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その後、ルイーザはワッフルを走らせ、偶然見つけた小さな村にたどり着いた。人口100人ほどの村で、3人は宿屋に身を寄せることにした。
「なんとか逃げ切ったみたいだね」
「それにしてもジュン、木を倒して相手を怯ませるなんて、よく思いついたね」
ルイーザが感心したように言うと、ジュンは肩をすくめた。
「いや、正直、ただの苦し紛れだったよ。でも、木を倒しただけじゃなくて、ルイーザが火をつけてくれたのが効いたんだと思う」
彼らの連携が功を奏した結果だった。しかし課題はまだ残っている。
「でもさ、あいつら、まだあの平原にいるのかな?このままじゃ目的地に行けない」
ジュンが困ったように呟くと、ルイーザも腕を組んで考え込む。
「あの数の暴力、やっかいだったわね。一体一体は大したことないのに……」
確かに、彼らの戦いは相手の圧倒的な数に押し切られた感がある。複数の敵を同時に仕留める手段があればいいのだが、今の彼らにはそれがなかった。2人とも接近戦を主とする戦い方を得意としており、範囲攻撃が苦手なのだ。
そんな2人にトルクが小さな袋を差し出した。
「ジュンさん、ルイーザさん、これを使ってみてはどうでしょう?」
「これは?」
「ボムの実といいます。投げると爆風が広がり、範囲攻撃が可能です。ただし、近くで使うと自分たちもダメージを受けてしまうので注意が必要です」
ジュンはボムの実を手に取り、じっと観察する。
「なるほどね。これを使って雑魚を一掃し、親玉に集中するってわけか」
トルクは頷いた。
「はい。この実ならゴブリンクラスのモンスターは十分に倒せます」
ジュンは作戦の可能性に手応えを感じたようだが、ルイーザはどこか気になる様子だった。
「ルイーザ、どうしたの?」
「いや、ちょっと疑問に思っただけ。あいつら、どこから湧いてきたのかなって」
ジュンが首を傾げる。
「どういうこと?」
「私、水江の街に向かうとき、あの平原を通ったけど、あいつらなんて見かけなかったよ」
「最近現れたんじゃないの?」
「そうかもしれない。でも、この異界が出来たのも最近よね?それにしては、あのゴブリン達、あの平原を完全に抑えてる。あんな知恵、普通のゴブリンにはないはずだわ」
ジュンは考え込む。
「つまり、誰かがあいつらを訓練してまとめたってこと?」
「そんな気がする。あのハイゴブリンの後ろに、もっと厄介な存在がいるのかもしれない」
「だったら、あいつらを倒して聞き出すしかないね」
ルイーザは少し笑って、肩をすくめた。
「まあ、それもそうね。でも、次は負けられないわよ」
ジュンとルイーザは決意を新たにした。ゴブリンの背後に潜む謎を解き明かすため、彼らは再び立ち向かう準備を始めた。




