19-2
「ねえ、ジュン、見て!」
ルイーザが嬉しそうに駆け寄ってきた。彼女の腕の中には、ずっしりとした箱が抱えられている。
「お宝じゃないかな、これ?」
「その箱、どこから持ってきたの?」
ジュンが驚いて尋ねると、ルイーザはすぐ隣の部屋を指さした。
「扉の向こうに置いてあったの。開けてみようよ!」
「あ、おい! 罠だったらどうするんだよ?」
ジュンが止める間もなく、ルイーザは意気揚々と箱の蓋を開ける。すると——
「……え?」
中に入っていたのは、たった一枚のコインだった。
「なんだ……ルイーザ、大きな箱だからもっとすごいものが入ってるのかと思ったけど、コイン一枚か……」
ルイーザは明らかにがっかりした様子で、それでも一応コインを懐にしまった。
「この船には、この島を脱出する手がかりはなさそうかな?」
ジュンがそう言うと、ルイーザはニヤリと笑う。
「それが、宝箱だけじゃないのよ」
そう言うと、彼女は手に持っていた紙を広げた。
「……これは?」
「島の地図よ!」
目の前に広げられた地図には、島の詳細な地形が記されていた。それも、かなり精密に——。
「これはすごい……僕らがいるのは、多分この船のマークがある場所だな。やっぱり、この船はこの島に停泊する予定だったんだ」
「先に進む道も載ってるわね。洞窟クロムドーム、迷いの森ファラスタ、そして——山頂の城、マクロキャッスル」
ルイーザが指をさした場所には、堂々と「マクロキャッスル」と記されていた。
「このマクロキャッスルってのが怪しいな。『城』ってくらいだ、人が住んでる可能性が高い。つまり、マクロスの本拠地かもしれない」
「なら、私たちの目指すべき場所はそこね! やったじゃない、目的地がはっきりしたわ!」
ルイーザが興奮気味に地図を眺める。その時——
「……そこまでだ」
背後から低い声が響いた。
「!?」
ジュンとルイーザが慌てて振り向くと、海賊帽をかぶったキツネ顔の男が立っていた。
「ちょっ……いつの間に!? それに、ここに隠れてたことがバレてたなんて……!」
「バカが。侵入者がいると聞いて、隠れられそうな場所を絞れば、ここが候補に上がるのは当然だ」
男は鋭い目で二人を睨みつける。
「誰もいないと思って、勝手に探りを入れてたようだが……残念だったな。俺たちの縄張りで好き勝手やらせるわけにはいかねえ」
「……あなた、誰?」
ルイーザが問いかけると、男はふっと口角を上げた。
「名乗ってやるよ。俺は キャプテン・フォークス……この船、海賊船マクロセプターの船長だ」
フォークスはゆっくりと剣を抜く。
「この先へ進みたければ、俺を倒していけ——!」
ジュンとルイーザは、思わず息をのんだ。




