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3人はカードキーを使うと、塔の入口の門が静かに開いた。その瞬間、全員に緊張が走る。
「招待されたってことかな」
3人はお互いを見つめ合い、小さくうなずいてから足を進めた。塔の中に入ると、すぐに背後の門が音を立てて閉まり、その直後にカードキーが割れた。
「一方通行、ってわけね」
ルイーザが冷静に呟く。
「つまり、帰るにはローデンを倒すしかないってことだな」
ジュンの声にも覚悟が宿る。
塔の内部には螺旋階段が続いているだけで、複雑な構造はないようだ。階段の先にローデンが待ち受けているのだろう。しかし、途中には無数のモンスターが立ちふさがっていた。
「そう簡単には進ませてくれない、ってわけか」
ジュンは大型剣を構え、先陣を切った。
ルイーザは弓で支援しつつ、近接戦闘が必要な場面では短刀を抜く。彼女が応戦できないときは拳銃でサポートを行う。そしてウェンディは二人の体力を回復し、強化魔法でサポートに徹する。この絶妙な連携で、3人は次々とモンスターを打ち倒していく。
「これだけモンスターがいるのに、人間の部下は見当たらないね」
ジュンが呟く。
「確かに。不気味だけど、だからって止まるわけにはいかないわ」
ルイーザが前を見据えた。
3人は黙々と戦いながら上を目指した。塔に入ってから約1時間が経過したころ、疲労の色が見え始める。倒したモンスターの数も数えきれないほどだが、頂上はまだ見えない。
「はぁ、はぁ…。ルイーザ、ウェンディ、大丈夫?」
ジュンが振り返る。
「私はなんとかね。ウェンディは?」
ルイーザが応じる。
「大丈夫よ。でも、正直ヘトヘトね」
ウェンディが苦笑する。
「少し休もう。このフロアにはモンスターがいないみたいだし」
ジュンが提案すると、3人は周囲を見渡しながら腰を下ろした。
「それにしても、なんでこの階だけモンスターがいないんだろう?」
ジュンが疑問を口にする。
「たぶん、これのおかげね」
ウェンディが指差した先には、一つのランプが光を放っていた。
「ただのランプに見えるけど…?」
ジュンが首をかしげる。
「これは【魔除けのランプ】。この光の範囲には低レベルのモンスターは近づけないの」
ウェンディが説明する。
「でも、モンスターだらけの塔にこんなアイテムが置いてあるのは、ちょっと不自然じゃない?」
ジュンが首をかしげる。
「きっと、ここにモンスターを寄せつけたくない理由があるのよ」
ルイーザが推測する。
「だとすると、あの扉が怪しいな」
ジュンは視線をフロアの奥にあるただ一つの扉に向けた。その先に何があるのか、3人の心に新たな緊張が走った。




