第拾壱話 再戦
今回も読んでくださりありがとうございます。
あっという間に一月が終わってしまいました。時間って早いですね。
魔法大学に入学して1年が経った。僕は大学2年になった。
魔法大学には大体慣れ、友達と言える存在も少ないが出来た。
そんな充実した大学生活に不穏な気配が…
「よう、ミコト」
「ん?誰?」
「俺だよ、クルストリファーだよ」
「ああ、クルスか。で、なんか用?」
「いや、別に。お前って将来どうすんのかな~って」
「う~ん、特に考えてもないかな」
「嘘だろ~、魔王様のお近づきなのに?」
「お近づきでもないって、ただの友達だよ」
「友達はやべ~だろ」
「あっ、俺こっちだから」
「んじゃ」
僕らがそう言って別れた時の出来事だった。
「また、あったわね。ミコトちゃん」クリスがいた方向から聞き覚えのある声が聞こえた。
「うっ、何しやが――」クリスの叫び声が聞こえた。それとほぼ同時にクリスの首元からは赤い血が流れ始めた。そして、一言こう付け加えた。「これ以上うるさくしないでくれる?」
「それで、魑魅。貴様、何しに来た」
「さあ、始めましょう。殺し合いを」
「バレ、ここにいる?」
「はい、予定通り」
「あら、生きてたのね」
「ええ、お陰様で。しかし、これでも方術師として認められた身。ここであなたを殺す」
「そうかしらね」そう言うと魑魅は腕を数本伸ばし鋭利な爪を刺そうとした。
ただ、僕はこれを防ぐのが役割。となると、妖術ではじくのが一番安全。
ならば、妖術発動【黒炎王】。
「ちっ、毎度毎度厄介ね。ただ、私も仕事なものでね。君達には死んでもらう」
「仕事?いやそんなことよりスキル発動《位相空間》強制召喚[魑魅]!」
「めんどくさいスキルねっ!」そう言うと壁やら床やらをひたすらに殴っていたがここの壁と床なんかは根源魔法を三回は耐えれる。つまりは、こいつの攻撃は一切通用しない。
「くそっ!くそっ!何故壊れない!」
「準備は整いました。さてと、方術発動【多重靈郷祓反転】」
「なっ、貴様何処で――」魑魅ははじけ飛ぶようにして消えた。
「終わりましたね」
「これで終わりだと良いんだけど」
「というと?」
「ンダボレアの方術を防いでる化け物だぞ」
「確かに、それはそうとそこに倒れている方は?」
「そういや、治癒魔法はかけとこ【ハイルミッテル】」
「にしてもバレ、腕上げた?」
「そうですか、実は御主人様がこちらにいらしている時にエゴノミクストさんのところに行って軽く稽古をつけてもらっていたんです」
「へぇ~、流石だな」
その頃、魑魅は…
「ふぅ、危なかったわ」
「戻ったか」
「ええ、教祖代行、いやD」
「その名前で呼ばれるのはいささか不愉快だね。まあ良い。彼らの実力は?」
「使い魔は私を屠るのに十分も掛からないと思うわ」
「イグナスとか言う奴は?」
「未知数、としか」
「しかし、ミコト=イグナス。厄介な相手だ」
「ええ、特に私には分が悪いわ」
「だろうな、特に使い魔の方は」
「さてと、あれを連れていくの?」
「ああ、これには奴らとて。フフッ」
「報酬は?」
「貴様の寝床に置いといてやった」
「じゃっ、D」
「ああ、また後で」
魑魅はそう言うと転移魔法で何処かへ行った。
「やれやれ、魔族にも聖霊にも人間にも成れないなり損ないは寝床に帰ったか」
「教祖代行、例のあれが孵りそうです」
「しつけは?」
「まだです」
「私が手を下そうか」
「D、貴方は少しなめすぎよ。彼らを、古龍の王ですら怖れた彼らを」
「それでも、貴方は彼に執着する。何故でしょうね。また今度聞きましょ」
暗闇で怪しげな笑みを浮かべつつ魑魅は口にする。そして、近くに山になっている肉を貪り食う。
魑魅到来から三日ほど経ったある日
「ミコト様、緊急事態でございます」
「フォールヴァーンさん!それで、緊急事態とは?」
「魔法師教会が……」
「嘘でしょ~、三日前に魑魅と戦った後だよ」
「ま、まあ、大変ですね。それで、魔王様がそなたをお呼びするように、と」
「あー、めんどくさいな~。まあ、行くけど」
「ありがとうございます。では、前と同じように」
