれば当然の事だ。ミーリャと接しているときの村長はかつて大陸に名をはせた凄腕の冒険者で今も舐めきった挑戦者達をその実力で半殺しにしている化け物ではなく父親代わりとして面倒を見ている孫に超のつく程甘々な孫バカおじいちゃんだ。
そんなおじいちゃんに悪いお化けが入っているから自分には見せられないと初めて会った人それも村の人達を苦しめてきた人族に言われればおじいちゃんを殺しに来たのだと勘違いしても何ら不思議ではない。
「じゃあ、おじいちゃんにその悪いお化けを見せてどうするの?」
しゃくり上げながらもミーリャが問うてくる。
ここで下手な言い訳をしても逆効果だろう。
この子は現代っ子よりも遥かに聡明だ。普通だったら怖いお化けが入っていると言っただけで逃げ出すだろう。しかしこの子はそれを聴いても逃げ出さず、あまつさえ自分の父親代わりの村長の事を心配した。しっかり物事を考えているこの子なら真実を話しても理解し得るかもしれない。
覚悟を決めて真実を明かすことを決意する。
「実は……この中には僕がさっき罠の確認に行った時に襲ってきた魔物が入っているんだ。もちろん僕が襲ってきたときに倒してるから死んでるよ。ただ僕は記憶喪失でこれが村を脅かすほど危険な魔物かもわからないんだ。だからおじいちゃんに見せて教えてもらおうと思ってる。もし危険な魔物なら村に危害が加わる前に倒しにいかないといけないからね」
細かいところははっしょったりしているが、記憶喪失以外はすべて真実だ。
「本当にお兄ちゃんはおじいちゃんを遠くに連れていくために来たわけじゃないんだよね?」
小さいながら俺の発言に偽りがないか真剣に考えているミーリャが確認する。
「もちろん、命にかけて誓うよ」
即座にそう答えた。
ミーリャはそれでもしばらく疑い考え込んでいたが納得できたのだろう1つ頷いた。
「なら安心。ほらおじいちゃんに早くそれ見せてあげて多分知ってると思う」
屈託なく微笑むミーリャの笑顔は曇り暗くなっている空の下にいるにも関わらずそこだけ陽が射したかのように輝いていて曇りがないように見えた。
「ああ」
薬莢を抱え村長の家に戻ろうとして振り返るとそこにはまだミーリャがポツンと立っていた。
「遊びに行かないの?村に子供たちはいると思うけど」
「うん……村の友達と遊んでくる」
黙って立っていたミーリャは短く答えると村の方に向かって歩き出した。何となくミーリャの後ろ姿が悲しそうに見えたがともかくゴブリンモドキの件を村長に伝えなければと俺は後ろ髪を引かれる心地になりながらも歩みを進めた。




