解体
レティシアはすでに皮が剥がれたカヌレ90キロはある体を片手で転がすと腹側を上に向け手に持っていた刃渡り25センチほどのやや大型の肉厚なナイフを逆手に持って何の躊躇もなく勢い良く腹に突き立てた。
「!?」
俺が絶句している間にレティシアは刃がしっかりとカヌレに突き立ったかを確認するためか細かく動かすとカヌレの腹を一息に切り裂く。瞬間レティシアは袖で顔を覆う、下腹部からレティシアの腕とナイフの刃渡りが及ぶ長さまで切り裂かれた腹から大量の血と一緒に大腸や胃などの内臓がスライムのような水に多めに片栗粉を混ぜたときのような、慣れていない人が人が見たら吐きそうな速度、動きで溢れ出てきた。
「……」
ヤバい、若干吐き気がしてきた。そいえばこんな風に吐き気を催したものが……ああ、あれだ思い出したあの時だ死ぬ前にやったあのゲームであるときこっちのチームに負けて捕まったを女プレイヤーが偶然知り合ったフレンド(もちろん男)に強姦された挙げ句、面白半分で最大まで遅延された手榴弾を口に数十個捩じ込まれて心理的ショックで放心したまま爆発四散したときだ。あれよりはマシだがキツイ。
余談だがそいつは後で俺が死なないギリギリのヒットポイントを維持して拷問した後、偶然アイテムストレージにあった鉄の処女を使って処刑した。
『俺だったら笑って許可してくれるだろうと思ってやりました』だぁ?まったくアホにも程がある敵とは言え捕まって既に抵抗も出来なくなったプレイヤーを辱しめるなんて行為を俺が許すわけがないってのに。もちろんそれ以外の状況でも許さないが……何故かあのゲームにはリアリティーのためか性交が出来るようになっていて基本非戦闘地域では相手の承諾なしには出来ないがフィールドはその限りではなくさらにアバターの性別はリアルと必ず同じになると言うことも合間って捕まった女プレイヤーがフィールドで強姦されたりすることが多発していたため多くの女プレイヤー達はゲームの中とはいえ無理やり犯されるのを嫌い自決用にデザートイーグルなんかの大口径拳銃を持たざるおえなくなった。そこで主に女性プレイヤー達が連携して強姦防止をしようとなったのだがそんな殺伐としたゲームをやっている女性プレイヤーが少ないうえに報復を恐れて結局あまり集まらなかった。
そのため以後、既にトッププレイヤーだった俺は独自に有志を集めて発見しだい即抹殺を心がけてフィールドを駆け回ることになったのは今となっては笑えない話だ。まぁその後からは発生件数も下がり平和になったから良いことにしよう。
「大丈夫か?龍之介」
思考停止に陥り過去の事を思い出していた俺があまりに静かすぎて心配になったのかレティシアが振り返った。
その顔はまた違う美しさを持っていた。くるっと振り向いたレティシアの長い銀髪にはカヌレを切り裂いたときに飛び散った返り血で斑模様を描き、覆いきれなかった顔にも血が付いて凄みが出ていた。
「あ、あぁ大丈夫……まだ少し慣れていないだけだから……」
前世は猟友会とかに入っているわけでもないただの日本生まれ日本育ちの社畜ゲーマーだ。動物が死んでいるのを見るのはせいぜい猫が轢かれているときだけで今まで生きていた動物が肉になるところ見ることも知ることもなくスーパーで何気なく買って食べていたツケがこんな感じで回ってきたのかもしれない。とはいってもすでにこっちにきてからウサギ5頭に鹿一頭それ以外にも鳥やらを自らの手で殺して食べていたわけだがそれでもまだ抵抗感が残る。慣れるまでには少し時間がかかそうだ。
「ふぅ……まぁこんなとこか、龍之介ちょっと待っていてくれ」
レティシアはナイフを地面に置くとずりずりと中身がなくなり軽くなったカヌレを引っ張り場所を開けると
レティシアは一塊になっている内臓の中に躊躇なく手を突っ込み何かを探していた。
再度俺が絶句している間に目的のものが見つかったのか内臓の塊から手を引き抜くとてくてくと川に向かっていった。残された俺はレティシアが探し物を見つけるために探った結果ちょっとだけ無惨な姿になった内臓をチラッと眺めた。
胃からは恐らくカヌレが死ぬ直前に食べたものだろうかタケノコのような中途半端に消化されたものが2、3個、損傷して裂けた部分から胃液ごとドロリと流れだし、大腸や小腸も所々裂け自重と重力の今回は不快でしかないいらないコンビネーションで内容物この場合排泄物に近い液状の物をジュクジュク吐き出していた。
「何を探していたんだ……てか解体するの早くないか」
レティシアが担当していたカヌレはすでに綺麗に皮と内臓(こっちは物凄く綺麗)が取り除かれ、別々に並べられていた。
なのになんで俺のときはここまでぐちゃぐちゃにされたのか、何か探していたしそのせいでああなった……と信じたい
「やっぱり解体歴一週間程度じゃ早さも質も負けてしまうかこっちが担当したのは一頭だけだったんだけどな……落ち込んでいても仕方ないか、やれることをやろう!」