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「全く……あんな作戦、一歩間違えりゃお前らごと吹っ飛んでたかもしれねえのに……クレイジーにもほどがあるぜ……」
「でも、それくらいやらなきゃ、あんたには勝てなかったからね。あとは——ルイーザを信じてた。それだけだよ」
その言葉に、フォークスは静かに目を細めた。
こいつら……ただの無鉄砲じゃない。互いを信じ合ってるからこそ、命を懸ける戦いでも前に進める。そんな絆があるんだな、と感じていた。
「それで? お前ら、わざわざこんな場所に何しに来た?」
「僕たち、この小台場島の外に出たいんだ。ここにその手がかりがあるかもしれないって聞いて……」
ジュンの言葉を聞いたフォークスは、しばらく沈黙し、やがて低くうなるように呟いた。
「なるほどな……お前ら、外の世界から来たのか。——だが、残念だな。この島から脱出するのは……限りなく無理に近いぜ」
「えっ……!」
「まあ、がっかりすんのはまだ早えよ。可能性ゼロとは言ってねえ。……この山のどこかにある『制御装置』を解除すれば、脱出は可能だ」
「でも……そんな重要な情報を、どうして教えてくれるの?」
ルイーザの問いに、フォークスはにやりと口の端を吊り上げた。
「察しがいいな。見返りなしに教えるほど、俺も甘くねえ。——お前らには、俺と同じくらいの実力を持つ強者たちと、これから戦ってもらう」
「僕たちが、そんなことで引き下がるとでも?」
ジュンの挑むような目を見て、フォークスは大きく笑った。
「ぐはは! まったく、お前らは本当に諦めが悪いな。だが気に入った! なら行け、この先を。……俺のような奴が、まだまだ待ち構えてるだろうがな!」
ジュンとルイーザは顔を見合わせ、小さくうなずいた。
フォークスの言うとおり、この先に進む以上、厳しい戦いは避けられない。
だが、それでも進むと決めたのだ。恐れてなどいられない。
「それで、この先にはどうやって行けば?」
「『クロムドーム』だ。船を出て崖沿いに進めば、洞窟がある。そいつを抜けられるか、興味があるな……。それと、これを持っていけ。旅の餞別だ……っと、どこにしまったっけな?」
「それって、これのこと?」
ルイーザが懐から、金色に輝くコインを取り出す。
「なっ……! いつの間に……」
「そんな大事なものなら、もっとちゃんと隠しておくべきだったね」
——まったく、この女もこの女で、抜け目がない。
フォークスは苦笑しながらも、肩をすくめた。
「まあいい。そいつは、この山の謎を解くカギになるかもしれねえ。しっかり持っていくんだな」
「うん、ありがとう。……行こう、ルイーザ」
「うん!」
ジュンとルイーザは、マクロセプター号をあとにし、険しい道へと歩み出した。
次なる目的地「クロムドーム」——そこには、どんな冒険が待ち受けているのか。
だが、二人の足取りは、恐れよりもむしろ——希望に満ちていた。
——冒険は、まだ始まったばかりだ。




