第一章 始まりの時期(2)
家に帰るとまずテレビゲームの電源を入れる。
起動するまでの時間で制服からパジャマに着替え、飲み物とお菓子を机に並べる。
準備ができた頃テレビにはゲームソフトの選択画面が表示されていた。
俺は一番左に表示されてるゲームを選択した。
このゲームはタコのアバターが4人1チームで銃やバケツを使い、相手にインクをかけて倒したり、地面や壁を塗ってナワバリ争いをしたりするゲームで俺が特に力を入れてやっているゲームだ。
「ルールアサリか、まあ肩慣らしにはいいか」
あまり好きなルールではないが遊ぶ分には楽しいルールだ。
俺はこの後夜ご飯までゲームをした。
その後、ご飯を食べたり、風呂に入り、暇になるとまたゲームして夜の自由な時間を過ごしていた。
ゲームの試合が終わり、ふと部屋の隅にかけてある時計を見た。
「やっべ、もう集合時間すぎてるじゃん」
時計は11時を少しすぎていた。
急いでスマホで通話アプリ起動すると3人が通話中になっていた。
「すいません、遅れました。」
俺が申し訳なさそうにいうと
「あれ、これはこれはサッチじゃないか、もう11時を5分も過ぎちゃってるけどもしかして舐めてる。」
「いや、舐めてないです。」
最初に俺反応したのはゲーム仲間のメタリンさんだ。
メタリンさんは大学院1年で明るく陽気な性格で常に周りの人を弄っている。
さっきの発言もちょっとしたジョークだ。
「お前やばっ笑、もっと年上を敬えよ笑」
こいつもゲーム仲間のソフィアだ。
周りには少ない同期で一番仲がいい。
ただ、ちょっとネットモラルが欠落しているところがある。
「いや、お前が1番バカにしてるよ」
そう言ってツッコミを入れてきたのが最後のゲーム仲間のマイルさん。
弄りもツッコミもできるが相手の嫌がるところまでは踏み込まず、その辺のラインしっかりと引いて相手と接している。
このメンバーの中で一番大人っぽいと俺は個人的に思っている。
いつも俺を含めたこの4人で夜の11時から2時間ほどゲームをやるのが日課となっている。
「おい、サッチ部屋立てたか。」
「はい、立ててますよ。」
「なんで立ってるんだよ。」
傍から見たらよく分からないやりとりをしているがこれには内輪では楽しめるしっかりと起源があって、2年前ぐらいに4人でチームを組む際、誰が部屋を立てるかという話になってそれまで全然部屋を立てていなかった俺に「11時になったら部屋を立てるのがお前の仕事だ!」みたいな感じで部屋立て担当に任命された。
最初の頃は部屋を立て忘れたりして、メタリンさんが「おいおい早く立てろよ、まあ俺まだゲーム起動すらしてないんですけどね笑」みたいな感じでふざけて楽しんでいたが、そのうち俺も習慣で時間になったら部屋を立てるようになって、それからは「なんで部屋が立ってるんだよ、僕まだゲーム起動ずらしてないんだが」と、どんどんバージョンが変わっていった。
これがいつものじゃれ合いみたいなものであり、こんな雰囲気を身内で楽しんでいた。
みんなでゲームをするといってもいつもガチガチにやる訳ではなく、みんなで雑談しながらついでにゲームをするみたいな感じで普段は楽しくゲームをしている。
「そういえばなんですけど、今日学校で後ろの席の女の子に話しかけられたんですよ」
俺が今日学校であった出来事を話し始めると3人とも遂にサッチも友達ができるのか。とからかうように言ってくる。
この3人との付き合いは長く、一番長いメタリンさんで3年半。
一番短いマイルさんでも、もう2年の付き合いになる。
お互いがどんな性格だとか、普段どんなだとかはだいたい把握している。
もちろん、俺が学校で友達もいないぼっちだということもみんな知っている。
特に年上のメタリンさんとマイルさんはそんな俺の事を心配をしてくれていて、友達の作り方みたいなのも教えてくれる。
実際に試したことなどはないが本当にありがたい話だ。
「で、話しかけられて連絡先でも交換したんか」
「いや、話しかけられただけです。」
俺が特にそれ以上のことはなかったと伝えるとみんなは呆れたようにため息をついた。
「新しい学年で今、友達作らんかったらもっと友達作るの難しくなるぞ。早く友達作れ」
そう言われても既に2年間のイメージみたいものがあるからこれまで話したことすらないやつがいきなり話しかけてきたりしたら絶対変に思うよな……
正直もう高校で友達作りは無理だと諦めていることは隠して、頑張ります。と一言言ってその話題は終わった。
この後ワイワイと楽しくゲームをして、1時になると明日みんな学校があるからと解散した。
解散後ゲーム中に飲んでいた飲み物のコップやお菓子を片付けて俺も寝床についた。
布団を被り、目を瞑りながら考え事を始めた。
明日は勇気出してクラスの誰かに話しかけよう。とか、最後の試合、左じゃなくて右から行ったら勝ってたかもな。などを想像する。
目を瞑りしばらくすると俺は深い眠りについていた。