「ちっちっちっ、前の僕とはちがうのだよ。ついに、潜影を獲得したのだよ」
「では、さっさと潜ってください」
「はーい」
潜影は文字通り影に潜る魔法だ。ついでに言うと影の一部を切り取って隠密行動、みたいなこともできる。ただ、相手の影を借りるので影がないとできないのが唯一の難点。それでも日向では行動できるので切り取りさえすれば後はこっちのものという言う、もの凄くご都合主義な魔法だ。
「着きましたよ」
「よいしょっと、この魔法出るときが大変なんだよね」
「それなら、跳躍使えば良いじゃないですか」
「そんなもんかな?」
「御主人様、一つ申し上げますと私も跳躍の併用で出てますよ」
「そうなんだ、てっきりバレの素のジャンプ力かと思ってた」
「無理ですよ、流石に。水中なら別ですが」
「どゆこと?」
「私の種族名はウォータードラゴンですよ」
「ん?でも、ドラゴ何だっけ?」
「ドラゴエレボスです」
「そうそう、は山になってたけど?」
「まず、自然と同化する場所は決まってないんですよ。なのでファイヤドラゴンとかが湖の岩になったりもしますよ」
「まーじか」
「話は終わりましたか?」
「ごめんなさい、でンダボレアが呼んでたんだっけ?」
「そうなのだ」
「ここまで来てたんだ」
「暇だったから~」
「いや、仮にも魔王だろお前」
「案外、やることがないのだー。さてと、本題に入ろうか」
「おう」
「実はこっちの国境付近に魔法師教会の軍勢が来ていてな。数は聞いた話によると二個師団ほどそれも全員こちらの情報にはない聖典なのだ」
「情報にない聖典?」
「ああ、潜入して入手した情報には無かった」
「つまり、敵の実力は未知数ってとこか。まあ、お客さん方を出迎えないとしつれいにあたらない?」
「それもそうか、ではフォールヴァーンよ、軍に出撃命令を第三軍団だ。」
「はっ、第三軍団でございますね。了解しました」
「では、ミコト行くのだ」
「はいはい」
まあ、安定の飛行魔法で現場まで行く。
「あれだな、ん~暗…なんて読むのだ?」
「暗澹聖典。すごい不吉な聖典だな」
「?」
「いや、確か暗澹って見通しが立たない、とか希望を持てない、みたいな意味だったと思うから」
「ほ~」
「ほ~、じゃないでしょ」
「さてと、でっかいの一発かまそうか」
「ちょっと待ってね。スキル《位相空間》強制召喚[暗澹聖典]」
「何なのだ?」
「今のはヴォンエリさんから教わったスキル」
「まあ、感謝するぞミコト。では、この前の即興魔法を組み替えてちゃんとした魔法にした【グラエリバルス・ヘルアギト・改】」
「なんか進化してる!?」
「へっへーんどうだ、これが魔王の力なのだ」
「半分くらい塵になってる件」
「威力調整間違ったか~。理論上はこの聖典を全滅できる程度には威力があると思ったのだが」
「いや、おかしいから。まあ、袋のねずみになってるから。というかあれ何魔法に匹敵する?」
「多分、宇宙魔法五・六回分?」
「それ、結局源流魔法二回分じゃん」ん?二回分?あのスキルの強度は源流魔法三回、その内二回。それと合わせて中で空間魔法を百近く打ってる。つまり宇宙魔法一回分。あと、二回でアレは壊れる。なら、今の間に全員つぶさないと。
「ミコト、位相空間が崩壊し始めてるぞ」
「嘘!?予定より早いな。まあ、落とし前はつけないとだし【フォールダウン】。ん?おかしいな何であいつら死んでないの?ついでに反撃までしてるし」
「あいつら、障壁に衝撃緩和を付けてるのだ」
「それも一人で」
「化け物とはこの事だろうな」
「ああ、ついでにさっきからよけないと死ぬレベルの魔法を連発してくるあたり前の奴らとはレベルが違うのだ」
「ああ、っと【魔法障壁】」
「大丈夫か」
「取りあえず障壁でカバー出来たから」
「ミコト、かなりの大技行くのだ」
「はいはい」
「【我、神に祈らん。願わくば、我が敵を制する能力を与えたまえ。ストゥティンサンタヌブス】」
呪文の詠唱とか初めて見たかもしれん。というのも、魔法の詠唱は種族にかかわらず本気の時に出す必殺技みたいなものなので見ることはほぼない。