19−4
「ここで蹴りをつけようじゃねえか!」
「さっきは油断したけど、今度は本気だよ!」
ジュンは大型剣を構え、フォークスに猛然と突っ込む。
「ほぉ……遠距離攻撃しかできねぇ坊やかと思いきや、接近戦もやるじゃねえか!」
フォークスはその剣を真正面から受け止める。金属がぶつかる激しい火花が飛ぶ。
「よし……今だっ!」
剣を握るジュンのもう片方の手に、拳銃が――!
「この距離なら……外すわけがないっ!」
ジュンの引き金が引かれる。銃弾が一直線に、フォークスの足へ――!
「ちっ……!」
フォークスの膝が崩れる。銃弾は見事に命中した。
「これで機動力は奪った!」
「調子に乗るなァッ!!」
フォークスはなおも猛攻を仕掛ける。足に傷を負ってもなお、その剣は重く速い。
「うおおおっ……!なんてパワーだ……!」
ジュンは必死に剣で受け止める。腕に衝撃が響く。下手をすれば一撃で吹き飛ばされる。
「さて……もう手は尽きたか?」
「ジュン!準備できたわよっ!」
その声が、ルイーザから響く。――合図だ。
「ナイス、ルイーザ!」
ジュンは一気に後退。フォークスが目を向けると、そこに立つのは――弓を構えたルイーザ!
「甘かったな……!」
弓が放たれる。鋭く飛ぶ矢――
「くだらん……そんな攻撃、効くかッ!」
フォークスは身構えるが、矢が直撃してもダメージは無い……代わりに、フォークスの体の上に何かが降り注ぐ。
「こ、これは……粉……?」
空中に舞う白い粉。ルイーザとジュンは同時にシールドを展開。
「こいつは……まさか――!?」
「察しが早くて助かるよ。じゃあ――いくよっ!」
ジュンが拳銃を空中に撃つ。
――次の瞬間、船内が光に包まれた。
ドオオォォンッ!!!
爆発――!
「ぐ、ぐわああああっ!!」
食料庫にあった大量の小麦粉。それが空気中に舞い、それに引火した――大爆発。
二人は事前に張った魔法のシールドに守られ、ほとんど無傷。だがフォークスはまともに食らった。
瓦礫の中、ボロボロの状態で横たわる海賊。
「ま、まさか……小麦粉で……あんな爆発を……」
目を見開いたまま、フォークスは震えていた。
「やった……!」
「思い切りが必要だったけど、うまくいって良かったわね」
「……ああ。ほんと、よくやったよルイーザ」
「わーお……それでもまだ生きてるんだ……」
ルイーザが目を丸くする。フォークスは片膝をつきながらも、まだ息がある。だが――剣を構える力は、もう残っていなかった。
「これ以上は……無理だ。オレの負けだよ。お前らの勝ちだ……認めるぜ……!」
その言葉に、ジュンとルイーザは顔を見合わせ――
ハイタッチ。
勝利の余韻が、船の甲板に響いた。




