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【20章】目指すは始まりの異界!探検隊ルイーザと不思議な物語  作者: 旅立 マス
1章 現実とファンタジーの間で
6/203

1-3

「リズ、君はどうしてそこまで冒険にこだわるんだ?」


そう聞くと、リズは首にかけていた銀色の笛を取り出して、自分に見せてきた。


「この笛、異界の笛って言うの。始まりの異界へ導いてくれる、お宝のひとつだよ」


「始まりの異界?」


リズが語るには、その場所は数えきれないほどある異界の原点――最初に生まれたとされる特別な場所だという。

新しい異界が誕生する瞬間が見られるとか、全ての異界の秘密を知ることができるとか……噂は色々あるけれど、実際に行った者はいないらしい。


「私の夢は、その始まりの異界に行くこと! どんな場所なのか、自分の目で確かめたいんだ!」


キラキラと輝く瞳で、真っ直ぐにそう言い切るリズ。

……正直、羨ましかった。自分にはそんな熱意も、夢に突き進む勇気もない。


「ねえジュン。君も一緒に冒険の旅に出てみない?」


「は、はぁ!?」

思わず素っ頓狂な声が出る。


「いやいや……いきなりすぎるだろ」


「旅ってそういうものだよ! 突然始まるのが冒険なんだから!」


リズはにっこり笑うけど……いや、無理だろ。

滑り止めの大学に通う予定だし、親にどう顔向けするんだ。

レールから外れる勇気も度胸も、自分には――


「……うーん」


頭を抱えたその時、部屋に電子音が響いた。


ビビビビビ!


リズがカバンから取り出したのは、スマホみたいな装置。


「あれ、この反応は……」


「どうした?」


「発信機が反応してる!」


「発信機?」


聞けば、リズは追っていた組織の誰かに発信機を仕掛けていたらしい。ただし途中で落とした可能性が高いとか。


「でも……なんで反応してるんだろう?」


考えられる理由は一つしかない。


(まさか……リズが追ってたその組織、この世界に来てるってことか?)


「えっ!? 追ってきた!?」


「いや、もしそうなら今ごろお前、囲まれてるはずだろ。違う理由だろうけど……」


「それでも、この世界に来た理由があるはずよ!」


リズはベッドから跳ね起きた。


「おいおい、まさか行くつもりか?」


「ギルドに連絡しても、この世界に来るまで時間がかかる。だったら少しでも時間稼ぎをしないと!」


「簡単に言うなよ……てか、この世界の場所をギルドに教えられるのか?」


「……無理だった」


あっけらかんとした返事に、頭を抱えたくなる。


「だからジュン、協力して!」


「はぁ!?」


「お願い! 一緒に来てほしい!」


無茶言うな。戦闘経験ゼロの自分が行ったところで、足を引っ張るだけだろ。

そう思ったのに、リズの真剣な眼差しに心が揺れる。


「……で、具体的に何をすればいいわけ?」


「要はね、君が戦う力を持てばいいのよ!」


そう言って、リズはポケットからバッジのようなものを取り出した。


「これさえあれば、君の潜在能力を引き出せるわ!」


「は……? 潜在能力って……え、ちょっと待って!?」


自分の頭の中は混乱でいっぱいだ。

冒険? 異界? 潜在能力? どれも想像の遥か上を行く話ばかり。

でも、胸の奥に少しだけ芽生える高揚感を、自分は隠せなかった。


(……もしかして、これが本当の冒険ってやつなのかもな……)


リズはにっこり笑って、自分を見つめる。

その瞳には、挑戦と期待が光っていた。


その瞬間、自分の平凡な日常は、完全に崩れ去ったのだ。

そして――自分の中で、新しい何かが動き出すのを感じた。

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