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トーラスジャッジ

村長の家に着いたときには急いで走ったにもかかわらず日は既に中天を越えていた。


「村長!いますか!?」


扉を叩いたが反応がない。村の方から全ての鐘の中で最も低く響いて聴こえるサラマンダーの鐘が鳴っているだけだ。


「っ!村長、開けますよ!」


村長に何かあったのかと不安になり扉を開ける。


俺の家よりも大きい村長の家はガランとしていて人の気配が薄いどこにいるのかも全然わからない。

だがよく耳を澄ませると右奥の部屋からなにやら声がする。


村長に何かあったのか!?


俺はゴブリンモドキが入った薬莢をその場に置き小型の散弾である410ゲージを撃ち出す珍しいリボルバートーラスジャッジを召喚しながら右奥の扉に向かって走り出す。


「村長!!」


バーンとドアを破壊する勢いで開け放ち中に飛び込みトーラスジャッジを構える。


「よーしよし♪いい子いい子♪」


開け放ったドアの先に広がっていたのは村長が無残に殺されているものではなく小さな女の子と村長がたわむれるこの世でこれ以上平和なものは少ないと思えるほど平和なものだった。


「……」


心配した俺が間違っていた。いやこれが一番良い光景ではあるんだが村長、ならせめて返事してほしい。無駄な心配をしちゃうからこっちはてっきり村長があのゴブモドに殺されかけてるのかとわざわざ近接戦闘を考えてトーラスジャッジを召喚してるんだけど。


そんな杞憂で終わって良かったと言う感情と早く返事してくれよと言う半ば的外れな逆ギレを混ぜこぜにしたままの状態で俺は村長に声をかけた。


「……村長、村長!」


やっと俺の声が聞こえたのかビクッと震えて村長が振り向いた。


「どうしたのかね?龍之介そんな複雑な感情を混ぜこぜにしたような表情で」


いやいや貴方のせいですよ!それは兎も角大事な用があります!


と言葉にする前に


「ねえねえ、この人誰ぇ?耳とか尻尾がついてないよー それに変な棒を待ってるー」


聞く人を和ませるような幼い、可愛らしい声が響いた。


「こんにちは。俺……僕は二日前ぐらいかな?に来た龍之介っていう人だよ。耳とか尻尾がないのは人族だからだね」


トーラスジャッジを背後に隠し違和感のないように消しながら努めて笑顔で話しかけた……つもりだったがその子は村長の後ろに隠れてしまう。


「すまないの、孫が」


孫ぉぉぉぉぉぉ!?


と叫びそうになるのを抑える。


「孫って村長、150歳ですよね?村長の子供たちって全員長命なんですか?」


まさかとは思いながらも聞いてしまう。


「ハハハ。そこまで長生きしてくれれば儂も気楽なのじゃがな。この子は曾曾曾曾曾孫のミーリャだ。とは言っても儂の曾曾曾曾孫である父親はこの子が産まれてすぐにゴブリンに殺されてるから儂が父親代わりじゃがな……」


物憂げに瞳を伏せる村長からはいつもの威厳が煙に巻かれるように失われている。


「ほらミーリャ、龍之介に挨拶をしなさい。龍之介は人族じゃがそれほどまで恐れる必要はない人族だからの怖がらなくていい」


村長がミーリャを前に出そうとするがミーリャは恥ずかしがっているのかそれとも自分とほとんど同じだが少し違う人間。初めて見るだろう人族を怪しんでか村長の陰に隠れて出てこようとしない。


「怖いと思うなら出てこなくても良いよ。むしろそれだけの警戒心を持っといたほうが良い。危険な事に1番用心深く、対処を模索、極力離れられることが出来る人が結局は生き残れる。」


口ではそう言ったが心の中では悔しがっていた。


そこまで愛嬌のある顔してないのか?子供、好きなんだけどなぁ……


「ところで村長今回来たのは理由があったのですが」


沈んだ心を立て直し話を切り出す、俺はさっき村長が言った言葉の最後のほうに聞き逃せない単語を聞いた気がする。


「村長、さっき()()()()って言いましたか?」


「そうだが何かあったのかの?まさか……!」


村長の顔に明らかに焦燥の色が浮かびだす。


「まだわかりませんが……とりあえず現物があるので持ってきます」


まだ断定できないがゆえに俺は首を横に振った。


「わかった。ミーリャ、儂はこのお兄さんと話がある。お兄さんも荷物を外にとりに行きたいと言っておる事だ、案内した後外で遊んでおってくれ」


了承した村長も現物ということでミーリャを自然に外に出すつもりなのだろう。


本当は来た道くらい分かるがここは村長の提案に乗り案内してもらおう。ミーリャと言う孫の為にも。


「よろしくミーリャ……ちゃんと読んだ方が良いのかな」


それでもミーリャは村長の陰から出てこようとしない。


「ミーリャ、お兄さんは先も言った通り別に怖い人じゃない。安心して良いから案内してあげなさい」

村長の一言で渋々と陰から出てくる。


「ついて来て。……お兄ちゃん」


おずおずと手を差し出してくる。


「ありがとう」


小さな子供の手を握るのはいつぶりだろうか。俺には兄弟なんていなかったから親戚の子供が産まれて、その報告に自宅に訪ねて来たときぐらい……それも両親が亡くなるまでいや()()()()前の話だ。


少し悲しく思いながらそっと優しくミーリャの手を握る。体内で作られるエネルギー量の影響で大人の体温よりも高くなってしまう熱が強く握れば儚く壊れてしまう繊細な硝子細工のような手から伝わってくる。


そんな幼子らしい柔らかな手に引かれるままに外に出た。


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