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その日の夜、思わぬ情報を得たジュンはルイーザとウェンディに報告した。
「なるほどね。でも、ジュンが得た情報はどれくらい信用できるのかしら?」
「大丈夫だよ、ウェンディ。同じ異界の友人から得た情報だから信頼していい。」
「それなら安心ね。」
ルイーザは納得した様子だが、一方でウェンディは別の心配を口にする。
「いや、問題はもう一つあるわ。この街にいるのは、戦う力がない人たちよね。世界改変が起きた後、この街から出ていない人が多いということは、ジョブを持たない一般人ばかり。つまり、戦闘力はあまり期待できないんじゃない?」
ウェンディの指摘にジュンも頷く。数を揃えるだけでは無駄死にする可能性があるのは明らかだ。
「確かにそれもある。でも、そのために第二、第三のプランを用意しているんだよ。」
ジュンの「第二のプラン」は、自分たちだけで看守を倒し、この建物を制圧するという作戦だ。幸い、看守たちの中には特別強い者はいないようだ。おそらく、この街の囚人が非戦闘員であることを前提に、戦闘能力の低い看守を配置しているのだろう。ただし、自分たちの戦力を過信せず、最悪の場合には「第三のプラン」を実行する。それは、この施設を脱出してリフィリア王国のギルドや王国兵を呼び込み、門を内側から開ける作戦だ。
「で、後はどうやって武器を手に入れるかが課題だけど……」
「そこは……うん、仕方ないね。」
ジュンはルイーザの方をじっと見つめる。
「分かったわよ。今のところ、武器を作り出せるのは私だけだものね。」
「助かるよ。本当は僕も武器を用意して戦いたいんだけどな。」
ジュンはまだ完全に回復しておらず、自分で武器を出現させることはできない。しかし、普通の武器さえ手に入れば戦闘には参加できるはずだ。それができれば、ルイーザの負担を少しでも軽減できる。
「じゃあ、明日はいよいよ作戦を実行するわね。」
武器の場所、建物の構造、看守の行動パターン。必要な情報はほぼ揃った。あとは、行動を起こすタイミングだけだ。
「そういえば、私も別の情報を手に入れたよ。ローデンは『東城高校』っていう建物の中にいるんだって。」
「東城高校?」
その名前をここで聞くとは思わなかったジュンは驚いた。
「高校にいる?なんでそんなところに?」
「分からないけど、何か目的があるにしてもロクなことじゃないだろうね。」
「でも、敵のボスがどこにいるか分かるのは騎士団やギルドにとって有利な情報ね。」
「ただ……あいつは強い。普通の兵士が集団で挑んだところで勝てる相手じゃない。」
一度ローデンと戦ったことのあるジュンとルイーザは、その強さをよく知っていた。だからこそ、簡単に勝てるとは思えなかった。
「ローデンのことを考えると、騎士団のセト団長なら何とかしてくれそうだけど……あいつの強さって、それだけじゃないんでしょ?」
ウェンディの言葉にジュンは表情を曇らせる。ローデンの厄介さは戦闘力だけではなく、心理的なプレッシャーを与える力にもあった。
「……まあとにかく、今日は休もう。明日で決着をつけたいな。」
3人は、明日に向けて深い眠りにつくことにした。




