18-1
前章では、海で遭遇したモンスターに倒されたジュンとルイーザ。
果たして、無事なのか?
これは夢なのか。
暗闇の中、ぽつんと立ち尽くしている。
ここはどこだ?どうして自分はこんな場所にいる?
考えても答えは出ない。まずは出口を探さなければ——そう思い、足を踏み出した。
しかし、進めども進めども景色は変わらない。足音だけが虚しく反響し、まるで底の見えない迷路を彷徨っているようだった。
次第に疲労が溜まり、仕方なくその場に座り込む。頭を冷やし、状況を整理しようとした。
——何があった?
そうだ。ルイーザを助けようとして海に飛び込んだ。
あれは……事故だったのか? それとも、自分は…… 死んだのか?
「君は死んではいないよ」
不意に、静寂を切り裂くような声が響いた。
驚いて顔を上げると、目の前にふわりと光の塊が浮かんでいる。
「死んでいない……?」
「そう。ただ、ここがどこかを説明するのは難しい。でも、君は確かに 生きている 」
——なら、ここは一体……?
答えにならない答えに、胸の奥がもやつく。
「何者かもわからない君に、どうしろって言うんだ?」
「いずれ、わかる時が来るさ。ただ一つだけ言えることは……」
光が強くなり、視界が真っ白に染まる。
「君には、生きて、この世界を歩んでほしい」
次の瞬間——。
波の音が聞こえた。
——目を開ける。
目の前には、青い空と広がる砂浜。
潮風が肌を撫で、波が静かに寄せては返す。
生きている——。
隣を見ると、一匹の大きな生き物が横たわっていた。
ワッフルだ。傷つきながらも、ゆっくりと寝息を立てている。
「ジュン!」
振り向くと、焚火のそばに座るルイーザがいた。
ホッとしたような、泣きそうな笑顔でこちらを見ている。
「気がついたのね!」
「……ルイーザ。無事だったんだな」
「あの時、ワッフルが私たちを助けてくれたの。本当にこの子には感謝しかないわ」
ルイーザはワッフルの頭を優しく撫でる。
本当にすごい生き物だ。
「ところで、ここはどこだ?」
「正確にはわからないけど……たぶん、サウスエンドランドと西洋町の 中間あたりのどこか ね」
「……そうか」
静かに息を吐く。
「とにかく、生きていてよかったな」
「うん、本当に……」
ルイーザが微笑む。その表情が、どこまでも穏やかで、眩しかった。
「ジュン、助けてくれてありがとう」
「……いや、あの状況なら誰だって同じことをするさ」
「それでも……嬉しかったよ」
「ま、まあ……大事な仲間を失うわけにはいかないからな」
彼女の笑顔が、波の音に溶けていく。
なんだろう、この気持ちは。
照れくさいけれど、心が温かくなる。
——とにかく、今はただ、 生きていて本当によかった。




