19-3
フォークスが鋭く剣を一振り。
刹那、刃先から轟音とともに衝撃波が放たれ、空気が裂ける。
「うわっ!!」
ジュンとルイーザはとっさに飛び退き、辛くも回避。
だがその直後、二人の背後にあった分厚い壁が、爆音とともに崩れ落ちた。
――なんて威力だ。
あんなものをまともに食らったら、跡形もなく吹き飛ぶ。
二人は顔を見合わせ、即座に船のデッキへと駆け出した。
「逃げたって無駄だぞ!」
追いかけようとするフォークスに、ジュンが応戦。
拳銃を抜き、引き金を引いた。
「くらえっ!」
銃声が響き、弾丸が飛ぶ――しかし。
「そんな小細工、通じるかよ」
フォークスは微動だにせず、剣を軽く振るだけで弾を弾いた。
「ダメだ…全く効いてない」
「剣の力が規格外ね…あれを何とかしないと、勝ち目はないわ」
「何とかって言っても、どうやって…」
「分からない! でも今は逃げるしかない!」
ルイーザが叫ぶ。ジュンも同意し、再び拳銃を撃った。
「ちっ、またか!」
弾丸の一つが命中直前に破裂し、辺り一帯に濃い煙を撒き散らす。
「煙幕か!」
「今のうちに!」
煙に乗じて、二人はデッキから船内へと滑り込むように逃げ込んだ。
息を切らせながら、倉庫の中に身を潜める。
「くっそ…強すぎるよ、あのキツネ野郎」
「このままじゃジリ貧ね。逃げ道も塞がれてるし…」
ルイーザが焦りをにじませる。ジュンも頭を抱えた。
「うーん……どうしたものか…」
フォークスの剣は一撃で壁を破壊し、銃弾すら無力化する。
正攻法では太刀打ちできる相手ではない。
だが――
「…あっ!」
「ジュン!? その声は何か思いついたってこと?」
「うん、ちょっと無茶だけど、もしかしたら…!」
ジュンはルイーザに作戦を耳打ちした。
「…ふふっ、あまりにも無茶苦茶だけど、ゼロじゃないわね」
「0%スタートから、1%くらいにはなった?」
「そうね。やってみる価値はあるわ!」
その頃――船の外では、フォークスが警戒を強めていた。
「チッ、煙幕で撒かれるとはな…思ったよりやるじゃねえか」
驚くほどの戦闘力ではないが、あの二人は油断ならない。
知恵と機転を持ち合わせているタイプ――厄介な存在だ。
「どこかに潜んでるな…。逃げ道は塞いだ。ここにいるはずだ」
フォークスは周囲を見渡し、目を細めた。
そして一つの扉の前で足を止める。
「ここか…食料庫。障害物も多い、隠れるにはもってこいだな」
ギィ…と重たい音を立てて扉が開く。
「……やっぱりな。ここに隠れてやがったか」
中を見回し、ジュンとルイーザを視認する。
「見つけたぜ、探検隊さんよ。さて、第二ラウンドといこうか!」




