魔力を衝撃波に変えれるのは良いことなのか?
「それでお願いします」
特になにか思案することも無く即決した。
「龍之介よ。そんな早く決めていいのかの?トレース式以外にもいえるが長所と短所があるそのあたりについてなにか聞きたい事などないのか?」
ここまで早く決めるのがあまりにも驚きだったのか、村長は困惑気味である。
それもそうか一生もので攻撃手段としても有用な魔法でその扱い方について長考しない人のほうがおかしいだが
「いいんです、この機会を逃したら次、また他のを教えてくれる人に出会えるまでどれくらいかかるか……そもそも会えるかどうかももわかりませんし何より無詠唱でできるのは何よりの利点です」
一刻でも早く魔法を使いたいと思ったからというのも少し……いや半分ほどはあったが……
「そうか……ごほん!では教えるとしようかの、とは言ってもトレース式では魔法書に描かれている魔法陣を暗記するだけじゃが……待っておれ無魔法の魔法が描かれた羊皮紙をもってくるのでな」
そう言うと村長は家に戻っていった。
当の俺はガッツポーズをしそうになっていた。
よっしゃ!これでついに魔法が使える!銃も当然良いけどやっぱり異世界なら魔法を使いたいだってここほ異世界、なら魔法でドッカンバッカンやらないと損!
「本当に良いのか? トレース式はリュウノスケが考えているよりも相当難しいと思うぞ」
心の中では大興奮の俺に対しレティシアが心配そうに囁く。
「そんなに難しいの?」
興奮を抑えきれずやや高くなった声で聞き返す。
「例えるなら……例えれるものが見つからないな、とにかく難しい、まぁ見てみればわかる」
何を例えに出そうか考え込んでいたレティシアは思い付かなかったようで曖昧な苦笑いを浮かべるだけだった。
「例えるものが見つからないって……」
どうしよう、これすっごいやばいのかな、今さらだけど嫌な予感がする。
さっきまで上がっていたテンションがどんどん下がり一気に不安になってくる。
「待たせたな、無魔法を使う者なんて稀じゃから、見つけるのに苦労した」
ガチャッっと音がして村長が家から出てきた。
「ほれ、これが無魔法の魔法書じゃ」
手渡されたのはA4用紙ほどの大きさの羊皮紙1枚、たったそれだけだった。
「え?これだけ?他にはないんですか?」
思い描いていたものと全然違うぞ、想像してたのは広辞苑に引けをとらない分厚さの本に魔方陣が大量に描かれているのだと思っていたんだが……いくらなんでも羊皮紙1枚分って薄すぎないか。はっ!まさか無魔法は扱うのが難しすぎて初心者が扱えそうなのはこれだけだとか、そういうやつなのか!?なら良いだろうすぐに全て扱えるようになってやる!
「そうだ龍之介がまず覚えるのは……と言ってもこれだけだが『インパクト』だ」
少しの間思考が停止した、テンションをあげてみてはいたがこのあまりの薄さと無魔法から薄々予測していたことではあるがやはり扱いが難しいとかそんなのじゃなかった。なんせ無魔法は魔力を衝撃波に変換するものだ、そこまでレパートリーは多くないだろう、だがいくらなんでも使える魔法の種類1個はないのではないか?
「えっと……もっとないんですか?」
僅かな、本当に僅かな、何かの間違いであってほしいと言う望みにかけて村長に聞き返してみる。
「これだけだ」
噓……だろ……断言されてしまった。
「役に立つんですか」
使えるのが完璧に1つだけになってしまった俺はつい聞いてしまう。
お願いだ、せめて汎用性が高くて戦闘の役に立つものであってくれ。
「はっきり言って……役に立つ」
思いっきり間があいてますがそれはどういう事でしょうか?
「役に立つことは立つのだじゃが、他と違って距離がな……」
なるほど近距離しか出来ないからあまり使いどころがないのか。
「それってどれぐらいの範囲で出せるのですか?例えば目視出来る範囲ならどこでもとかですけど」
これが一番気になるこれで手の周り限定ですみたいになったら使い道が一気に消え俺が使うことができる魔法はゴミになってしまう。
「わしは使えないから厳密には言えないが知り合いから聞いた限りじゃと手が伸ばせるぐらいの距離ならどこでもらしい、他に質問はあるかの?」
手が伸ばせる範囲だと大体1m半位だろうかその程度なら問題ない、トレース式なら相手を組伏せた状態から気づかれることなくがら空きの鳩尾に打撃を加えれる。つまりまだ利用価値はある!
「ありません」
1通り現時点で思い付いている質問は全部言った。
「うむ、ではその魔法書は君に貸しておくのでな、後は暗記あるのみじゃ、頑張るのじゃぞ」
ヒラヒラと手を振って帰っていった。
「さてと家に帰るかな、あレティシア!村長になにか用件があったんじゃなかったっけ?良いのか行かなくて」
自分の事ばっかり考えてすっかりレティシアの用事をすっかり忘れてしまっていた。
「ごめん、忘れてしまっていて、何かお詫びをしたいんだけどな……」
罪悪感に押し潰されそうになっていたときふと先日罠を仕掛けていたことを思い出した。
「そうだ、昨日罠を仕掛けたんだった、もし獲物がいたら全てレティシアにあげるよ」
お詫びになるものと言ったらそれぐらいしかないそれに食料はどれだけあっても困らないだろう。
「良いんだ、私の用事はそこまで急用ではない、龍之介がそこまでする必要もないぞ、……ただそこまで責任を感じてるなら今度なにかあったときに付き合ってくれればそれで良い」
しかしレティシアは首を横に振るばかりだった。
「でも……」
「なんだ?付き合ってくれないのか?私の用事に付き合うことは捕れてるかどうかもわからない食料よりも低いと言うのか?」
まったくの正論を言われてぐうの音も出ない。
「確かにそうだね……わかった、レティシアがそれで良いなら俺がとやかく言うことはないな」
結局、レティシアに押しきられてしまった。
「わかった、でも罠にかかっているか確認したいから付き合ってくれるかな?獲物によってはレティシアの力を借りないといけないかもしれない」
転生してから1週間は経っているとはいえ、まだまだわからないことだらけだ、この地域の生き物について知っている人がいないと何が起こるかわかったものじゃない。
そう思い俺はレティシアに頼んだ。
「リュウノスケのお願いだからなもちろん聞かせてもらうぞ。その罠も少し気になるしな。ただ……」
そこでレティシアは言いにくそうに口ごもった。
「ただ?」
言いにくそうにしているので俺は聞き返して先を促した。
「その前に服を着替えさせてくれないか?」
もじもじ恥ずかしそうにレティシアは言った。
「は?」